ダグラス王子の思い
ダグラス王子様が動き出します。
4.
祖国への長い10日もの帰路の中で悶々とダグラス様の言葉を考えていたが、あの王子様が言った言葉を覆す事が無かった事をしみじみと思い出し、家にたどり着いた時にはあきらめて決心を固めた。帰路の馬車の中で悶々と悩んでいる私を心配そうにしているヒラリーやデルタンテ教授に気が付いて入たが気が付かない降りをして一人でグダグダと悩んでいた。だが、流石に自分の家が直ぐそこに為った時にはやっと自分の気持ちを割り切る事が出来た。グダグダと悩んでもどうなる事でも無いし、自分らしく無いと割り切る事にしたのだが。。。。。さてと、どうやって父親と兄を説得するかが問題なのだが。。。。。
それだけでは無い、王子達の妃候補の事もいい加減決着を付けないと。そんな事をやっぱりゴタゴタと纏まりも無く考えて居たが、どっちにしろ散々妃候補の辞退を申し入れても受け入れてもらえる事無く8年が過ぎた事を考えると、やっぱり逃げの一手だよなぁ。と大きな溜息しか出て来なかった。
それにダグラス様の言葉。。。。。本当に来るのだろうか?どういった意図が有るのか考えるのも恐いが、現実を見なくては行けないよねぇ。いい加減前世を合わせて47年か。。。。。
この世界でも18年、本来なら結婚を視野に入れる年で有るのは確かだけれど、どうやら私には前世からの習性か仕事に対するこだわりや興味の方が恋愛より強いのは確かで、だからと言ってダグラス様に魅かれて入ないとは思わない。正直な所、ダグラス様の強引さは戸惑う事も有るけど嫌だと思った事は無いし何よりも気軽に話せる、自分を繕う必要の無い人に出会えた事はこれ以上ない幸せだと思う。そして、それはアレクも同じ。だけど、私の気持ちは決まっている。アレクには友情以上の気持ちを持てていない。だからと言ってダニエル様が好きか?と言われれば、自信が無く為る。魅かれて入るとは思うのは確かなのだが。。。。。だけどダグラス様は私のデビューの為にこの国に来る。その事を正直に両親とウエイン兄様には伝えなくては。そう、決心は出来たのだが。。。。。
さて、ダグラス様の件で両親とウエイン兄様にはちゃんと話をしなくては行けないので、とにかく両親とウエイン兄様に時間を取って頂き事情を良く把握しているヒラリーに一緒に来てもらって話し合う為に三人と向かい合った。
「で、どういった話なのかな?ノエル。」
やっぱり、ウエイン兄様が前面に立つんだなぁ。どうやら両親は私とウエイン兄様の話を聞き判断するようだ。私が留学していた5年の間にウエイン兄様はすっかり我家の実権を握り、領地経営、商業の方も全て実権を握っていると弟から聞いている。流石にウエイン兄様はまだ20歳なので侯爵の爵位を引き継ぐのはまだだが、ウエイン兄様が結婚したら直ぐに爵位を引き継ぐ事は既に決定していると両親から帰国後直ぐに聞いた。と言っても余りに優秀な兄様は忙しくて恋に興味が無いらしい、だもんでまだ婚約者すらいないのだが。。。。。
「話と言うのはウエイン兄様、実は3か月後に有る私のデビューの事なんだけど。」
私はここで詰まってしまった。どうやってダグラス様の事を言えば良いのか、正直に言うべきなのは解っている。そう決心した。だけど、やっぱり家族にその事を言うのは大きな勇気が必要で言い淀んでいると。。。。。
「ノエル、君がデビューしたくないのは解っているよ。だけど、君は二人の王子妃の候補に変わりは無く、いや、正直に言おうノエル。君はエリック王太子の第一候補に決定しそうに成っている。」
えっ!?私はウエイン兄様の話に驚きで固まってしまった。
「ノエル。君の卒業論文がエダール国で話題になったよね。あれがこの間君の事だと王家にばれてしまった。それで、一気に君が第一候補に挙がってしまった。多分その連絡が来週辺りには来るだろう。ノエル、君はもう逃げる事が出来なくなったんだよ。」
