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35話 二つの真の目的

内海(うつみ)、だよな?」

「なぜ、俺の名前を知ってる? 何を企んでる?」

「何も企んでない。内海こそ何を企んでるんだ?」

「企む? 何のことを言ってるのさ」

 瑠里(るり)と一緒に(たく)の家に来た(てる)は一人で先に二階の卓の部屋に向かった。部屋の前に来ると、一度立ち止まって部屋の扉を開ける。

 そこで目にした人物の名前を確かめるように恐る恐る問い掛ける。その人物は内海であった。内海は輝の問い掛けに答えずに問い返す。しかし、更に問い掛ける輝に内海は困ったような表情をした。

「嘘をつくな。内海も時間が戻ってるんだろ?」

「……」

 内海の言葉に輝は声を荒らげ、睨みつけるような視線を飛ばした。内海は黙って答えなかった。嫌な空気が流れ始める。

「悪いことは言わない。卓に近付くな」

 嫌な空気を切ったのは輝の言葉だった。輝は内海の姿を目にしても怯むことは無かった。寧ろ予想していたかのように見える。

菅原(すがわ)に近付くな? どういうことだよ」

「そのままの意味だ」

 内海は言葉の意味を理解出来ず聞いたが、輝は説明もせず、理解させるような言い方をしたのだ。二人は再び黙り始めた。

「バレ、ちゃったか」

 何秒経っただろうか。不意に内海が呟くように声を出すと、卓のベッドに腰を下ろした。一方、輝は依然として立ったままで内海を睨みつけてこう言った。

「目的は何だ?」

 輝の鋭い視線が内海に刺さる。

「目的? タダじゃ教えるわけないだろ」

 内海は苦笑いをしながら、当然の様に答える。

「そうだな。それなら、交換条件しようか」

 突然、内海が顎に手を当て考えるような仕草をし、輝に提案を持ち掛けた。

「交換条件ってなんだ?」

 輝は真剣な顔で質問をした。輝にとっては内海が何をしようとしているのか予想がつかなかった。そのせいか少し警戒をしていた。

「もちろん、俺の目的とそっちの目的でしょ」

 内海が目元と口元を緩ませへらへらとした笑みを浮かべながら問い掛けに答える。

「分かった」

 警戒をしていたせいか、内海の言葉に迷っていた輝だったが、ここは乗るべきであろうと了解の言葉を口にした。すると、部屋のベッドに腰を下ろしていた内海が急に立ち上がった。内海の行動に少しビクッとした輝は一歩後ずさる。今の内海に何をされるか分からなかった。

「まずさ、そっちの目的から言ってよ。過去を変えようとしている理由をさ。俺の目的はそれからだよ」

内海はまるで別人のように先程の口調と態度を変えて、輝にそう言った。

「待て、そこまで知ってるのか? もしかして、」

「そんなのはいいからさ、さっさと交換条件として目的を言わないとあの二人は、」

 余りの予想外の事に輝は何かを言いかけた。正確には内海に急かされるように遮られてしまった。

「卓を瑠里から引き離すためだ」

「なぜ、そんな事をするんだよ! そんな事をしなくても、卓は(ゆう)ちゃんが居たじゃんか! まさか、」

 内海は急に怒鳴るように大声を出した、と思えば何かに気付いたのか声が段々と小さくなっていった。

「何かに気付いたようだな。思ってる通りだ。それで、そっちの目的はなんだ?」

「俺は、卓が憂ちゃんの想いを思い出させるためさ」

 言葉に輝は何かに引っかかったように眉間に皺を寄せる。

「違うだろ。本当の目的は?」

 そして、否定をし問い掛けた。

「……」

 内海は口を閉ざしている。何度目か分からない沈黙。さっきより長く続く間に輝は浅い溜め息を吐いた。その直後だった。

「俺は、憂ちゃんが、好きだったんだ。けど、憂ちゃんは菅原を選んだ。だから、」

「戻って卓から憂を奪おうとしたのか?」

 ついに折れた内海が語るように話を始めた。続けようとしたが、輝に遮られてしまう。

「最初はそうだった。戻っていくうちに、菅原が憂ちゃんとの想い出を忘れている事を知って、思い出させようと、」

 内海は最後まで言い切る前に自分が何をしようとしているのかを自覚し、言葉が途切れた。

「そうか。俺たちの目的は卓が絡んでいる。もしかして、憂との想いを消したのが俺たちの目的が関係してるのかもな」

「恐らく、そうだね」

「内海、さっきお前が予想した通り、俺は未来から来たんだ。しかも違う世界から、」

 その瞬間だった。突然、部屋の扉が勢いよく開け放たれ、瑠里が扉の前で呆然と立っていた。

「輝、それ本当? 今まで隠してたの? なんで? どうして?」

 瑠里は輝を真っ直ぐ見つめて質問攻めで声を掛けている。

「瑠里」

 突然現れた瑠里の姿に輝は名前を呟いた。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?

内海と輝が会ってしまい話を進めるとそこにはそれぞれの目的が明かされ驚く真実が!?

そこに偶然来た瑠里はそれを知ってしまい戸惑った。輝はどう動くのだろうか。

次話更新予定日は3月17日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

✩さきほど活動報告を久々に更新しました。

『忘却の中で』はまだ続きますが新連載などもしようかと思ってます。良ければ活動報告も見てみてください。

では、またの更新を。

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