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24話 謎と疑問の交差

「次! おーい、菅原(すがわ)大丈夫か?」

「え?」

「え? じゃないって。次、菅原の番なんだけど」

「ああ」

 ここはカラオケ店。遡ること三十分前のこと。放課後、卓とそのクラスメイトの内海(うつみ)ともう一人のクラスメイトが卓に近づいた。内海が卓の浮かない様子を見て元気付けようと、卓をカラオケに誘った。三人でカラオケ店に向かったものの卓の沈んでいる様子を察した内海はむすっとしていた。依然としてもその様子だ。その理由は……。

「やめーた」

 不意に内海が呆れたように言った。

「え⁉︎」

 卓ともう一人一緒に来ていたクラスメイトが驚いた。卓は思わず驚きの声が出た。

「だってさ、菅原が元気無くてカラオケって感じがしないからさ」

「え、そんなつもり、」

「ある! (ゆう)ちゃんの事だろ。ほら、彼女でもあるだろ。落ち込むのは分かるけど、一生引き摺っていくつもりか?」

 卓の否定の言葉を遮って内海は卓に問い掛ける。その表情は歪んでいたように見えたのは気のせいだろうか。

「え、憂ちゃん? なあ、その憂っていう人の事、何か知っているのか?」

 内海の表情に気付いていないのだろうか、卓はふと頭に浮かんだ疑問を二人に問い掛けた。

「は、なに言ってんだ? 惚けてるのか?」

 二人は急に黙り込んで浮かない顔をしていたが、内海は表情を変えて卓に鋭い視線を向けた。

「いや、その、憂っていう人はやっぱりさ、俺と付き合って、」

 卓は自分が喋っている途中ある事に気付き、黙り込んでしまった。それはある記憶を無くしている事でもあると同時に二人と違う時間を過ごしている事だった。次第に自分が何を言っているのかさえ分からなくなってしまっていた。卓の沈んだ表情から二人はお互い目を合わせ心配そうにしていた。

「内海と菅原(すがわ)、ごめん。俺、もう帰るわ」

「俺も帰る。ってことで早すぎだけど解散でいい?」

「お、おう」

 それは、卓が黙り込んで数秒後の事だった。卓の様子を察したのだろう、二人が帰ると口にしたのだ。まだ十分くらいしか経っていなかった。内海の『解散』の言葉を発すると、卓は戸惑いながらも答えた。

 それからとはいうもの、三人は揃ってカラオケ店を後にした。


 帰り道、卓は遠くから人物二人を見付けた。二人は卓に気付いていない。

「菅原、どうした?」

 卓が急に立ち止まったせいか、一緒に帰ろうとしていた内海が不思議に思い問い掛けた。

「いや、なんでもない」

 内海の声で我に返った卓は答える。

「ん? あれって菅原と仲のいい二人だよな。相変わらず仲がいい事。おーい、」

 卓がさっき視線を向けていた方を向くと、内海は二人に呼び掛けようとする。次の瞬間、卓に口を手で抑えられ、声が出せなくなりモゴモゴとする。

 その視線の先を凝らすと見覚えのある人物が映った。その人物は卓の知る(こう)(まれ)だった。 卓の友人の姿が見えなくなると、卓は内海の口から手を離す。

「ぷはー。なんだよ。突然」

 口元が楽になり、空気を吸って声を発する内海。その声が聞こえていないふりをしているのだろうか、卓は再び歩き出す。それに続き、クラスメイトの一人も歩き始める。ただ一人、内海はその場に留まった。

「いいのか? 菅原の友だろ」

 内海は卓の背中に大きな声を呼び止めるように言う。

「いいんだ」

 卓はそう言うと、クラスメイトの男子と一緒に内海を置いていくように歩き出した。

「おい、待てよ!」

 内海は卓の後を追った。

(あの二人がなぜここにいるんだ? つーか、二人で?)

 平然としていた卓だったが、内心は疑問と困惑で頭がいっぱいだった。



 それから、翌日。

「昨日、ごめんね」

「いや、いいんだけどさ、」

 卓と同じクラスの瑠里(るり)が卓の席に来て謝っていた。卓は瑠里の言葉に気にしなかったが、溜め息を吐いていた。

「え、なにかあった?」

卓の様子を見ていた瑠里が不意に問い掛けた。

「え?」

 思いもしない問い掛けに卓は驚きの表情を見せる。

「いや、あのさ。昨日、昂と稀を見たんだ。二人で並んで歩いててさ、」

 卓は隠すことなく昨日の出来事を話した。瑠里はぽかんとして不思議そうに卓を見ていた。二人の間に無言の空気が流れた。卓は先ほどの発言がまずかったのか、焦り始めた。

「あれ、昨日って昂たちと一緒じゃなかったの?」

 無言の空気を消し去った第一声の言葉は瑠里の疑問だった。その言葉に卓は昨日の瑠里の言葉を思い出した。

『卓、ごめん。私、今日の放課後に輝と一緒に帰るから昴か稀になにか言われたら、』

 唐突にその言葉が頭の中で再生される。

「え? あーそれは、昂たちが、」

 必死に説明しようとする卓だったが、言葉が上手く出てこなかった。その時だった。

 ちょうどタイミング悪く鐘が鳴ってしまった。

「また、みんなで集まった時にでも聞かせて」

 瑠里はそう言って、自分の席に戻ってしまった。卓は早く時間が経ってほしいと思いつつも瑠里の言う『みんなで集まった時にでも』の時を待つしかなかった。誰かの視線にも気付かずに。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?

卓の頭に浮かぶ謎と疑問。その真相が次回明かされます。

当初の話の内容とは違ってしまった気がします。なので、戻そうとしながらも話を進めていきます。

次話更新予定日は来週12月30日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

次回は今年最後の更新となります。ぜひ、よろしくお願いします。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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