「もうそれは決定と一緒と言うことですか?私に断る事は出来ないのですか?」
私は声と体が震えるのを懸命に抑えていたが、うまくいかなかった。
「残念ながら難しいと思う。よっぽどの事が無い限り君のデビューが為り次第エリック王太子・ゲイル王子と他の婚約者候補達との交流が始まり、それに参加する事は義務となるだろう。いや、最悪君のデビューが終われば直ぐにでも婚約者候補達の名前が公示される可能性の方が高い。」
お兄様は苦い顔を浮かべて私の顔をひたと見つめた。
私は頭を抱えてしまった。只でさえダグラス様が私のデビューのパートナーを務められるのに。。。。。それが如何程の物議を醸しだすのだろう。。。。。。この事は絶対に事前に言わないとフィッツジェラルド侯爵家の大問題となる、いやそれだけじゃない国家間の問題にも為る。一体どれだけの国際問題になってしまうのだろう。考えたら怖くなって涙がこぼれてしまった。
「ノエル。君が王太子妃候補となる事が嫌なのは解っている。それから逃げる為に君は王族と関わらないように他国へと留学したのだから。だけどそれが今回は仇となってしまった。君は優秀すぎたんだよ、ノエル。偽名を使っていても全てを隠しきれるものでは無かった。君は覚悟を決めなくては為らない。」
解っている、たかが王太子妃候補として王家との交流だけならここまで躊躇う事は無かっただろう。その程度で有れば、王太子に嫌われるように仕向ければ良いだけだ。簡単では無いだろう、家名を損なわない様にしながら、候補から外れるように振る舞う。その難しさは解るし、その計画が全て当てはまると思うほど甘い考えは持っていない。
だけど、今回のこれは根本的な問題が代わって来る、国際問題と為るのだ。どうしよう。。。。。でも、言わない事は出来ない。そうもう一度決心してウエイン兄様と向き合った。
「ウエイン兄様、父上様、母上様。私は。。。。。デビューのパートナーを既に申し込まれています。そして、それを受ける事に決めていました。。。。。」
「それは君が留学中の学友なのかな?それなら直ぐに断わりの手紙を書かなくては行けないよノエル。君は王太子妃候補として家族以外のパートナーをデビュー舞踏会に連れて行く事は出来ない。」
「私にはお断わりする事が出来ません。。。。。ウエイン兄様。」
そう言った私を見てウエイン兄様は悲し気に溜息を付いて入た。
「君はその男と将来を誓ったのかい?」
私は顔を横に振って、違うと意思表示をした。言葉に出来なかった。
「では、ノエル。君はその男が好きなのかい?」
「解らないのです、兄様。」
そう言って私はうつむいてしまった。そして、私はそのパートナーに為る人の情報を全く伝えられない、伝えるのが怖くて口を噤んでしまっていた。そしてウエイン兄様はそんな私を見て少し怒った顔をヒラリーに向け問い詰める様な口調で聞いた。
「ヒラリー、君はノエルの事を5年にわたって見て来た。君のレポートの中にノエルのパートナーに立候補するような男の事はレポートには一切無かったが。君はこの事を私達に隠していたんだね。だったら、その男の事を今・ここで・正直に私達に報告するんだ、ヒラリー。」
ウエイン兄様は厳しい瞳をヒラリーに向けて問い質していたが、ヒラリーはそれに臆することなくウエイン兄様の瞳を見て冷静に答えた。
「申し訳ございませんでした、ウエイン様。ですが、ノエル様は学業や支店のお仕事に忙しく本当に恋人はおられませんでした。只、特に仲が良かった御友人が特殊でしたので、お伝えする事が出来ませんでした。それは、私の勝手な判断でございました。申し訳ございません。」
そう言ってヒラリーは頭を深く下げ、その顔を上げる事が出来なかった。私はヒラリーにだけその責任を押し付ける事は出来ないともう一度決心して私から全てを話す事をもう一度自分に言い聞かせて顔を上げて、兄様と向き合った。
