23話 懐かしいクラスメイト内海という人物
卓たちの学年が三から二に下がって数日が経った日の事だった。
「卓、二年になって慣れた?」
「んー、まだ普通じゃない日にも慣れてないのに二年になってはまだだな」
卓は二年の同じクラスで友人でもある瑠里と話をしていた。卓がいう普通じゃない日というのは、前日へと『逆戻り』している事をいうのだが、会話をしている瑠里も卓と同じ時を過ごしている。
「あれ、そうなの?」
「そういう瑠里は随分と慣れてるな」
「え、そんなことないよ」
二人の会話の言葉とは裏腹に卓にとっては瑠里の言葉は慣れているように見えたのだろう。
「ねえ、南本さん。あれ、彼氏さんだよね。呼んでるよ」
突然、瑠里はクラスメイトに肩を軽く叩かれて呼び止められた。声がするほうへと振り向く瑠里は女子がある方向へと指差していた。その方向は教室の扉を指していて、瑠里の彼氏の姿があった。
「あ! ごめん、卓。行ってくるね」
瑠里は卓に一言残し、その場から離れた。
「ああ」卓は相槌を打って答える。
瑠里の彼氏は同じクラスなら誰でも知っていた。卓も知っているが、少し前から不気味に見えていた。
「よ、菅原!」
不意に卓の耳に呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、懐かしいクラスメイトが居た。
「おー! 内海懐かしいな」
「は、なに言ってるんだ。大丈夫か?」
卓は懐かしい顔に思わず声に出してしまっていた。卓の言葉に心配そうな表情を浮かべる内海という人物。卓はしまったと思い、咄嗟に手で顔を隠した。
「悪い。なんでもない」
「ふーん、変なやつ」
卓が謝ると、内海はボソッと呟くように言った。
「それよりさ、もうすぐ二年終わりじゃん。もう時期学年が変わるし、また同じクラスだといいなって思ってさ」
内海は続けて言うと、卓は何かを思い出した。
「そ、そうだよな。同じ学年だといいよな」
卓はそう言って苦笑いする。
(俺にとってはこれからが同じクラスなんだけどな)
三年になったら、内海という人物とは同じクラスではなかった。しかも一番教室が離れているクラスだった。卓はそんな事を考えて少しばかりがっかりした。
「なんだよ。もしかして、彼女の憂ちゃんの事でまだ悩んでいるのか? まあ、あれは突然だったからな。何かあったら相談乗るからな」
「え? 今、なんて、」
卓の表情を察した内海は元気付けようと言葉を掛けた。その言葉に卓は問い掛けようとした。卓の言葉は内海に届かなかった。内海は言葉を残すと、卓の肩を叩いて自分の席へと戻ってしまった。
内海と入れ替わりにちょうど瑠里が戻ってきた。
「卓、ごめん。私、今日の放課後に輝と一緒に帰るから、昴か稀になにか言われたら、」
「分かった」
卓は瑠里が何か言おうとしてるのか分かったのか、言い終える前に言葉を遮って答えた。
「あ、うん。よろしく」
瑠里は俯く。その後、授業がいつものように始まった。
卓は心底「二年の授業なんてな」と軽く思っていたが、その一方で乗り越えなければと耐えた。
鐘の合図で授業が終わり、いつの間にか放課後になっていた。
「卓、よろしくね」
「ああ」
放課後になると、瑠里が直ぐに卓のところに来て声を掛けると教室を後にした。何をそんなに焦るように教室を去っていくのか、卓は瑠里の後ろ姿を見て不思議に思った。
それから、卓はある人物を教室で待っていた。その人物は一向に教室に訪れなかった。席に座っていた卓はついに立ち上がった。だが、立ったまま硬直している。このままもう少しだけある人物を待ってみようか、一人とぼとぼと帰ろうかを考えていた。ちょうどその時だった。
「なあ、菅原。俺たちとカラオケに行こうぜ」
「おう、行こうぜ」
午前中に声を掛けてきた内海という人物ともう一人のクラスメイトが卓に近づいてきた。
「え、内海? と、」
思いも寄らない誘いに卓の頭が追いつかない。それでも、困惑する中で直ぐに冷静になり、過去を振り返る。
(過去にこんな事あったっけ? 内海とは仲良かったが、二年が終わろうとしている時期にカラオケ。確か内海とではなかったはずだ)
「どうした、菅原。大丈夫か? やっぱり憂ちゃんの事、」
「だ、大丈夫。カラオケ行こう!」
内海は卓が何も言わないのをどこか心配そうに気に掛けた。卓はハッと我に返った。よく考えた結果、内海たちの誘いを受ける事にした。
作者のはなさきです。読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?
卓たちが3年から2年に変わり、ここで新しい登場人物が出てきました。卓は懐かしながらも過去とは違う出来事。何が待ち受けているのか。そして、やっと瑠里の苗字も出てきました。
次話更新予定日は来週12月23日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。
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では、またの更新を。




