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14話 忘れていた夏祭りと誤魔化しと

 七月二十日。(たく)が『逆戻り』の日々を過ごして一ヶ月余り経った頃。あっという間に夏休みが終わってしまっていた。学校も始まり、いつもの学校生活を過ごす事になった。

 しかし、彼らを除いては夏休みが始まろうとしている日だった事に卓は内心がっかりしていた。そんな日の中で、卓は教室である話を聞いた。

「ねえ、夏休みに夏祭りがあるでしょ。成瀬くん誘って一緒に行こうよ」

「そうだね。ってもう話せるようになったの?」

「それが……」

 卓の席すぐ近くで女子達がそんな会話をしていた。

(そういえば、夏祭り行ってなかったな。皆からもそんなこと一切言ってなかったしな)

 卓は思い出したように心の中で呟いた。皆とは卓の友人達である。

「よ! 卓、なに考え込んだ顔してるんだよ。夏はこれからだぞ!」

 横からひょこっと(こう)が顔を出して卓に声を掛けてきた。

「いや、夏休みに祭りに行くって皆で決めてなかったと思ってさ」

 卓は今さっき聞いた会話から思っていた事を口に出した。

「なに、言ってるんだ? つい最近、皆で今年は行かないって決めただろ。その代わり、(ゆう)のお墓参りに行くって。あれ、もしかして聞いてな、」

「 はーい、休憩時間は終わりよ。席に着いてない人は着いて!」

 卓の言葉に答えた昴だったが、途中で壇上に立つ教師に遮られたため、そこで話が終わってしまった。

(いつそんなの決めたんだっけか? まあ、後でそんなことがあったか聞いてみよう)

 卓はそんな事を考えながら、退屈な授業の準備を始めた。


 数時間後のこと。時刻は午後の四時過ぎ。あっという間に授業の時間が終わり、放課後になっていた。そんな放課後に卓とその友人達は教室に集まりなにやら話をしていた。

「なあ、卓がこの前言ってたのってさ、夏祭りじゃなくて、憂のお墓参りの事を忘れていたんだよ」

 不意に昴が話を切り出す。そこにいた卓以外の人物は驚いていた。(てる)瑠里(るり)は事情を知っているから演技なのかもしれないが。

「え、この前話したよね?」

 事情を知らない(まれ)だけが本当に目を丸くして驚いている。

「まあ、忘れる事もあるだろ」

「そうそう。それか疲れてるからってこともあるだろうしさ」

 輝と瑠里が卓のフォローをするように各々言う。しかし、それが納得ではなく疑いに変わり、昴と稀は顔色を曇らせた。

「何か隠してる事あるんじゃないか?」

 昴が疑いの目で問いかけていた。

「な、何を言ってんだ? あ、あるわけないじゃないか!」

 輝が誤魔化すように言うが、それはどこか覚束無い話し方だった。

「まあ、いいや」

 昴は呆れて窓の外に視線を移した。視線の先は部活に励む下級生の姿が映っていた。少しの沈黙が流れる。それは冷めた沈黙かは分からないが、そう感じさせた。

「俺、帰るわ。じゃあ、また明日」

 そう言ったのは昴だった。他の四人に別れを告げると、昴はその場から立ち去ってしまった。

「私も帰る。じゃあまたね」

 稀も帰ると口にすると、昴の後を追いかけるようにいなくなってしまった。残された卓、輝、瑠里。

「俺たちも帰る、」

「そういえばさ、少し前のことなんだけど、」

 卓が思い出して何かを言おうとした時だった。

「さあ、帰ろう」

 輝が言葉を遮って立ち上がる。何かがおかしいと卓は感じ取っていた。あの時から何か輝の様子が怪しいと思い始めていた。

 輝は瑠里の腕を掴んで連れ去るように早々と立ち去ってしまった。瑠里は輝に引っ張られながらも卓のほうを振り返っては『ごめん』の仕草を卓に向けていた。

 卓は二人についていかず、独りその場所に数分間残ることにした。

こんばんは、作者のはなさきです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか?

今回はやや短めの文章となっています。よければ、感想頂けると嬉しいです。

次話更新は来週の10月14日の予定です。※予定変更の可能性あります。

次話も読んで頂ければと思います。

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