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21話 五月の空白と隠された何か

「それで分かったことって言えば、」

 言葉にしたのは瑠里(るり)だった。(たく)(ゆう)という名の少女に告白された夢を見てから一ヶ月経った日の事。一ヶ月経つのは早いのか遅いのか分からない。

 卓にとっては一ヶ月は遅く感じていた。それは告白される夢を見てからはほとんど何も変わった事がなかったからだった。ただ、逆戻りの時間が進んでいくだけ。後はゆっくりと時間が過ぎていった。

「おい、聞いてたか?」

 突如、卓の耳に届いた声。卓は俯いていた顔を上げると、視線には(てる)と瑠里の姿が映った。

「悪い、聞いてなかった」

 我に返った卓は輝と瑠里に謝りつつも、今現在の事の成り行きを思い出していた。数分前から逆戻りを過ごす二人と情報交換という名の話し合いをしていたところだった。

「それでなんだったっけ?」

 卓はそう言って二人に向き直った。

「はあ、ちゃんと聞いててよね。重要な事なんだからさ」

 卓の言葉に溜め息をつきながら瑠里が言う。この話し合いが何かの鍵を握るはずなのに、卓は事の重要さを感じていなかった。それは今までで何の利益にもならなかったからだ。それに理由はもう一つあった。

「卓は憂の夢を見たんだよね?」

「ああ、三回も見た」

 瑠里の問い掛けに卓は頷くように答える。

「確か三回目は告白された夢だったよな?」

「え?」

 突然、輝が確認するように言葉を発した。卓は余りの突然の言葉に思わず驚きの声を出した。それもそのはず、その情報は。その場は数秒の沈黙に覆われた。

「それで、夢の話だけども、」

「ああ。一度目は、」

 瑠里が話に戻ろうと沈黙からの第一声を発した。卓は言葉を続けようと話に戻った。

「一度目は三、四ヵ月前くらいの七月に授業中に見たな」

 思い出しながら言葉にする。

「二度目はその一ヶ月後の六月。で、三度目はちょうど一ヶ月前くらいの四月に」

「なるほどね」

 卓が続けて言うと聞いていた瑠里が納得したのか頭を縦に振った。

「なんかおかしくないか?」

 横で聞いていた輝が不意に疑問を浮かび上がらせた。

『え?』

 偶然にも卓と瑠里の声が重なった。何がおかしいのか二人とも検討がつかなかった。

「おかしいってどういうこと?」

「考えてみろよ。卓が見た夢って七月、六月、四月だろ。五月は見てないって何か変だと思わないか?」

 卓が頭を巡らせてる間に瑠里と輝が会話を進める。

『あ、』

 輝の説明に再び卓と瑠里の声は重なる。

「でも、それは五月にゴールデンウィークがあるし、休みが多いってことで夢を見なかったんじゃない?」

 瑠里は冷静になって解決に持っていこうと思い浮かんだことを言った。

「それにしたってなんだか不自然な気がするな。もっと、何かが関係している事があるんじゃないのか?」

 瑠里の言葉に納得出来ない様子の輝。それもそのはず、そんな単純な話ではないのだから。

「なにかってなによ!」

「それは、分からない」

 なぜか空気が冷たくなってしまった。再び沈黙が流れた。

「そういえばさ、気付いたんだけど話し合いしてる時、俺の情報ばかりだろ。輝と瑠里が分かったことってないのか? 同じ逆戻りしてるんだろ?」

 沈黙を破ったのは卓の疑問の言葉だった。

「分かったことね、ないよね?」

「あ、ああ。悪い何も無いんだ」

 二人は確認し合うように言った。卓は二人が何か合図を送るようにしたのを見ていた。

「そ、そうか」

 卓は頷きつつも不思議でならなかった。その後は情報が尽きたため、話し合いは終わってしまった。卓は話し合いが終わった後、一人で考えていた。

(二人は俺の知らない情報を何か隠している)

 卓は自然と心の中で呟いた。

作者のはなさきです。今回いつもより短めですが最後まで読んでくださりありがとうございます。

いかがだったでしょうか?瑠里と輝は何かを隠しているのでしょうか?その隠していることとは!?

実は、この小説は六回目の開催である小説大賞に応募しています。(第一作の『桜が咲くころに』など他作も応募しています。良ければそちらも。

[桜が咲くころに]https://ncode.syosetu.com/n9496bj/


次話更新予定日は来週12月9日(土)のお昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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