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汚い願いと綺麗な願い  作者: Cut-G/
1/3

プロローグ 「コートの下の正体」-1  Prologue "The unrevealed stuff under the coat"- Part I

次回更新は3/24を予定しています。

プロローグは2編構成です。



エピローグ コートの下の正体-1



 俺は強い願いを持ったことがない。最新のゲームも欲しいし、長生きもしたいし、お金も欲しい。ただ、犯罪を犯したり何かを犠牲にしてまでそれを叶えようとは思わない。別に強い願いがなくても人生は楽しいと思う。ただ強い願いを持った人を見るたびに羨ましがる俺がいるのも確かだ。俺の人生に欠けているものがあるとしたらそれは願いだと思う。


 俺は水木水みずき すい、一生金曜日が来ない欠陥カレンダーみたいな名前をした中学3年生だ。親は「水」のように柔軟な発想を持った子に育つようにと付けたらしいが、俺が生まれてすぐ離婚した。そして、お袋はすぐに再婚相手を見つけ、息子の名前をキテレツにするのと引き換えにスピード再婚した。別にそれに対して不満はないが、他人の視線をヒシヒシと感じる。俺自身これと言った特技はないが、勉強もそこそこ、運動もそこそこできるつもりだ。春から行く高校も推薦で受かり、マラソン大会でも常に30位以内のできる奴だと思う。でも、勉強もスポーツも真面目にやっている奴には到底敵わない。先生からは常に高い目標を持つ様にと言われるが、目標なんて雑草のように生えてこない。自由時間を削ってまで勉強をする意味を見いだせない。ちなみに、好きな女の子のタイプはおしとやかで清楚な処女だ。



 どうやら今日転校生が来るらしいので、俺を含め男子生徒全員がそわそわしている。まだ女の子と決まったわけではないが、50%の確率に備えて皆そわそわしている。男子というのは単純な生き物と思われがちだが、実際は物凄く頭を働かせている。

 今空いている席は俺の右隣だけだ。つまり転校生は俺の右に座る可能性が高い。もし隣に座るのならば女子である可能性が高い。女子であればこれからある文化祭や体育祭、修学旅行などのイベントで好感度を上げることができ、付き合うことも夢ではない。しかし好感度を上げるには初対面の印象がかなり左右する。もし根暗オタクだと思われたら一巻の終りなので、ならべく爽やかなイケメンが言いそうなフレーズを数個用意しておく。後は、その女子が可愛い清楚な処女であることを祈るしかない。


 先生が一人で教室に入る

「えー、転校生を紹介します。 おーい、中に入っていいぞ。」


「あ、はい。」

 物凄く可愛い声だった。まるでゴリ押しされるような女性声優の声をしていた。可愛い女の子である確率が格段に上昇した。


「はじめまして、手越めん太です。」


 え、男?


 声に出そうなのを堪え俺は必死に状況を理解しようとした。天使の様な可愛い声の持ち主はめん太というらしい。めん太というからには男なのだろう、そして俺の用意した口説き文句が全て無駄になったということだけは分かった。


「手越君はアメリカにあるロッテンアーム中学から来た帰国子女だ。中学生活も残り少ないが仲良くしてやってくれ。」


「うっそー。男の子なの?てっかり女の子だと思ったわ。」


 クラスのドン中西エリカは可愛い声をした転校生が自分より可愛い『女の子』でない事に一安心したようだ。ただ転校生の方が10倍可愛いと思ったのは俺だけではないはずだ。それに「てっかり」って何だ。「てっかり」か「うっかり」のどっちかにしろ。


 一方の俺はというと意気消沈だ。可愛い女の子は好きだが、男の娘は生理的に受けつけない。根本的に男であるから将来ワキ毛もスネ毛も生えるし、おっぱいも無いので論外だ。生憎おれは男の竿を愛でる趣味をもっていない。


