好きな様に生きたいけどそうも言ってられないようです
塚本綾香さんの転生恋愛物語です。かわいい恋の物語りになれば良いなぁと思っています。
お付き合いくださいませ。
2018年8月13日に少し訂正と言葉の端々の書き加え等をしています。
お陰で5000字程増えて、ますます説明文が長くなっております。
申し訳ございませんが気長に読んで下さいませ (o*。_。)o
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左足と左腕が異常に痛くて目が覚めた。そこは高い天井で見慣れた部屋だったのだが、私は寝ている間に前世の事を思い出していた。
塚本綾香、それが私の前世での名前で日本では某一流商社の総務で働くお局様一歩手前のアラサーだった。休暇でアメリカの友人に再会する為に訪ねていた旅行中に狙撃事件に巻き込まれて撃たれたのを憶えている。どうやら、私はその事件で死亡してこの世界に転生したらしい。
別に神様に会ってここに転生してきた訳では無いようで、自然な転生?そんなものが有るのかも分からないが私はこの別の世界に生まれ変わったようだ。それも前世(地球)の記憶を持ったままに。
酷い頭痛と左足と左腕の痛みに耐えながら、今の状況をもう一度思い出してみた。私は現在7歳で乗馬の訓練中に魔物の襲撃により馬が暴走して馬から転落したのを思い出した。
そう、私はフィッツジェラルド侯爵家の長女として転生していた。私は大好きな兄と二つ年下のかわいい弟の三人兄弟の真ん中でたった一人の女の子として家族中からかわいがられている。そして今日は侯爵家の令嬢として乗馬の訓練を受けていた訳だが、その訓練中に不幸にも魔物の襲撃を受け馬が恐慌を来たして暴走し、私は馬から転落して今回の負傷になった訳だったのをすっかり思い出した。この世界は地球じゃ無い世界なんだというのを実感しながら目を覚まして周りを見渡せば、心配性の父母と兄弟が私を覗き込んで入たのが目に入る。
「ノエル、大丈夫?痛みがひどくは無い?」
母の柔らかい優しい声が聞こえる。
「ノエル、大丈夫かい?」
心配そうな暖かい父の声も。
私の様子を見ながら母が心配そうに私の頭を撫でて抱き起してくれた。私は痛みの酷い左足と左腕を見てどうやら骨折したな、と添え木をされて入る状態を見て理解した。これは、当分動けそうもないし骨折の為に発熱をしている自覚も有る。体中至る所が痛いのは落馬中に体を打ったせいだろう。どうやら当分の間はベットから抜け出せそうにもないなぁ、と思いながら。
「足と腕が痛いし、なんか体中が痛いですが大丈夫です。」
両親と兄弟を安心させる為にも笑って痛いけど大丈夫って言っておいた。心配そうな、そしてすまなそうな表情を浮かべているウエイン兄様と半分泣きそうな顔をしている弟の顔が目に入った。私付のメイドのヒラリーがゆっくりと水飲みを母に渡し、私が少し水を飲んだのを確認して、母は安心した様だった。
私は少し不安に為って泣きそうな声で。
「ちゃんと治るよね。大丈夫だよね?」
それを聞いた家族は代わる代わる優しく私の頭や頬を撫でながら。
「君を守り切れなくてごめんね、ノエル。だけど大丈夫しばらくしたら直るとお医者様が言っているからね。当分はベットで大人しくしていようね。」
そうウエイン兄様は優しく私に微笑みながら言ってくれた。
こうして、五日程発熱と痛みに悶えながらも順調に熱も下がり、痛み止めで痛みを抑えてもらっているおかげで、六日目に私はやっとベットから解放された。熱が下がった途端にベットから抜け出せない状態なのでベットの中で思い出していた自分の前世の事を整理する事から始める事にした。
私は現在7歳である、この国はこの世界では二番目に大きな大国でその侯爵とも為ると結構なお金持ちで有るのだが、父は堅実な領地経営と代々引き継がれている商売を保っているだけで王宮での執務も普通に堅実にこなして入る様で、特に商売を拡大してもっと裕福に為ろうとかの欲とか意義も持って無さそうなおっとりとした人で家庭第一の優しい父親だった。母も同じ様に優しいけれど子供達の教育や行儀作法に厳しく、身分に付属する責任を身を持って私達に教えてくれる。それ以外は極々普通の貴族のお嬢様って感じの優しい母だった。