「特殊とは?」
そうウエイン兄様は怪訝そうな顔を私に向けた。
「ウエイン兄様、ヒラリーの責任では有りません。私が彼女の口を封じたのです。もちろん教授の口も、私の家令として雇ったタイラーにも。」
そう言ってウエイン兄様がヒラリーを追求するのに横入りしてヒラリーから注意を私に向けてもらった。そして私は包み隠す事無くウエイン兄様と両親に5年間に及ぶ学園生活の全てを正直に話した。同じクラスにいたエダール国のフィーデル王女と仲良くなった事、そしてそのつながりでダグラス第二王子とも親しく為った事、15歳に為った時に留学して来たトエリス国の宰相の息子のアレク様とも仲良くなった事。ダグラス王子が卒業するまでは四人で常に行動して入た事、15歳でエダール国でデビューした事。舞踏会やパーティに呼ばれる時は常にダグラス様かアレク様がパートナーとして常に一緒に社交の場に卒業まで出ていた事。そして最後に、今回の私の母国のデビューにダグラス様がこの国に来て私のパートナーに為る事を。
私の話が進むにつれて両親は顔色を無くして行き、兄様はドンドンと眉を顰め眉間にしわを寄せて、最後には頭を抱え込んでしまった。
「で、ダグラス王子は何時こちらに来る事に為っているんだノエル。」
「いつも通り私のドレスの用意をすると言っていましたので、多分二か月後位には来るかと思います。詳しい事は手紙で聞いておきますが。」
「ノエル。。。。。君はいつもドレスを贈られていたのか。。。。。」
「はい、ダグラス様が私をエスコートする時はダグラス様が、アレク様が私をエスコートする時はアレク様が私のドレスを用意して下さっていました。」
ウエイン兄様は大きな溜息をついて恨めしそうに私を見つめていた。その気持ちは良く解る。これは国際問題だもんねぇ。私もどうしたら良いのか分からない。私も大きな溜息をついてしまった。
「エダールでデビューしていたとは、良くその事がこちらの国に入ってこなかったな。」
「あちらでの社交は断る事が不可能な王家と公爵家の招待状だけお受けして、後は学生だからと片っ端から断っていましたし、ダグラス様もアレク様にも私の事情を知っておられたので、あくまでも学友としてノエル・アヤカとして接して下さり、その様に他の方々にも紹介してくださいました。時々タナイス国から来られた方が居る時は隠れてましたし、5年もの長い間にばれる事が無かったのはさいわいでした。」
だが、帰りの馬車の中でデルタンテ教授に説明されるまで気が付きもしなかったが、ダグラス様とアレクが私の個人情報の隠蔽の為に動き回って下さっていた事を説明された時は、泣くほど嬉しかった。本当に私は二人に甘やかされて、それに気が付きもせずに当たり前の様に振る舞っていた。その恵まれた幸運を今になって本当に実感する。
「ノエル、君がパートナーを断れない事情は分かった、エルダー国の王子の申し込みを断る事は不可能だが、だからと言ってそのまま進める事は難しすぎる。僕と父上で君の王太子妃候補としての発表を遅らす努力は最大限にしよう。だから、君もこの事態を早くダグラス王子殿下に連絡を入れなさい。僕達が出来る道を探さなくては行けない。」
そうして、父上と兄様は家令と執事を連れて執務室の方へ急いで籠ってしまい、母上は疲れたと言ってベットルームへと消えて行った。私は自分の部屋に帰り私専用の家令で有るタイラーに先程聞いた兄様からの話を聞かせたらタイラーも顔色を変えて直ぐに早馬の手配を致しますと言って出て行った。
私はなるべく冷静に事実だけを伝える様にと努力と忍耐力を振り絞り、ダグラス様への一通の手紙を書き終えた。手紙を書きながら、少しでも油断していると助けて、ここから連れ出して、と書きそうになるのを懸命に抑え込み、胸が苦しくなるのを自覚しながら、やっぱり私はダグラス様を好きになっているんだ。と自覚した。
