異世界ハーレムは憧れでした。
俺は今、奴隷商館に来ている。
金はある。
こちらに来て5年、日本での知識を武器にそれを活用してかなりの額を貯めた。
それこそ、日本の金額に換算すると5億円ほど。
で、こちらの奴隷商館では若く美人な奴隷が売られていると評判で、尚且つ購入者にあった奴隷を紹介をしてくれると評判の老舗中の老舗である。
まあその分、値段も高いのだが。
で案内され、その商館の主に自分の好みを言った。
「すまないが、美人なエルフの奴隷などおらぬか?」
「はい。勿論いらっしゃいますが、失礼ですがお客様は人族でしょうか?」
「そうだが、人族だと何か問題でもあるのか?」
「ええ……」
と、話を聞いてみると、エルフの奴隷は止めた方がいいと思った。
若いうちはいいが、年齢を重ねるとそういった行為が原因で何人もの主人が腹上死をしているとの事。
ふむ。確かにその危険はあるな。
「では、獣人の奴隷を見せて貰えないか?」
「はい、当商館には獣人奴隷はいますが。で、失礼ですが、お客様は夜の方は大体どのくらいされてますか?」
とりあえず、若い頃と最近の話を聞いたら止められた。
ふう。危なかった……、知らずに購入をしたら腎虚になっていたかもしれない。
何といっても発情期は、それは大変との事を聞いた。
若い頃でも危なかったが、今だと完全にアウトだ。
で、他にもドワーフの奴隷とかも聞いたが、これも無理そうだった。
酒をしこたま飲むと、それはキツイからな。
特に自分は眠くなるから無理だ。
で、こういったのを無理に合わせようとすると後々、不幸になるからそういったのは娼館で済ませた方がいいとの助言を貰った。
一時の快楽だったら、そちらの方が全然安上がりとの事だ。
で結局、勧められたのは同じ人族だった。
無論、購入の意思を示した。
「こちらでは如何でしょうか?」
「ふむ……」
見ると、何というか自分と同じ日本人の作りをした女性だった。
美人というか、可愛いくて気立ての良さそうな感じの子だった。
すると、主はこう言った。
お客様は失礼ながら、奴隷を物と見ずに人として見るタイプの人です、と。
それは普通だろ? と思ったが、一般的に富の象徴か道具にしか見ないタイプの方が残念ながら多いとのことだった。
とはいえ、せっかくこちらの世界に来たのだから、こちら側(外人)がいいと希望を伝えると、また助言が。
ずっと暮らすのでしたら、故郷に居たような人の方が心落ち着きますよ、とそう言われた。
ふむ。
確かに、そうかもしれんな。
他の人はわからないが、自分はつい故郷に似た物を見てしまう。
「そうだな。ここは主人の勧めにするか」
「ありがとうございます。では、こちらが代金です」
と、言い渡されたのは思ったより少なめ、とはいえ5千万ほどの金額だった。
とはいえ、一般の奴隷は大体2百万円と、それに比べたら全然高いが、教養と教育がなされていると考えれば安いのだ。
ちなみに今回の奴隷は、10歳の時にこの商館に来て17歳までそういったのを教えられてきたそうだ。
で、外に出ても恥ずかしくないというか、どこへ出しても遜色のない教育が終えて今回、売られるようになったのだとか。
見た目も良いし、嫁にするのも悪くないだろう。
そう考えると、失敗しない嫁を5千万円で買えたというのは安い買い物だろう。
もうそう考えると、異世界でハーレムを作ることなど興味がなくなった。
半分、悟ったともいう。
こうして俺は、異世界ハーレムの夢をポイっと捨てて、身の丈にあった結婚生活に目を向けた。
◆◇◆◇◆◇
で、5年後。
あれから1男1女を嫁との間に儲けて、幸せな生活をしている。
あのあと直ぐに嫁を奴隷から解放して、愛を育んだ。
嫁からあの奴隷商館のことを聞いたのだが、あの商館は高名な占い師を雇っており、相性の合う奴隷を紹介していたのだとか。
だから嫁が俺に出会ったときも安心して付いていくことが出来たとのことだし、裏切るとかそういう考えもなかったとのことだ。それどころか相性がいいのだから、自分をさらけ出して早く仲良くなりたいと思っていたのだとか。
と、嫁がそんな感じだったから、急速に関係も近づいた。
そもそも自分的には、嫁のことが可愛いと思っていたのだから、グイグイくる嫁に簡単に懐柔された訳である。
で、そんな俺ら夫婦だが、また奴隷商館に来ている。
これで確か5度目か。
来た理由は、店の従業員の嫁を買う為だ。
前回の時は、まだ教育が済んでいなくて1年ほど待ったが、良い嫁を買えて良かった。
奥手で30半ばまで女に縁のない真面目で融通の利かない男だったが、嫁を貰ってからは真面目だが人の機微を読める男になって、交渉などの重要な仕事を任せられる男になった。
無論、金はかかったが、当初5億円を遣ったと思えばいいわけだ。
で、今回も良い嫁を買う為にここに来た。
まさかハーレムを作るのではなく、従業員の嫁を買いにちょくちょく女性を買いに来るとは当初の目的とは違ってしまったが、仕方あるまい。
だが、何というかなぁ……買った奴隷女性のその後の笑顔と従業員を見るとついつい来てしまうんだ。
まあ忠誠MAXで働いてくれると思えばいいか。