37話 続く頭痛と
あれから何日経っただろうか。冬休みも残り一日、正確には半日だ。卓はあの日以来、友人や同じクラスの内海とも会っていなかった。卓がどこか拒否している気持ちがあったからともいえた。
「卓、なんでリビングでぼーとしてるの! 冬休みが始まってそれはないよ」
「煩いな。頭、痛いんだ。美琴姉、静かにしてくれよ」
「は? それなら、部屋で休んだら?」
美琴の言う通り、冬休みは始まったばかり。卓にとっては変な話、最後の冬休みだった。
様々な情報や事を知ってしまってからの頭痛は軽くなったものの、痛みは続いたままだ。その痛みは中々治まってはくれなかった。痛み止めの薬を飲めば早いが、卓はそれをしなかった。ただただ自然治癒に任せていた。それなら、部屋で休むほうが楽だと言っている美琴が正しい。
卓はなぜそうしないだろうか。それには訳があった。
「休もうとしても休めないんだ! 悪いことが頭の中をグルグル回るんだ」
卓は頭痛を伴っているのにも関わらず、悪化させるような行動をしたり、美琴の言葉に苛立ったりしていた。
「えー、なにそれ。あ、それでお姉様に甘えたいのね」
美琴は他人事のように反応すると、少し考えては勝手に解決しては納得した。
「チッ、そうじゃない!」
卓は珍しく舌打ちをした。それから、リビングを後にして部屋に向かった。
「待って。舌打ちしたでしょ!」
卓が舌打ちする事は滅多になかったためか、はたまたたまたまか美琴は卓の舌打ちを聞き逃さなかった。卓の態度が気に触り卓を呼び止める美琴。
しかし、その言葉は時すでに遅し。卓はその場から居なくなっていた。
卓は自分の部屋に来ると、そのままベッドに向かい寝転がった。歪んだ表情を浮かべ頭を抑える。
数分もしないうちに卓の頭に浮かび上がってきた光景。それは、見覚えのある少女が目の前で泣いている姿だった。その少女は憂だ。
卓には泣いている理由など知らなかったが、深い訳があったのだろうと冷静になった。そして、卓はいつの間にか眠りについていた。
数時間後、卓は目を覚ました。頭痛は少し和らいでいた。起きると、なにやら下で呼ぶ声が聞こえてきた。卓は寝起きなせいか、覚束無い足取りでゆっくりと階段を降りた。呼ばれた場所には珍しく家族が食卓を囲っていた。卓は家族が揃う事などそうそうないと不思議に思った。だが、思い返すとあり得る事だと思い直した。それからは残り僅かな一日をのんびりと過ごした。
翌日、冬休みも終わり久々の学校が始まった。とはいったものの、冬休みはほんの僅かだった。普通であればこれから冬休みが正しい。
卓は時間が戻っている時を過ごしている。その事を残念に思った。卓は自分の教室に着くと、辺りを見渡しながら一人の人物を探した。いくら辺りを見渡しても探している人物は見当たらない。
「卓、おはよう」
不意に卓の目の前に一人のクラスメイトが現れた。
「ああ、おはよう」
不意を突かれたような卓は戸惑いつつも挨拶を返した。現れた人物は瑠里だった。
「ありがとう」
瑠里は卓に微笑んで御礼の言葉を口にした。瑠里は卓の家で輝から聞いてしまってから、何を信じていいのか分からなくなっていた。だが、今はどこか落ち着いていた。
「輝と話が出来たのか?」
「うん、本当にありがとう」
瑠里は卓の言葉を耳にすると、微笑んで言葉を口にし、その場を去っていった。卓は瑠里の様子にホッと安堵の溜め息を吐き、瑠里の去っていく後ろ姿を見送った。そうして、最初の授業がいつの間にか始まり、午前はあっという間に過ぎていった。
不意にお昼休みの鐘が鳴った。鐘の音に卓はハッと何かを思い出して席を立ち上がった。周りのクラスメイトは購買に向かったり、机を囲ってお弁当を出したりしていた。そんな周囲の事など気にもせず卓はある場所に向かった。
そこは普段、卓自身と友人達が集まる休憩室。そこで卓はある人物を探す。だが、どこを見ても居ない。
「卓、なにキョロキョロしてんだよ! こっちだぞ!」
突如、卓の耳に届いた人物の声。卓が声のするほうへと振り向くと、視線には見覚えのある人物が二人映し出された。卓は二人のところへと歩き出して、二人の向かい側の椅子に座った。
「昂と稀、どうしてここに居るんだ?」
卓は椅子に座ると、直ぐさま二人の名前を口に出し問い掛けた。どうやら、二人は昂と稀だったらしい。
『え?』
二人は思わず声が重なり、目を大きく見開いていた。
「卓、まだ寝ぼけてる? お昼だよ」
稀が卓の言葉に当たり前のように答えた。
「悪い悪い」
卓は謝りつつもまだ頭の中はついていけてなかった。
作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?
卓の頭痛に何かの意味が隠されています。久々の学校で卓は誰を探しているのだろうか。分かる人には分かるかも!?次話更新予定日は来週3月31日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。
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では、またの更新を。