「席はあそこにいるもっさりヘアの水木君の隣だ。」


 この先生は人が今一番言ってほしくないこと言ってくる。先週隣のクラスの可愛い女の子に告白した時「失せろこのブロッコリー。」と言われた傷はまだ癒えていないので、精神的にダメージを受けた。


 転校生は俺の隣の席に向かって歩いて席に着いた。


「よろしく、水木君。」


 少しクシャクシャの制服を着ながらも、そのシワをも浄化するような天使級の笑顔で転校生は微笑んで挨拶をしてきた。

「こ、こちりゃこそ、よろしく。。」

 突然の笑顔に動揺して舌が回らない。落ち着け、相手は男だ。落ち着け、落ち着け。

「水木は先週好きな女の子にふられてケダモノみたいな性欲してるから気を付けろよ。」

 前の席から横槍が入る


「い、いくら俺でも男子に欲情はしねぇよ。」


「男だからって甘く見るんじゃねぇぞ水木。若い男の方が『あっち』の道に目覚めやすいらしいからな。」


「怖い冗談はやめろよ。」


「ちなみに。男同士の方が女とやるより気持ちいらしいぞ。」


「ヴぉえ。お前やったことあるのかよ。」


「どうでしょーねぇ、もっさり君。」

 

 さっきから俺をおちょくるエロ知識モンスターことサッカー部のエースが武藤早人むとうはやとだ。スポーツが出来て勉強が出来ない典型的なスポーツ馬鹿だ。本人は足が「早い」から早人だと思っているが、俺かしてみればやたら早熟した早漏野郎にしか見えない。(そもそも、「足がはやい」の「はやい」は「速い」だ。)そんな馬鹿も中学1年生からの付き合いなので、来年別々の高校に行き会えなくなると思うと悲しい。


「にしてもよぉ。中3の2学期に転校だなんて随分変わってんな。」

 

 俺よりも先に武藤は転校生に話しかけた。


「向こうだともう中学を卒業したからね。どうしても日本の高校に行きたいんだ。」


「ま、日本の食いもんは美味いからな。日本に来たいって気持ちも理解できるぜ。」


「アメリカの高校は私立だと家が建つ位のお金が必要だから行けないんだ。公立だと質は落ちるし。」


「なぁ今度焼肉の食べ放題行かねぇか?アメリカの食事って紅茶とクッキーばっかで大変だっただろ。」


 こいつのアメリカにはどうやらビッグベンが建っていたり、女王がいたりするらしい。それにしても、ここまで会話が噛み合ってないないのは奇跡に近い。食べ物以外の話に持っていこうとした矢先、武藤が思い出したようにいきなり話題を変えた。


「そういえばさ、最近こここら辺で出るらしいぜ、化け物が!」


「何それ!僕も興味ある!もっと話して!話して!」

 

 転校生が思ったより食いついたことに若干の悔しさを覚えた。


「おうよ。まずそいつはな、右腕が仮●ライダ―アマン●みたいでスゲーごついらしい。鱗に覆われたその右腕で夜な夜な人の首を掻っ切るらしいぜ。しかもそいつ、この中学の制服着ているらしいって話だからな。」


「その怪物はどういった人を襲うの?」


「何かカップルを執拗に狙うらしいぞ。」


「そんな眉唾もんの話信じない方がいいけどな、めん太君。」


 転校生を下の名前で呼ぶことに成功した。これで俺の方が武藤よりもリードしている。[*注:何を?]


