壮烈な過去
今日も出しました、「悲劇」の第六部です!
(まだ出る予定なんですが……)新キャラ、またの名を新容疑者追加です!
あ、容疑者はもう増えません。響、悠、大介、凱人の中で考えて下さい。あんま分かるように書いてないんですけどね……。
それでは、是非ご一読下さい。
翌日、いつもアイツと合流する場所に、茜の姿は無かった。今日は休みだろうか?
まぁ、仕方無いか……。同級生が目の前で殺されてたんだからな。
茜がいない為、俺は1人で登校していた。静かでいいな、なんとなく。
空を飛びチュンチュンと鳴いている鳥達を眺めながら、ゆっくりと学校に向かっていた。
* * *
学校に着いてからは、昨日の事件の話で持ちきりだった。廊下にいようが教室にいようが、『山田が…』だの『あのアニオタが…』とかの話があちこちから聞こえてくる。
だが、それは笑い話のネタにしかされていなかった。廊下や教室には、いつも通りの賑やかな雰囲気が漂っている。
殺されたのに、あんまり悲しんでる奴とかいないのか……。可哀想な山田……。
しかし、俺も山田と話をしたことは無いため、正直悲しくはなかった。
ただ、山田が殺された理由は知りたいな…。共通点が見いだせない…。
恐らく山田も、犯人を中学の頃虐めていたメンバーに入っていたのだろう。
山田で終わればいいけど、この連続殺人……。
頭の中では分かっているはずなのに、そういう事を考えてしまう。
──まだ終わらない──
俺はそう、直感していた。
東高は今回の事件で、生徒達が夜に外出することを禁止した。……無駄な事だけどな。
何しろ犯人は、この高校の生徒なんだから──。
次に犯人が狙うのが、この高校の生徒なのかまでは俺にも分からない。だが、ここまで犯人の尻尾を掴んだ以上、この事件を止めてやりたい。
燃える決意は、俺の心を熱くしていた。
その心が、いつか冷たく凍りついてしまうことも知らずに──。
* * *
◦──昼休み・1-B教室
今日の昼食は、俺の教室で食べることになった。
メンバーは俺、大介(今日も彼女の手作り弁当を持って来てやがる…うぜぇ…。)、そして──
「さて、食べようか──」
机3つで真ん中を囲うように座り、俺の左が違うクラスの大介、右に座っているのは同じクラスの『大島 凱人』。俺の友達の1人だ。
凱人は成績学年トップ2で、俺の次に頭が良い。しかし、俺に闘争心を燃やすわけでもなく、逆に俺の頭脳を尊敬して誉めてくれる。
ただ、中学は一緒ではなかった。
金髪で長身、更には超優しい控えめな男子とくれば、女子がそれに寄り付かないわけがない。
そう──凱人も女子にモテるのだ。
学年で一番頭が良い、しかし常に自分の事だけで特にモテてもいない。
そんな俺よりも、学年2位の学力で、とびきり他人に優しいモテるヤツの方が輝くのは当たり前だった。
だが、凱人は俺の頭脳を素直に認めてくれているので、大介程は恨んでいない。
つか、凱人が大介と友達とは意外だな…。
「今起きてる連続殺人、とうとう僕達の学校でも被害者が出たけど……どう思う?」
凱人が話を切り出す。やっぱここでもその話するのか……。
「惨い話だよな…、何人も人を殺して何が満たされるんだろうな。」
「もう7人殺されてるからな…それでもまだ止まらない可能性だってあるが」
いきなりシリアスだ。場の空気が重くなる。飯食ってる最中にする話じゃねーだろ……。
「全員、刃物でメッタ刺しにされているんだろ?」
そうだった……。警察は死因を世間に公表してないんだったな……。しかし……
「いや、山田は違う」
俺は、声に出していた。
「「え?」」
二人は目を見開き、驚きの表情で俺の方を見ていた。
「あ」
あらら、やっちまったー……。
「どういう事だ?」
凱人が訊ねてくる。
仕方無い…答えるしかないだろう…。
仮にこの話を犯人が聞いていたとしたら、この先の話をしようがしまいが俺は殺される。
どうせ殺されるならば、二人の中に犯人はいないと信じて話を聞かせてやろう。
「俺は、あの現場に遭ったんだ」
二人は二度目の驚愕をする。
「響…、それマジかよ……」
大介は少し引いていた。
「で、違うと言うなら一体どんな殺され方だったんだよ?」
凱人は少し興味津々だった。おい優男。
「心臓を一突きだった」
「ほー…」
「ニュースでも報道されてない情報だろう…」
そんな事よりもっと重大な情報を持ってるんだけどな。俺は。
しかし、この話を聞いた犯人が、俺に目を付けるとすればこのぐらいで十分だろう。コイツらは、あの情報を知らない方が良いと思うしな。
