33話 成功のチャンス
それは突然の事だった。
「おい、瑠里」
輝が瑠里を訪ねて教室まで呼びに来たのだ。
「あ! 卓、一緒に来て」
瑠里は輝の声に気付くと、近くに居た卓に一緒に来るように言った。卓は気になりつつも、瑠里と一緒に輝のところへと向かった。
二人が輝のところへと向かう際に、輝の思わしくない表情が卓の視界に入った。鈍感だけなのか、瑠里はその表情に気付いてない。
「輝、今日の放課後みんなで集まろう。卓がそう言ったの」
瑠里の言葉でさっきと違って輝の表情が変わった。
「そうか、分かった。瑠里、それで聞きたい事がある」
輝は瑠里の手を握って教室を後にした。瑠里は輝の行動に驚きつつも小声で『どうしたの?』と輝に訪ねて教室を一緒に離れてしまった。
実際には周りにクラスメイトも居るのだが、一人残された卓は少し寂しさを感じた。そのまま教室の扉の前にぼーと突っ立っていた。
「どうしたんだよ。上手くいったのか?」
後ろから卓の肩を叩いてやってきた内海。卓は内海の声に振り向いて、軽く首を縦に振った。
「なら、もう少しだな。後は怪しまれないように二人に近付いてどうにか××接触出来れば」
「それなら大丈夫。二人と例の事で話して、」
「南本が戻ってくるから、それはまた後で。じゃあな」
内海の言葉に卓は答えようとするも内海が遮って瑠里が戻ってくるのを卓の耳元で伝えた。その後、その場を離れていった。それからはというもの卓は眠くなりながらも授業を受けた。
やっと一日の全授業が終わった放課後。卓は今か今かと待っていた。それは待たずに直ぐにやってきた。
「卓、今日みんなで集まるから待ってて。輝が昂たちを連れてくるって」
「えーと、どこで集まるんだ?」
唐突の瑠里の言葉に卓は戸惑う。なんとか言葉を返そうと言葉を発した。
「決まってるじゃん。カ・ラ・オ・ケ!」
「え?」
瑠里は当たり前のように場所を口にした。その予想外な場所に卓は思わず声が出てしまった。なぜ、予想外なのか。
それは、みんなで集まる時は決まって誰かの家か高校生に優しいフード店が多かったのだ。卓の記憶の中ではカラオケといったら、最近では内海達と行ったきりしか覚えていない。それも『逆戻り』してからの記憶だ。
「大丈夫?」
「あ、ああ。待ってるから、来たら呼んでくれ」
卓は瑠里の声に我に返り応えると、席に座って待つことにした。瑠里はぽかんとしていたが、卓の言葉で安心したような表情をし輝のところへ向かった。
その後、卓は友人たちとともにカラオケへ行き、それぞれ歌を聴いたり歌ったりで盛り上がった。日が暮れ始めようとしている頃に解散となったのだが、そこで卓は輝に近づいて、ある事を提案する。
「輝、ちょっといいか?」
「ん、なんだ?」
輝は卓の問い掛けに不思議そうに表情を浮かべる。
「えーとさ、近々例の件で話し合わないか?」
卓は輝の表情を伺いながら、恐る恐る問い掛けるように言った。
「もしかして、戻ってる事を思い出したのか?」
卓の言葉に輝はカッと目を見開いたかと思うと笑顔で言葉を口にする。
「あ、ああ。少し前に思い出し、」
卓が答えようとした時だった。
「え、良かった! これで重要な情報が共有出来るね!」
突然、瑠里が二人のところへ来て卓の言葉を遮る。なぜか、喜んでる。幸いに昂と稀は解散後、直ぐに帰ってしまったのでその場には居なかった。そのため、聞かれる事はなかった。
「その重要な情報ってなんだ?」
「悪い、誰かに聞かれているか分からないから外では話せないんだ」
卓の問い掛けに輝は謝って、情報を言おうとしなかった。誰も聞いているはずがないのだが、もしかしたらということもあるかもしれないと輝は思ったに違いない。
「今から瑠里と二人で卓の家に行ってもいいか?」
「あ、今日はこの後、また今度にしてほしい」
唐突の問い掛けに卓はある事を言いそうになった。なんとか「また今度」と言って断った。
「そうか。分かった、また今度な」
卓の意外な言葉に二人はお互い見て不思議そうな表情を浮かべた。それからは解散しそれぞれ別れた。
帰路につくと、卓は内心こう思った。
(断って正解かもな。今のままじゃ例の対策は失敗に終わってしまっただろうな)
卓は携帯画面を開き、ある人物にメッセージを送った。
『もしかしたら成功するかもしれない』
言葉は何を意味するのだろうか。
作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?
卓と内海が考えた対策の成功チャンス到来!?果たしてどうなろうだろうか?
次話更新予定日は3月3日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。
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では、またの更新を。