31話 新しい仲間と対策を
「それで、菅原は憂ちゃんとの想い出をまだ少ししか思い出していないのか」
「ああ、」
輝と瑠里が卓の家に訪ねてきてから二週間後の事。依然として二人と距離を置いている卓は内海と行動を共にしていた。
あの後、内海が言っていた通り、午後に内海が卓の家に訪ねてきた。しかし、あまり詳細は話さなかったため、こうしてまた内海が卓の家に来て話している。卓の聞いた話だとどうやら内海もこの『時間が巻き戻っている』日々を過ごしているらしい。
いつからかは聞けていないが、卓が日常に戻る鍵は握っているらしい。それは輝と瑠里の時と同じ『憂』という人物であるのだが、それとはもう一つあるとの事だった。
「少しずつ思い出すしかないか。どこまで思い出してるんだっけ?」
「あー、ん。文化祭までだった、と思う」
「思うって、なにさ。そこ重要!」
そんな会話をした後、内海は腕を組み、卓を細めで見ながらムスッとした表情をした。そして、暫しの無言の空気が流れた。それは重苦しい空気とはいわない、お互い考えている様子の空気だ。
「あ!」
「思い出したか!」
突然、無言の間を破る卓の声が部屋中に響き渡った。その声に内海が素早く反応し目を見開いた。
「それもあるが、渡してくれた紙切れ!」
「なんだよ。紙切れかよ」
卓の出た言葉に内海はがっかりするように肩を落とした。待っていた言葉と違かった様だ。
「ほら、紙切れに輝に近付かないほうがいいって書いてあっただろ。それってどういう意味なんだ?」
卓は続けて説明するように言うと内海に問い掛ける。
「あー、そのことか」
内海は軽く受け止めると、終始何かを言おうか言うまいか迷っている表情を見せた。
「もしかしたら、菅原が元の時間に戻るのを阻止しているか、時間を変えようとしているかもしれないからさ。警告みたいなもんさ」
家に居るからか聞かれる事はないと思うのだが、内海は誰かに気付かれないような声の大きさで言った。その表情は卓にとってはとてもふざけているようには見えなかった。
「それ、本当か?」
少しの間を置き、内海に問い掛けた。自然と卓も内海につられて真剣な表情になっていた。内海は黙って首を縦に振った。その反応に卓は下を向いて唇を噛み締めた。何を思ったのだろうか。
「やっぱりか」
卓は不意に言葉を零す。卓は前から感じていた。何かが変だということを。
「やっぱり? 何か心当たりがあるのか?」
「いや、戻りはじめて一緒に行動した時とか、なんかこう、睨みつけるような視線を向けられていた気がしたんだ」
卓は内海に説明するように言う。
「そうだったのか。気を付けてくれよ。まあ、その事は後で対策たてよう」
内海が用心するように卓に言うと、今後の事を考えて提案した。
「対策?」
しかし、卓はその提案が理解出来ず『対策』の言葉が疑問となって卓の頭の中で留まっていた。
「ん、その事は追い追い考えるとしてさ。そういえば、憂ちゃんとの記憶は思い出したのか?」
「文化祭だ。最近まで文化祭の頃までの記憶が頭の中に流れてきた。確かだ」
不意の問い掛けに卓は少し思い出すように考えて自信満々に言った。それはいつからか三年生の時は少なかった想い出の記憶が二年生に戻ると、突然と脳裏に過ぎるようになったのだ。それもいつも卓の隣には『憂』という人物が一緒だった。
「文化祭って言ったら十月だよな? 今二月だから四ヶ月前? そこまで思い出したのか?」
卓の言葉を聞いた内海は唐突に大きな声で驚いた。
「おい、大きな声を出すと、誰かに聞こえるだろ。そんなに驚くことかよ」
「ここ、どこだと思ってるんだよ。聞こえるって言ったって俺たちの事情を何も知らない菅原の家族だろ。平気平気」
卓が注意するが、内海は卓の注意をものともしなかった。それもそうだ。内海の言うとおり、ここは学校でもなければ外の店でもない卓の家なのだ。他の生徒や赤の他人に聞かれる事はない。聞かれたところで訳の分からない話をしていると思われるだけだろう。卓の家族にだって言える事だ。
「それじゃ、完全に思い出すのももう少しだな。遅くないし、今のうちにさっき言ってた対策について話そう」
「お、おう」
話が思う様に進んだ二人はこの後、数時間も話をした。これから先、どんな事が起こるかは今の二人は知らなかった。特に卓にとっては。
作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?
卓は輝と瑠里から距離を置いて内海とともに行動に。そして、輝は何かを企んでいる?その対策とは?
やっと中間地点といったところでしょうか。ゆっくりで読みにくいとは思いますが今後ともよろしくお願いします。
次話更新予定日は2月17日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。
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では、またの更新を。




