17話 話し合い
「それでおかしいと思ってた事があるんだけど」
不意に瑠里が何かを思い出して話を切り出した。ここは輝の部屋。
少し遡ると、卓、輝と瑠里は一緒に帰ろうとしていた。突然、輝が『情報交換』をしようと提案したところ、意見が一致し輝の部屋へと集まり今に至った。一致し難い者がいるにも関わらず。
情報交換とは三人はいつもと違った毎日、時間が一日ずつ巻き戻されている日を過ごしている。そのために、戻らない普段の日常のヒントとなる出来事の情報を話し合うというものだった。一人一人過去の記憶とは違って、変わった事が度々起こった。その度に情報を話し合うと決めている。突然の話し合いもある。今がその突然の話し合いの時。
「確か、少し前、普通なら少し後、稀と昴は付き合い始めたんだよね。今日、二人が一緒にいるのってどういうことなのかなと思って」
「あ!」
瑠里が言葉を口にすると、卓が何かを思い出したように表情を変えて声を出した。
「そう、そのことで二人を追いかけようとしたんだ。しかし、時既に遅しで居なかった訳なんだ。な、卓?」
説明するように答える輝。実際、追いかけようとした輝は同じ行動をした卓に振る。瑠里がいう前に輝と卓は気付いていた。卓は他の事を考えていたせいか、輝の言葉に軽く相槌を打つだけだった。
「なるほど、やっと分かった!」
瑠里は問題が解けたような元気な声で言った。
「そういえば、卓が見た夢ってやつの事なん、だが」
輝が新しい話題を話し始めた途端だった。
「たーく!」
不意に瑠里が卓を呼ぶ。それも卓の耳元で大きく。その様子に輝の視線が黙っている卓ではなく、瑠里に向いていた。
「わあ! な、なんだよ?」
卓が我に返ったように瑠里の大きな声に驚いていた。
「ぼーとしてどうしたの? 大丈夫?」瑠里が心配な顔をする。
「えーと、何を話してたっけ?」
不意に卓はそう惚けながら輝のほうへと視線を向けた。卓は何かを感じた。それは輝が卓を睨みつけているような、そんなオーラを出していたような気がしたからだ。
「大事な情報交換なんだから、ちゃんと聞いてろよ!」
輝は不機嫌そうな雰囲気を醸し出し、直ぐに大きな声を出した。
「分かった。分かった聞くから!」
卓は輝の気に触れないように言葉を発する。
「卓が見た夢ってやつはさ、」
輝が話し始めた直後の事だった。
「あ、もう夕方だよ! 暗くなる前に帰らなきゃ」
突然、部屋の窓の外を観ていた瑠里が声を出した。一瞬だけ輝は邪魔が入ったと感じたが仕方ないと溜め息を一つ吐いた。話も終わっただろうと立ち上がった卓。
「俺の家で夕飯食べて行けよ。親に言えば問題ないだろ」
輝から予想外の言葉を聞いた卓は不思議に思った。それは卓だけのようだった。
「私も食べる! また輝の家でおばさんの料理が食べれる!」
「落ち着けよ。それで卓はどうする?」
問い掛けにどうしようか悩む卓。そんなに悩むことでもないようだが、卓に向けられた輝の視線が睨むような鋭い目付きに変わったように見えてならなかった。瑠里も黙ってしまい、暫しの沈黙が流れた。
「そういえば、美琴姉に買い物を頼まれているんだった。俺、帰るわ」
咄嗟の思い付きで誤魔化しその場を乗り切ろうとした。
「んじゃ、また後日に情報交換しよう」
卓の言葉に輝は分かっていたかのように直ぐに切り上げた。卓は二人に別れを告げて家に向かった。玄関の扉を開けると、外の暗さに一瞬驚いた。
さっきまで夕暮れで空が橙色に染まっていたのに今は完全に日が沈んではないとしても薄暗くはなっていた。携帯を取り出し時間を確認する。時刻は十九時半過ぎだった。いつの間にか時間が経っていた。卓は少し早足で帰路につく。
卓にはこれから起こることが急速に進んでいくとはこの時は思っていなかった。
作者のはなさきです。最後まで読んで頂いた方ありがとうございます。
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さてさて、新たな情報を交換して話し合った3人。色々分かった中で卓は輝の怪しさに一層恐怖が増す。
ゆっくりなペースで話を進めていますが進めたいところです。
次話更新は来週11月4日(土)の予定です。※予定変更の可能性があります
初めての方も読んで下さってる方も次話も読んでくださると嬉しいです。
では、またの更新を。