だけど、どういう訳か私の大好きな兄は至って優秀だった。三つ年上のウエイン兄様は5歳から始まるごく普通の貴族の勉強に稀に見る優秀さを示しているようで、私も5歳に為ってから兄と一緒に勉強していたので、その優秀さを目の辺りにしていた。
この国は7歳に為ると学校に行き、成人する18歳まで学校教育を受けた後、それぞれの家庭の仕事や王宮への登城や騎士団への加入など、それぞれの道を歩むのがこの国の一般的な貴族の人生だった。そういう環境の中で兄はその優秀さを遺憾なく学業の中で発揮していた。その上剣や体術、果ては馬術に至るまで優秀だったらしい。という話を夕食の時に父が母に話しているのを聞いた事が有った。おかげで、私は優しいお兄さん大好きっ子になった訳だが、それはかわいい弟も一緒で大のお兄さんっ子で有る。二人して優しいウエイン兄様の取り合いで喧嘩をしていたりして、本当に仲の良い家族だった。
そんな中、起こった今回の事故で私は前世を思い出した訳だが、私の前世は結構日本人の女としては優秀な方だった。ごく普通のちょっとだけ裕福な感じの家庭だったが、理解ある両親のおかげで、アメリカの大学に行きたいという私の希望を受け入れてくれてアメリカで楽しい大学生活を送った。
大学で沢山気の置けない友人も出来たし、何より学びたかった経済学に入れ込む事が出来た。本当はMBAをアメリカで取りたかったが、流石にそこまでは親に頼れないと日本に帰国した後、働きながら通信教育でMBAを取った。英語が堪能で有るおかげで希望で有った一流の商社にも就職できたし、私は小さい頃から夢で有った経済を動かす職業を実体験出来て充実した毎日だった。
商社はイギリス系の日本支社のおかげで、男女の差別が日本の会社よりはましで有ったようで、高校時代の友人達と話している限り、私は恵まれていたのを憶えている。忙しい仕事で残業も多かったが好きな仕事が出来て満足していた。特定の恋人こそ忙しくて作る暇もなかったけど、会社の同期や先輩たちと飲みに行ったり、高校時代の友人達と買い物を楽しんだりしていたので、恋人が欲しいと切実に思うことが少なかった。私の周りで結婚する友人が少なかったせいも有るのだろうが。流石に親は少し心配をしていたようだけど、世の中には沢山独身女性が居るのを知っていた様だし、まあそのうちにと気長に待って入るようだったのをありがたく感じで入たのを憶えている。だけど流石に29歳にもなれば会社の中では結婚退職や出産退職する女の子が多く、私はお局様一歩手前であって、実は少々引け目を感じていたのも確かで有る。
そんな中、久しぶりに仕事がちょうどよく切りが付きまとまった休暇が取れたので、大学時代の友人を訪ねにニューヨークに行った時に狙撃事件に巻き込まれてしまった。結婚もせずに、孫を見せる事も無く親よりも早く亡くなった親不孝の娘だと思い出し本当に申し訳ない気持ちで泣いていた晩も有った。そんな風にベッドの中で思い出す内に私はこの転生という幸運を感謝するべき事にした。私はこの新しい恵まれた環境を使ってもう一度私の好きだった事をしよう、この世界の経済を勉強してみよう、そして私の前世で学んだ事が使えるかどうか試してみよう、と決心をしていた。
さいわいにも私は侯爵家の娘として5歳から勉強を始めている、今回の事故の為、学校を休んでいる状態なのでしばらくはこの勉強が止まってしまうが、しばらくすればこの勉強も再開されるだろう。そうして療養を終えた私は再び二つ下の弟と共に家庭教師の下で勉強が再開された。
