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26話 真実を明かすとき

 数分前の事。学校が終わった(たく)と友人を合わせた五人はとある場所に向かっていた。その場の雰囲気や友人の誘いから行くことになった卓はどこに行くか知らされていない。いったい、どこに向かっているのだろうか。友人達は知っていて自分だけが知らない。

 少しばかり腑に落ちない卓だったが、気が付くと友人達がある場所に立ち止まっていた。そこは、ごく普通の家の前だった。

 瑠里(るり)が不意にインターホンを押した。外では小さく鳴ったが、きっと家の中では誰かに報せるために大きく鳴っているのだろう。

 卓はここが誰の家か想像もつかなかった。本当は誰の家か分かるはずなのだが、思い出せていない。

『はい』

「こんにちは。言っていたとおりみんなで来ちゃいました」

 インターホンから女性の声がすると、瑠里が馴れ馴れしく挨拶をして来たことを知らせた。

『待ってたわよ。ちょっと待ってね』

 インターホン越しに再び聞こえてきた女性の声。

「なあ、誰の家な、」

 卓が言おうとした時だった。家の扉を開けて中から女性が出てきた。それは数分も掛からなかった。

「よく来てくれたわね。入って」

 女性が出てくると、卓の友人達は軽く会釈をして家の中へと導かれるように進んだ。卓はぼーと立ち尽くしていた。それに気付いた瑠里が輝に知らせて卓のほうを指さす。

「卓、どうした。大丈夫か?」

 (てる)も卓の様子に気付き心配しながら呼んだ。

「いや、勝手に知らない家に入っていいのかと、」

 卓は我に返って口にした。卓には申し訳なく思っていた、一方で少し警戒をしていた。

「そんなこと気にすることない。いいから来いよ」

 輝の言葉に納得してない表情だったが、他の友人達が遠慮なく入っていくのを見て仕方なく卓は家の中へと入っていった。


 招かざる如く卓は女性と友人達についていくと、ある一室へと来ていた。そこは見覚えのある少女の写真が置いてある部屋、仏壇の前だった。友人達はその前に並んで静かに座り始めた。

「 憂?」

 卓は思わずその少女の名前を口にした。この状況に頭が追いつかず真っ白になり硬直していた。

 仏壇の鐘が鳴ったことに卓はハッと気付いた。友人達は目を瞑り拝むように手を合わせる。卓も遅れながらも同じ動作をする。そして、目を開ける。

「憂、元気かな?」

 不意に沈黙だった空気に瑠里の声が響く。

「きっと、元気にしてるわ」

 瑠里の声に応えるように後ろで女性が言う。

「あんな事になるなんて誰も思っていなかった。けれど、あれは事故だもの。誰のせいでもないし出来ないわ」

 女性は続けて言うと、どこか寂しさを残した表情を浮かべた。

 そんな中、卓はある言葉が引っかかっていた。『憂』という少女は事故で亡くなったのかということ。それすら忘れていたのか、と。卓がそんな考え事をしていると、不意に誰かにトントンと肩を叩かれた。

「卓、大丈夫か?」

 振り向くと輝が心配したような表情で卓に問い掛けてきた。

「あ、え?」

 卓は言葉に詰まった。

「後で説明するから」

 輝は卓に誰にも聞こえないような声でコソコソと話した。

「輝と卓、先に行ってるよ」

 唐突に瑠里が卓と輝に声掛けて他の二人と一緒にどこかに行ってしまった。

「ああ」輝は答える。

「ちょ、待って。どこに、」

 卓は問い掛けようとするが、輝に肩を掴まれ遮られる。

「俺も先に行くから、卓は憂のお母さんと話をして来い」

 輝は女性が居るであろう場所を示すと瑠里達の後を追った。一人取り残された卓は輝の示した場所へと足を向けた。輝が示した場所へと着くと、さっきの女性、憂のお母さんらしき人がいた。

 そこはリビングに繋がる台所だった。椅子に囲まれているテーブル席の一つに座りチラシを見ていた。

 女性は顔を上げ卓が来たことに気付き微笑んで卓を見る。そして、数秒間の沈黙が流れ始める。この沈黙は気まずさからくるものなのかは卓にとっては分からなかった。ただ、これから大事なことを聞かされるのかもしれないと緊張感を漂わせていた。

菅原(すがわ)、卓くんね。あの時、あの子をよろしくと言ったのに、なんというか、辛い思いをさせてしまって、」

 女性が口を開くと、苦笑いをするような表情を浮かべて卓を静かに見つめていた。卓はそれを聞くと自分がどんな状況に置かれているか言おうか言わないか悩んだ。黙る卓に女性は静かに待った。卓はこの人を信じようと決意をした。

『憂』の親でもあるこの女性が真実を受け入れてくれるであろうと。なにより信じたかったのだ。

「あのすみません。聞いて下さい。俺、実は、」

 真剣な顔をして卓は切り出した。

明けましておめでとうございます。作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。新年最初の更新分いかがだったでしょうか?

卓は友人達に連れていかれた場所、それは『憂』の家だった。女性に何を明かそうとしているのか。

そして、明かしたことが信じてもらえるのか。次話明かされます。

これから再び憂との関わりを少しずつ再び取り入れようと思ってます。

次話更新予定日は1月13日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

新年も『忘却の中で』をよろしくお願いします。

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