遺言と教授襲来
「凛太郎君」
振り向くと若手弁護士の四ッ谷さんが立っていた。
四ッ谷 俊介
ばーちゃんの遺産相続について世話になっていた弁護士先生
いかにも知的な印象を与えるシルバーフレームの眼鏡にきっちりと切りそろえられた黒い短髪
俗に言うクール系イケメンだが、ダークスーツのせいか白黒フィルムを通して見ている気分になる。
それを意識しているのか、無意識なのかは分からないがタイピンは鮮やかな赤だ
流石に葬式にタイピンをしてくる程、常識外れな思考はしていない。
真面目なのが取り柄だが、たまに抜けている点が好感できるいい先生だ
「ば…………祖母がお世話になりました。」
「いきなりで悪いんだが…………君が相続する分の遺産について話がしたいんだけど………………場所を変えるかい?」
「いえ………俺の分ならここで構わないっす」
「……分かった」
四ッ谷さんは片手に持っていた封筒の封を解き、書類を取り出す
「まず、相続人は凛太郎君・幸子さん・幸子さんの娘 、美咲ちゃんの3人に割り当てられる。
成人するまでの保証人は幸子さん。
君への遺言は三つ。
一つ、遺産は学費にし、残りは貯金せよ。
二つ、大切な者を大事にせよ。
三つ、在学中は“裏目荘”に住むべし
以上だよ」
聞きなれない名前に己の耳を疑った
「…………“裏目荘”?」
「生前、珠代さんは君の“体質”を酷く心配していてね。
そこで“裏目荘”に一時的に住まわせ、体質の様子を見てから卒業まで“裏目荘”に住むか否を決めてもらうことになったんだ。」
「でも……この体質が治るかなんて……」
無理に決まっている。
始めは病気だと思われ
どんな医者に頼っても治らないから体質として決め込んで、諦めていた。
「治したいと思えば治せるよ。
でも珠代さんの意思だと“裏目荘”に一時的にでもいいから住んでほしいそうだ」
「ばーちゃんが……」
納得するまで意見を曲げないばーちゃんのことだ。
ゴリ押しで四ッ谷さんに頼んだに違いない。
「その……“裏目荘”に近い駅とか、教えてくれませんか?
大学から遠いと通学、難しいんで」
四ッ谷さんが告げた駅名からして大学からそんなに遠くないことが分かる。
「……叔母さんが了承するなら。住んでみます、裏目荘に」
「分かった。凛太郎君が望むなら、数ヶ月だけ住むとかでもいいから。
裏目荘には僕が案内するよ。一応、大家とは知り合いなんだ」
「はい!」
それから引越しに都合のいい日取り等の必要事項を確認する。
まあ、葬式の湿った暗い雰囲気を吹っ飛ばすにはいい転機だと思うことにしよう!!
前向きなのはいいことだ!
「それから…困ったら黎湘に相談するといいよ」
四ッ谷さんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「うっす……」
教授にか…………………………………………………………うん。なるべく厄介事を作らないようにしよう。
頼れる教授には違いないけど、少々性格が個性的と言うか……
キャラが濃いと言うか……
「俊ちゃーん、凛ちゃーん!!何話してんのよー!!」
「っ……!」
「どうもっす…………教授」
「もう、二人して内緒話?はっ倒すわよ」
美容院でオシャレにカットされたであろう、右目だけ隠れた黒い長髪
パッチリとした目、スラッとしたスタイル
若干20代後半にして我が隼成文学大学きっての天才宗教学教授
これだけ特徴を上げればモデル級美人で才もある天才教授だ
しかし
「物騒な所は不良時代から変わってないな、黎湘」
「もう、黎ちゃんって呼んでよー」
本名: 封江黎湘
職業: 教授、住職
性格: 危ないオネエさん
性別: 男
四ッ谷さんの幼馴染み
読者諸君、俺は[美人]とは言った
しかし性別は言ってない!
つまり俺に非はない!
イケオネエが好きです。
なのでオネエは完全趣味です。
インパクトある方にしようとしたら住職さんになってしまいました……
とある漫画で頭髪を剃ってない住職さんが登場していたインパクトが強すぎて長髪になりました。
元ヤンからオネエに目覚めたと言う、とんでもない破戒僧さんです……(汗