「黙れよ水木、この転校生も興味持ってただろ今。それに、最近気色悪い事件ばっか起きてるじゃねーか。」


 そう言われたら言い返せない。最近この町には異常な事が起きすぎている。首、手首、足首、乳首、あらゆる「首」を盗まれた銅像、公園に突如として現れた牛乳の紙パックの山、コンクリートの道路に100mに渡って埋められたゴキブリの死体の数々、神様がただの人間観察に飽きて気まぐれに悪戯をしているとしか思えない。町の住人は不気味だと思いながらも実害がないと知っているのでケロンとしている。

 

 そんな事を考える俺を無視して二人は会話を進めていた。


「そういえば、さっきからそこでずっと本を読んでる暗い感じの男の子は誰?」


「そいつは鋭島だ。そういえばあいつとは話したことないな。お前は話したことあるか、水木?」


「俺は一回だけある。すごい変わってる感じだったけどな。何かいきなり『悲劇は好きか?』って聞いてきたかと思ったら、またいきなり本を読みだした。」


 鋭島覚(えいじまさとる。クラスに友達と呼べる人がいないいわゆる「ぼっち」という形容詞がつく人間だ。昼休憩は周囲に近寄り難いオーラを放ちながら一人で本を読んでいる。


「その鋭島覚君が化け物だよきっと。」


「そりゃ冗談だろ、転校生。」


「さっき化け物はカップルを襲うって言ってたでしょ。きっと冴えない覚君は女子に振られた腹いせにカップルを殺したんだよ。」


「いくら何でもそれは馬鹿げているよ。その理屈なら先週振られた俺にだって人を襲う動機があるはずだ。」


「水木くんは違うよ。だって化け物はとてつもなく大きい腕を持っているんでしょ、今水木君は袖のない服を着ているから、もし怪物だったら一目でわかるよ。」


 めん太は少し笑ったような顔で推理を続けた。少しドヤ顔の入り混じった表情もすごく可愛い。駄目だ、めん太は男だって100回自分に言い聞かせても切り替えができない。


「だけど覚君はとてもごわごわしたコートを着ているし、手袋もしているよね。つまり、誰も鋭島君の腕がどんな腕なのか分からないんだよ。きっとそれが『化け物の腕』でも不思議じゃないよね。」


 物凄く馬鹿げた推理だと思ったが筋は通っている。この9月の残暑の中ゴツゴツの長いコートを着て手袋をする馬鹿はいない。いたとしたらよほどの理由がある奴だけだ。ただ、俺は本当にこの学校の生徒が自分の制服を着て殺人を行ったとは思えない。そもそもこの話はただの都市伝説だ。


「ま、探偵ごっこはここで終わりっしょ。早くしねーと次の理科遅れちまうぞ。ただでさえ俺の理科の成績はやべーんだよ。このままだとスポーツ推薦も落ちそうだわ。」

 

 張りつめていた集中力という名の糸を武藤はいとも簡単に切った。


「お前ならやりかねないから怖い。」


 さっきの仕返しとは言わないが、こいつにはおちょくられすぎていると思うから痛いところを突いた。


「お前言ったな。後でストIVでぼっこぼこにするからな。」


「そんなんだから成績やべーんだろ、馬鹿ムドー。」


「それとこれとは関係無いだろ!」


 めん太と俺達は笑いながら理科準備室へ向かった。今まさに『悲劇』が起ころうとしているとは知らずに。


To be continued to Epilogue - "The unrevealed stuff under the coat"-Part Ⅱ



 どうもCut-Gです。この度は私の作品を読んでいただき誠にありがとうございます。皆さんの応援が自分の励みになります。

 初投稿なので不自然な個所があるかもしれません。見つけ次第送っていただけると今後の作品の質が向上します。あな●の声がこの作品を変えます。

 学園のバトル物を書きました。残念ながら1話に戦闘シーンを書くことができませんでした。「シ*ーン-Kみたいな名前しやがってこの詐欺師が。」と思った方もいるかと思いますが、次回になったらちゃんとバトルが始まるので引き続き読んで頂けると嬉しい限りです。

 本作品のテーマはタイトルからも分かる通り「願い」です。各キャラクターの願いに注目していただけるとより一層楽しめるかと思います。

 最後にフォロワー0人(笑)のtwitterアカウントを晒しておきますw:

@preachingtomato

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