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38話 不在と途方に暮れて

「そういえば、(てる)瑠里(るり)が来ないんだよな。いつもなら一番にここに来てるはずなのに」

「え?」

 それは数分前の出来事に戻る。(たく)がお昼休みに友人達と集まる場所に来ていた。探している人物も来ていると思っていた卓は辺りを見渡してみた。けれど、いくら見渡しても居なかった。それから、(こう)(まれ)が居たため、一緒にお昼を食べる事になったのだが、昂の言葉に卓は驚くようにカッと目を見開いた。

「待てば来るでしょ」

「それがさ、連絡してるのに一切返事が来ないんだ」

 稀の発言に昂は説明するように答えた。

「なにそれ。もしかして、二人でどっかでデートとか?」

「いや、学校内だぞ! デートなんて有り得ないって」

「それもそうかな?」

 稀と昂は会話をした後、楽しそうに笑い合った。何が楽しいのか分からなかった卓は難しそうな表情をしていた。内心それどころではないと半分思っていた。なぜ、探している人物が居ないのか。それだけが卓の頭に留まっている。

「卓、おーい!」

 ふと、卓の耳に届いた昂の声。

「え?」

 咄嗟に卓は昂と稀のほうを振り向き、ビクッとする。

「大丈夫? 随分何かに焦ってるように見えるけど」

 不意に稀が卓を心配するような言葉を掛けた。稀が心配そうにする姿は卓の目には珍しく思えていた。

「あ、悪い」卓は思わず謝る。 

「まただ」

 稀は溜め息を吐いて言葉を発した。

「?」稀の言葉に卓は理解出来なかった。

「卓さ、さっきも謝ったばかりじゃん。早退したほうがいいと思うぞ。な、もし輝たちに会ったら言っとくからさ」

 卓の様子に昂と稀がお互い目を合わせたかと思うと、昂が一つの提案をする。卓は首を横に振るだけだ。成績優秀者である卓は過去に早退などもほぼしない。だから、早退しないという訳ではない。今の状況はそんなのは忘れて、ある事が気になっていた。

「輝たちが来るのを待ってる」

 卓は言葉を口にした。二人は不思議そうな表情をし、お互い目を合わせた。

「そっか。でも連絡が来ないし、返答無いんだぞ」

 昂が言うと、稀は『その通り』というように何度も首を縦に振った。卓は難しい顔をするが、話をした結果、待つことにした。けれど、昼休みの間に輝と瑠里はその場に現れなかった。


 昼休みが終わろうとしている頃、三人はそれぞれ昼ご飯を食べ終わり、解散しようとしていた。

「俺、輝たちと連絡取れるようになんとかしてみるわ」

「わ、私も!」

 昂の言葉に稀も続けて言う。卓はこの時、二人が頼もしいと感じた。そんな事を思っていると、不意に昂が卓に振り向く。

「卓も頼むぞ!」

 張り切ったような声で卓に向けて言った。

「お、おう」

 昂の言葉に咄嗟に応えた卓は思ってもいない言葉に少し目を丸くしていた。そうして、それぞれ教室に戻っていった。


 時が過ぎて放課後。放課後と言っても通常は冬休みの一日前。午後は簡単なホームルームだけで済まされた。ホームルームが終わると、卓はすぐさま同じクラスである瑠里の元へ向かおうとしていた。

 それは、卓の探している人物である輝に接触するためだった。今朝の瑠里の様子がおかしく昼休みにもいつもの集まり場に来なかったのだ。卓は瑠里の机まで行くのだが、時既に遅し、瑠里は既に教室を出た後だった。

 卓は後を追いかけようともしたが、瑠里は窓から見える正門を出たところだった。それも輝と一緒に。今更追いかけても逃げられる気がした卓は仕方なく諦めてしまった。

 もう一人、同じクラスである内海(うつみ)は学校に来ていなかった。それに昂と稀は違うクラス。途方に暮れる卓はある事を思い出した。忘れてはいけない人物。卓はその人物の家へと向かうため、学校を後にした。

 卓が数分歩いて辿り着いた場所。そこはある家の前だった。以前一度来たことがあるが、それは時間が戻っている時に一回。

 普通ならば未来の事など誰も知らない。卓にとっては二回目だとしても家の住人は初めて卓に会うことになるのだろうか。

 卓は恐る恐る家のインターホンを鳴らす。

『はい』

 インターホンから聞こえてきたのは女性の声だった。

「す、菅原(すがわ)卓です」

 卓は少し緊張しているような声音で自分の名前を名乗った。

「あ、卓くんね。待っててね」

 明るい口調で女性は言うと、直ぐにインターホンが切れた。どうやら、直ぐに理解されたようだ。暫くして女性が家から出てきた。それはとても明るい表情で卓の彼女『(ゆう)』に似ていた。

「卓くん、久しぶりね。あの子のお葬式以来だから三ヶ月くらいぶりかしら? さあ、中に入って」

 卓は女性の対応に目を丸くし、案内されるがままに後についていきながら、家の中に入っていった。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?

昼休みに結局輝と瑠里は来なかった。2人はなぜ来なかったのだろうか。そして、一人途方に暮れる卓が向かった先は。次話更新予定日は来週4月7日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

もしかしたら、再来週辺りにもう一つ何か投稿していこうかと思います。そちらもよろしくお願いします。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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