一方エダール国の王城でダグラス王子は情報収集の為にタナイス国に放って入た密偵からの報告を聞いていた。
「そうか、ノエル事がばれたか。」
「はい、その情報によりノエル様は王太子妃の第一候補に決まりそうだと。」
「解った、父上と兄上と相談して直ぐに動くよ。報告をありがとう。悪いが引き続きあちらの王国の動きとフィッツジェラルド侯爵家の動きも抑えておいてくれ。」
そう言ってダグラス王子は自分専任の執事を呼び出し、国王と兄上への緊急な要件での同時謁見の申し込みを伝えに走らせた。
二人は珍しいダグラス王子からの緊急な申し込みに驚きながらも直ぐに時間を調整してダグラス王子と対面していた。
「で、緊急の用とは何なのだ、ダグラス。」
「ノエルがどうやらタナスト国の王太子妃候補の筆頭に為りそうです。こちらで話題となった彼女の卒業論文が原因で全てがばれてしまったようで、こちらでの社交の様子などの情報もどうやらあちらの王国の耳に入ったようです。彼女の持つ才能と人脈に目を付けられました。」
「まあ、ここまで良く隠せたものだとお前とアレク君の手腕には感心していたが、とうとう隠せ切れなかったか。で、お前はどうしたいんだダグラス。」
そう王様は少し溜息を尽きながらダグラスの決断と行動力が試さる時が来たなと思って入た。
「正式に王国を通してノエルへの結婚の申し込みをお願い致します。一日でも早く、あちらの国がノエルへの王太子妃候補としての正式な発表が成される前にその手続きをお願いに参りました。」
「それは構わないが、ノエル嬢はそれを承知しているのか?あちらの家族は?」
「タイラーとアレクに直ぐに連絡を取ります。そちらの事は私にお任せ頂けませんでしょうか父上。」
「承知した。では、お前はそれらを直ぐに手配をしておけ。私は重鎮達へ会議の招集を掛けておこう。」
そうしてエダール国でも慌ただしい動きを見せ、一気に時が動き出した。
ダグラス王子や王の予想通りノエルの優秀な頭脳を惜しんでいた重鎮たちは反対することなくノエルはダグラス王子殿下の妃にふさわしいと急いで動く事が早々と決定して正式な書状の用意と使者としての外交官が迅速に選ばれ、直ぐにタナイス国へと使者が送られた。
一方ダグラス王子もドレスの注文などの手配を素早く済ませ、自身の準備を早急に終わらせてノエルに正式な結婚の申し込みをする旨の手紙を書きあげ、既に王室を通じて正式な使者を出したことを書留め、早馬でノエルに手紙を出した。
そしてダグラス王子はアレクにも諸事情を伝える手紙を書きあげ、まあ、あちらでもこの事を掴んでいるだろうからアレクも直ぐに動くだろうと予想が付くので、まあ心配は余りせずとも良いだろう。と判断して簡潔なこちらの動きを知らせる手紙で済ませた。
予定よりも一か月半以上も早くタナイス国に赴く準備を始め、出発を翌日に向かえた時にノエルからの書状がダグラス王子の手元に届いた。その文面は簡潔で要点だけを書きしめているが何度も躊躇いながら書いたであろう事がうかがえる手紙だった。少し乱れた字としわに為っている紙を見つめ彼女の動揺が伝わって来る様で逸る心を抑えるのが大変だった。ダグラス王子は早く、ノエルに会って抱きしめたい衝動に駆られながら旅の支度を急がせる為、近衛に素早い指示を出して出発の準備を整えた。
そしてダグラス王子は馬車などを使わず選ばれた強靭な近衛と騎士に囲まれ、馬車では10日掛かる距離を馬で7日で踏破し、四日前に出発している使者の後日にタナイス国に到着する予定を遵守する為に万全を期す旅程の確認をし出発した。
なんと 370PVも!!Σ(゜□゜(゜□゜*)
週一の更新頑張っていますが、これから先は少し難しそうです。
頑張りますが、余り期待しないでくださいねぇ (o*。_。)o