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七辻名無の平凡な日常  作者:
第1章
8/30

からくさ町 裏目荘

「誰か嘘だと言ってくれ……」


「嘘ダヨ」


「アンタじゃねぇよ!」


待ち合わせ場所で大声を上げた挙句、例の大家・七辻名無を先頭に裏目荘に向かうなんて、数分前の俺だったら全く予想しなかっただろう。


「すまない、凛太郎君。先に言おうが後に言おうが、この人は予想外過ぎて……」


「……大丈夫っす」



大家の予想外は通常らしい、四ツ谷さんは溜め息を吐く。

そんなこんなで駅から、裏目荘に向かう途中。

駅から少し離れ、住宅街に向かう。どうやら住宅街の近くらしい。



「後どのくらいっすか?」


「もうすぐ着くヨ。……ああ、ここ、ここ。」



そう言って立ち止まったのは、小さなお稲荷さん。

よく目を逸らすと、お稲荷さんの右横に細い道が続いている。

その道を慣れているように、七辻は進む。

凛太郎は境内から自由に伸びている枝をガサガサと掻き分けて進む。


「どの稲荷の横道からでも、ウチにたどり着けるヨ」


「え?すいません、葉っぱの音で聞こえませんでしたけど……」


「何でもないヨ。また後で」



その言葉と同時に、何かが聞こえた。




“オカエリ”

“オカエリナサイ”

“オカエリナサイ、■■■ ノ ■”



「え?」


鈴みたいな声に振り向く。だが、後ろにいるのは四ツ谷さんだけだ。



「どうかしたかい?」


「いえ……何でもないっす」


「こっちダヨ」


葉の隙間から道が見える。

横道を抜けると、そこには住宅街が広がっているはず……そう思っていた。


「何処っすか……ここ?」


木製の塀、手入れが行き届いた垣根。

それはまるで、一昔前のレトロな住宅街のようで。

[現代社会とは一線を引いている場所]

それが第一印象だ。


「ここは“からくさ町”。ついて来ナヨ。アパートはすぐそこだから」


そう言うと、七辻はスタスタと右折側をまっすぐ進んでいく。

凛太郎はその後ろを慌てて付いて行く。


「ん……?」


その途中、妙な名前の公園を通り過ぎる。


[蛇目公園]


(へびめ……いや、じゃのめか?まあいいか)


ぼんやり、そんなことを考えながら歩いていると、七辻が立ち止まる。


「着いたヨ」


公園から、民家を5~6軒ほど過ぎた場所にそのアパートはあった。


門の左側には、達筆な字で“裏目荘”と書いてある。

外面はコンクリートの二階建てに見えるが、四ツ谷さん曰く中は日本家屋らしい。

幅的には平屋が二つくっ付いたくらいの広さで、そこそこ広めだと四ツ谷さんが補足してくれた。



「ようこそ、裏目荘へ」


門前に立っていた七辻が振り向き、アパートを背景にし、凛太郎に告げる。


「当たり前だけど、君以外にも住人がいるから、彼らとも仲良くネ」


七辻の狐面が笑ったような気がした。

“引っかかったな、愚か者め”

今にもそんな台詞を言いそうで、少し躊躇する。


これから住む場所

体質を治す一筋の希望


「っ…………よろしくお願いします!」


凛太郎は威勢良く声を出し、礼をした。

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