私の侍女のヒラリーが嘆くほどに私は勉強に飢え、一般的な貴族の女の子が好きそうなドレスや宝石には全く興味を示す事が無く、ひたすらに勉強を頑張っていた。それでも、ヒラリーはくじけることなく私の髪や体のお手入れに余念無く力を入れ、ノエル様はかわいいのですからもう少し自分のお手入れを心掛けて下さいと毎日の様に促され、うんざりしながらも何とか毎日を過ごしていた。
再開された勉強の中で一般教養の中でも数学、経済学、については前世の知識が有る為に余り学ぶことは無いと割り切り、読み書き、地理、歴史、マナー、ダンス、音楽、乗馬などの貴族としての一般的な教養を重視して学校への復帰を心待ちにしていた。が、やはり学校でも思った程興味を引く経済学を学べる事も無かったので、私は娘の甘えたぶりを武器に父親に家庭教師を頼んだ。
「ねぇ、お父様、お願いが有るの。学校がつまらないの、私の学びたい事がちっとも学べ無いし、もっと専門的に勉強したい事が有るの。」
と、思いっきりあざとい必殺甘えた声と少し涙目でおねだりをした結果。
「君が経済を学ぶなんて早すぎると思うのだがね。。。まあ、試しにって感じでだね。」
父親はしぶしぶと、と言うより嫌々ながらに承知して兄を含めた経済学の家庭教師をつけてくれた。弟は私のおねだりに便乗して剣の方に興味が有ったのでそちらの家庭教師が付いた。但し優秀な兄は両方の家庭教師に付いて益々その実力を発揮し、もっぱら私や弟のサポートに入ったのだが。。。。。
そうして、私は普通の学業と共に自分の好きな経済学を兄と共に学び結構充実した毎日を送っている。そうこうしている内にこの国でも前世の知識が役に立ちそうだなぁと自信を付け始めたので、まず私は父親に領地の水車を使った治水や領地内の主要な街道の整備を8歳の時に提案し、具体的な政策のヒントを渡した。それを兄が青写真にして父は兄と共に治水と街道の整備を実行していった。
私は10歳に為ると、この世界の経済を少し習ったお陰で自分の力を試したくなり、またまた父親に必殺おねだりを発動して資金を提供してもらい、領地の特産物の一部を加工してルートに乗せる事業を開始した。まあそれこそ内政チートだよなぁ。と前世で流行りだった転生物の物語りだよな。なんて思いながらだったが。
その時は流石に私の名前をそのまま使うのはまずいと父や兄と相談し、前世での名前で有る綾香を使いノエル・アヤカと偽名を作り、その小さな商売を少しずつ軌道に載せていった。
私の持って入た前世での購買、流通機構の知識、加工のプロセスや品質管理、利益の追従、人事の知識などが役に起ち、私の経営する商売は地元の特産物を利用した加工品の流通を促進した為繁盛の兆しを見せ始めていた。そんな時、私はこの国で学ぶ事の限界を感じ始めていた。
私の住んで居るタナイス国はこの世界では二番目に大きな国で有るが、軍事大国で有った。それは魔物が沢山現れる為に仕方の無い事で有ったのだが、軍事大国で有るが為に教育は騎士教育などがどうしても中心で、経済活動は重視されていなかった。魔物の森が北側に有る為に、防衛拠点で有る北方の領地は軍事基地として莫大な国庫の資金が投入されていた為にこの国の経済の発展が遅れ気味なのは最近の学習で解っていた。
さいわいな事にこの世界の男尊女卑は無いに等しい為、私はふと、この世界で一番の大国で有りこの世界の学問の中心地でも有る隣国のエダール公国に経済の勉強の為に留学したく為った。色々と他国の情報を集めた結果、私は12歳に為った時には他国への留学のおねだりを父親に始めたのである。
「ねぇ、お父様。私は自分のしている商売をもっと確かなものにしたいの。だからもっと経済についてのお勉強がしたい。だから、エダール公国の学園に留学させて欲しいなぁ。」
父親は私のおねだりの声を嫌そうに聞き流していた。
タナイス国は軍事大国で有るが為に勉学の為のそうした留学自体が非常に稀で、ましてや女性と為ると前例が無かった為、父親の説得にやたらと時間が掛かったのだが、私は毎日の様に泣き言や泣き落としを父親に掛けてやっと13歳になって留学の許可を父親からもぎ取った。
