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20話 三度目の夢と告白と

 勉強会から数日経ったある日のこと。桜が散り始める四月下旬。それは突然の事だった。

菅原(すがわ)くん?」

「え?」

 不意に(たく)の目の前の少女が名前を呼ぶように問い掛けた。予想外の問いかけに卓は思わず声を出した。それから数秒間の沈黙が流れた。

 次の瞬間、卓の目の前が真っ白になったかと思うと、今度は違う光景に切り替わった。ただ一つ、目の前の少女の姿は変わらなかった。

「ひと目、見た時から気になってました。私で良ければ付き合ってください!」

 不意をつくように目の前の少女は頭を下げてとんでもないことを口にした。告白だった。

「あっ、えーと」

 卓はあまりの事に頭が混乱していた。返答に困っていると、目の前の少女は顔をそっと上げて、卓をじっと見つめていた。

「あ、いきなりごめんなさい。駄目、でした、か?」

 少女は謝ると、恐る恐る様子を伺うように問い掛けた。

「いや、そういうわけでは。ただ、いきなりだったから」

 何か言おうと卓は思った事を口にした。

「本当にごめんなさい」

 それを聞いて咄嗟の反応で少女は頭を素早く下げながら再び謝った。

「俺で、」

 卓は少女の告白に応えようと言葉を口にする。次の瞬間。

「痛っ!」

 突如、卓は何かに叩かれ強い衝撃とともに頭を抑えて起き上がった。

「卓、なに寝てんだよ! 学校で寝るとこなんて初めて見たぜ。まあ、同じクラスになるの初めてだもんな。じゃあ、またな!」

「ああ。つーか、謝れよ!」

 卓の頭を叩いたのは(こう)だった。昴は卓が起きるのを確認すると、鞄を持ってそそくさと教室を出ていってしまった。卓は昴の言葉に目を擦りながら返事をしたものの、叩かれていた事を思い出して謝るように促した。だが、昴に届かなかった。

 教室の教壇の上の掛け時計を見上げる。長針は六を示し、短針は三と四の間を示していた。午後三時半。学校の授業は既に終わっていて放課後になっていた。

「もうこんな時間なのか。そういえば、」

 あっという間の時間に卓は溜め息を吐くと、ボソッと小声で呟き何かを思い出す。素早く鞄を持って早々と教室を出ていった。

「あれ、いないな。この教室のはずなんだけどな」

 卓は自分の教室を出ていった直後、とある人物達がいる別の教室の前にいた。ある人物達を探して教室内を見渡したが見つからない。前の扉に掛かっているクラスの数字の看板を見上げるが間違いない。

「いないから諦めるか」

 卓は呟くと、廊下を歩き出した。

「あ、卓!」

「本当だ。ここでなにをしてるんだ?」

「もしかして、情報を見つけたとかだったら、」

「今はやめとけって」

 少し後ろで誰かがそんな会話していたことにも気付かず、卓は下駄箱へと向かった。


 下駄箱に着くと、上履きから靴へと履き替える。その場所は放課後だと言うのに人が少なかった。卓はそのまま昇降口を出て正門を目指す。正門には桜が散った花びらが地面に沢山落ちている。

(あれから、もうすぐ半年くらい経つのか。未だに分かったことといえば、)

 頭の中で振り返るように考えながら正門を背に帰路についたのだった。


「それにしても告白される夢を見るなんて、」

「告白? 誰かに告白されるなんてよく夢見れるわね。あの子のこと、忘れたんじゃないでしょうね?」

「え、俺今何か言ったのか?」

「馬鹿ね。告白される夢を見るなんてって自分で言ってたの覚えてないの?」

 卓はあれから真っ直ぐに家に帰ってリビングで寛いでいた。一人でソファに座って放課後に見た夢の事を考えていた。まさにその時だった。知らずに美琴(みこと)がやって来て無意識に呟いていたことを自覚させるように答えた。しまった、やってしまったと思った卓は頭を抱えて俯いていた。

「誰に告白された夢かは知らないけどあの子と付き合っ、忘れちゃダメよ」

美琴はそう言ってリビングを去ってしまった。

(多分、(ゆう)っていう人の事だと思うんだけど。それが忘れているんだよな)

 美琴の言葉でふと思った事を心の中で呟く卓だったが、なにやら浮かない気持ちだ。それも予想している人物で、実際忘れてしまっているからだ。全く記憶にない人物の名前が友人だけではなく家族にも知られている人物でもある。

「ん、待てよ? 付き合っていた?」

 美琴の言葉を思い出し、今日あった夢と一致していた事に気付いた卓は座っていたソファから素早く立ち上がり、リビングから急ぐように足早で出ていった。

「美琴姉!」

 大声で名前を叫ぶも返事はない。家中探しても姿が見付からない。外出してしまったのだろうか。数分も経っていないはずなのに。

 不思議な出来事に独り家に取り残されたような感覚に襲われ、その場に立ち尽くしていた。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

お待たせしてしまいすみませんでした。先週はPCの調子と体調不良が重なり更新できませんでした。

卓が戻る時間の日常でとうとう3学年最初に戻ってしまいました。夢で起きた告白の意味とは?

次話更新は来週の12月2日(土)のお昼の予定です。※予定変更の可能性あり

良ければ、ご感想・ブックマーク・評価していただけると嬉しいです。

では、またの更新を。

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