2.06 アレク側
2.06:アレク側
待ちに待った留学がやっとかなった。15歳に為るまで待つのが気が遠く為る程長かった事か。自国の教育機関で学ぶことも無く為り宰相で有る父親の手伝いばかりをして来た三年。あくまでも手伝いなので主な事は書類の整理や間違い探しの様な細かい事だけだったが、自国の抱えている問題点が書類の中からでも結構見える物で、父親に自宅で私の考えを述べて見たりもしていたお陰で結構楽しんでいたのかも知れないが、やはり自分の中に有る耐えがたい程の知識欲には勝てなかった。
最初に学園を見た印象は圧倒的な輝きに満ちて見える建物だった。流石にこの世界一の大国でこの世界の知識が全てここに集まるとまで言われている学園だけあった。城とも見まごうばかりの大きな建物が中心に有り、そこには世界でも最高頭脳で有る教授陣が日夜研究をしている場所でも有る。その城みたいな優雅で巨大だが華美では無い建物を囲むように大小様々な建物が見え隠れしている。そのうちの一つに私は今日から通う事に為る。
まずは寮の方に入り寮長へ挨拶を済ませて、自分に与えられた部屋へと案内された。私は自国から身の回りの世話を任せる侍従を一名と護衛として騎士を一名連れて来て居たので、王族や高位貴族が使用する部屋を与えられた様だ。まあ俺自身が公爵子息なので当たり前と言えばその通りなのだろうが。大きな応接間と侍従と騎士様の部屋、そして私の部屋ときちんと三部屋が用意されていたのは流石だと思った。それぞれの部屋も流石に学生の身で有る為か華美では無いが年代を感じさせてとても使い心地が良さそうな家具で揃えれており私的には満足だった。
翌日から早速新学期が始まり、私は教師に案内されながら新しい生活に少し興奮している自分を冷静に見つめていた。
「アレク君、ここが君が今後三年間を一緒に過ごして良くクラスメート達がいる。君に取って素晴らしい学園生活が出来る事を祈っているよ。」
そうこの教室の担当で有る先生が私に向かって微笑みながら、その教室のドアを開けて教室の中へと入って行った。私はその先生の後ろをついて行きながら教室の中を観察していた。この学園では留学して来る者が多いせいで物珍しそうな眼を向けられていなかったがやはり新しいクラスメートへの興味が感じられる視線を感じていた。だが、私の興味は昨日の説明で受けたこのクラスにはこの国の王女殿下がいらっしゃるという言葉だった。注意事項として、必ず他のクラスメイトと同じように接するようにとの言葉で興味を持っていたからだけど。
私は教師の横に並び皆に紹介されるままに挨拶をして、もう一度王女殿下を見つめていた。お姿は我が国にも似顔絵が出回っており、うちの王子殿下の妃候補にも名前が挙がっているが、ことごとく申し込みを断られているのは知っていた。それにとても興味を持っていたので、王女殿下の似顔絵をとても良く覚えていた。だが、私の目はその王女殿下と楽し気にこそこそと話している隣にいる女の子に目を奪われた。とても普通の女の子にしか見えない。おさげに眼鏡をかけた地味な女の子なのに、その楽し気に笑って話している様子がとても知的な感じを憶えて何故か惹きつけられていた。
その後私の自己紹介も過ぎ私の席がその印象的な地味な女の子の後ろの席だと言われた時には妙な高揚感が私を包んでいるのを不思議な感覚としてしか自覚していなかった。
私はその自分の興味を満足させるために勉強だけでは無くノエルに近づいて行って、その興味を満足させて行くのだが、ノエルの友人で有るフィーデラ様とも自然と仲良く為り、その人柄に感心していた。そして、二人と仲良く勉学に励んでいると、フィーデラ様の兄上で有られるダグラス王子とも自然と話すように為り、又ダグラス様の持っている気さくなさや私と同じ様にノエルに魅かれて入るダグラス様にライバル心と共に友人としての親しい思いを持っていった。
ダグラス様も私と同じ様に感じたようで、ある日堂々と私に向かってライバルだな、と笑って握手をしたのはとてもすがすがしい日だった。
その日以降私はダグラスと呼び捨てにして、初めての親友と呼べる友が出来た事を誇らしく思っていたが、その反面ライバルでもあるダグラスが羨ましくも有った。
彼はその持って生まれた気さくな性格と積極的に物事を進める行動力でドンドンとノエルを魅了しているのを感じていた。
どうやら私はダグラスと比べると奥手なようだと溜息を尽きながらこれも又楽し、と割り切っている冷めた自分を見つめていた。
そうして穏やかな時間と時々起こるダグラスとのちょっとした刺激的なやりあいの中で学園生活の時間は過ぎて行き私の中に生まれた初恋と呼べるものも余り育つことも無く穏やかに時間が流れていった。
これにて2話の補完的な男子二人からの視点でのお話は終わりです。
多分、今間違いだらけの名前の修正とか終わったら、又補完的なお話を追加してから本編に戻りたいと思っています。