実は必死こいて留学をもぎ取ったのにはもう一つ切実な理由が有った為で有る、12歳の誕生日にこの国の二人の王子達の妃候補として私の名前がリストに上がっているとの父親からの話が有ったせいで有る。 まだ、正式な婚約者候補の擁立では無いが、最終的な候補としての10人に名前が残る確率は高いだろう。と父親には言われて入た事が是非とも留学したい最大の理由である。王家に嫁ぐなどそんな堅苦しく自由のつかない立場に立つなど元日本人で自由気ままに大学生活や社会人生活を謳歌した私にはごめんこうむるので、逃げ出さないとやばいと大変焦ってもいたのである。
大体侯爵家と言ってもフィッツジェラルド侯爵家は余りにも目立たない侯爵家で有る。財産が多いとか宮廷内の地位が高いとか全くなく、普通に上級な貴族なだけで。さすがに私が8歳の時から始めた農地の改革や街道の整備が功を上げ始め最近の領地の収益や利益率が上がって来たおかげで、最近はその改革案が国や他の貴族から注目を浴びては入るが、その資金を次の流通整備などに現在投資中で、領地の安全性を高めるために始めた村々の柵や塀の強化なども同時に進め、冒険者がこの領地に気安く寄れるような環境の整備も少しずつ行い、安全で暮らしやすい領地を目指して兄と父と一緒に少しずつ整備をして来た。それらの次期投資を繰り返し行っている為に実質な純利益の上昇は0で有る。それらの投資もここ5年の間に回収の目途が立った訳だが。
そんな中での王子妃候補だからたまったものでは無い。せっかくこちらの世界の経済の様子がつかめて来、これから本格的に学んで私の知っている経済学を元に色々と実践して行こうと思って要るのに王子妃候補なんかに為ったおかげで、18歳からの社交界デビューに向けての宮中の作法や厳格な行儀の授業などの余計な勉強をしなくてはならなくなって他の勉強の時間が少なく為った。とにかく父には王子妃候補の辞退をするように頼みこんでいたが、どうやら一度名前が上がると中々に辞退とは行かないようようだった。だったら逃げてやる~、って事で自分の知識欲を満足させる一石二鳥を狙っての他国への留学と言うアイデアだった。
王子妃候補に為れば、って言うか実際に王子妃候補に名前が挙がってしまっている為に18歳のデビューを待たずに王宮へのお茶会などの私的な招待には応じなくては為らなくなる為、絶対に王家に嫁ぎたくないし早く結婚などしたく無い私はそれを避ける為にも国外に逃げるのは最上の策だと思った。実際に既に何回かは王妃主催のお茶会に呼ばれて行って見たが、とにかく私には無理!と思っただけだった。
そんな見え見えの私の思惑もウエイン兄様にはバレバレで有ったが、ウエイン兄様もそんな私を哀れに思ったのか、私の経済に関する不思議な程に的確な企画が気に行って入るのか良くは解らないけど、両親の説得に一役買ってくれた。結局は候補の辞退が出来ない為、宮廷作法と宮廷教育を続ける事を条件にやっと両親から留学を許してもらえたのだった。
そして、晴れて両親と兄弟たちに見送られて、侍女で有るヒラリーと宮廷作法や王子妃教育を行うデルタンテ教授が私のお付として、隣国エダール公国の首都に有る最高学府で有るエダール王立学園へと留学した。ウエイン兄様も私と一緒に留学をしたかったようだが、流石に二人も国外に出すのは両親も躊躇われた様で、結局ウエイン兄様が私に譲ってくれた形での留学だった。
「ウエイン兄様、私の留学を譲ってくれてありがとう。私、頑張って勉強してくるね。」
「う~ん。まあ、あんまり頑張り過ぎないように。ノエルは頑張りすぎるきらいが有るしねぇ。それに、男には気を付けるんだよ。君はまだ王子達の妃候補で有るのだからね。忘れたらダメだよ。」
結局この言葉が私の将来を暗示していたなんて思いも寄らなかったが。
なるべく週一で更新致します。(私の病状次第ですが。。。。。。。)
詳しい私の状況は活動報告にも載せていきますので、出来ればそちらの確認もよろしくお願い致します。(o*。_。)o