──俺の予想は的中していたらしく、その後、俺の事をじっと見つめている黒い影の気配があった。
──しかし、その時の俺はまだ気付いていなかった。
* * *
昼休みが終わり、廊下を歩く俺は携帯を開き、メールの受信ボックスを確認をした。
受信したメールは、0件だった。
俺はため息を吐き、携帯を閉じる。
今日の午前中から、茜にメールを何通か送っているのだ。用件は──
「アイツ、大丈夫かな……」
一応、容体は聞いておきたかった。
放課後は、アイツの家行ってみるか…。
考えをまとめ、教室に入る。
「おお、響! 何してたんだ早く着替えろ!」
入ると、凱人がジャージ姿で待っていた。そして俺にも早く着がえるよう促す。
午後の授業は他クラスとの合同体育だった。俺はあんまり好きではない教科だ。
「ほらー、響君も早く着替えなよー」
まだ着替えてる最中の悠までもそう急かす。
シャツを脱ぎ、上半身裸になった悠の身体は、思ったよりたくましかった。
その整った顔に見合わず、なかなかの鍛え具合だった。凄いな…これ…。
俺はそんな悠の腕を揉んでみた。
「な、なにするんだよ…響君……」
恥ずかしいのか、若干頬を赤く染めて俯く悠。少し可愛い。そして腕かたい。
「早く着替えてよ……」
呆れた顔で、凱人が肩を落として言う。
まだ上着すら脱いでなかったぜ…。
「ああ、悪い悪い」
そして、俺もシャツを脱ぎ始める。半袖のジャージを着終えてから、シャツと制服のズボンをたたんで机の上に置いた。
これは余談だが、俺が警察を一歩出し抜くのにお世話になった、蛍光色付きの上着。
夏の暑さがひどくなってきたので、脱いでも良いことになったのだ。シャツ一枚だと、非常に涼しくなるので助かっている。
気付くと、教室には俺以外いなくなっていた。最終的に、凱人も悠も俺を置き去りにしたのだった。
「お前ら、ひど過ぎだろ──っ!!」
俺は大声でそう叫び、教室を走って出て行く。まさか、置いていかれるとは……
──俺が出て行った後、誰もいなくなったはずの教室に黒い影が落ちた。
──ソイツは、とある生徒の机の前まで行き、ニヤリと笑う。
「まぁ、まだ生かして置いてやるよ…」
呟いた台詞は冷たく、周りの空気を一瞬で凍らせていた。
「しかし、お前のことは監視させてもらうぞ……」
* * *
◦───グラウンド
俺は生徒が疎らに集まるグラウンドへと走って行った。
──あれ?凱人と悠は?
俺は生徒の人垣の中を捜索する。どこで待ってるんだろう。
その時、後ろから声を掛けられる。
「よっ、響!」
昼休みに一緒に飯を食べた大介だった。片手を上げ、元気な声で挨拶してくる。
「ああ、大介。なぁ、凱人と悠を見なかったか?」
とりあえず大介に聞いてみた。
「……? ああ、悠って転校生か。悪いけどどちらも見てないな」
首を横に振る大介。まぁ、当然だよな…。
──あ、いた。
大介の後ろに、悠が歩いているのが見えた。しかし、凱人の姿はない。
「お~い! 悠、こっちだ~」
とりあえず呼んでみる。こちらに気付いた悠は笑顔で手を振り、走ってくる。
「もー、どこ行ってたんだよ~」
「それはこっちの台詞だ。人を置き去りにした挙げ句、その姿すら現さないって何だよ……」
悠は苦笑して、小さく「ごめん」と呟く。
まぁ、悠だから許してやるけどな。
「それで、凱人はどこだ? 一緒じゃないのか?」
小首を傾げて悠は答える。
「んーと、なんか途中で先生に用があるーとか言って、どっか行っちゃったよー。だから僕だけ外に出てたんだ」
そうか、凱人は先生に用事があったのか。俺は納得していた。
そして、クラスごとに並んでいる列に俺達は入った。俺は背の順では、どちらかと言えば後ろの方だった。
気付くと、列にはいつの間にか凱人がいた。
ああ、戻ってたのか…。そんなら一声掛けてくれれば良かったのに。
その時、前では体育の先生が今日やる事を説明していた。
どうやら、今日は100mタイム走をやるらしい。
他クラスの男子が沸く。
「よっしゃぁぁーっ! 9秒台出すぞゴラァァァァッッ!!」
「負けねぇぞオラァァァァッッ!!」
「テメー負けたら爪剥がす拷問してやっからなコノヤロォォッッ!!」
……この学校さ、治安悪過ぎじゃね?
こういう時だけ張り切ってテンション上げる系男子ではない俺達B組は、ただソイツらが静かになるのを黙って見守っていた。
「なぁ響ー、俺と一緒に走ろうぜー」
先生の話が終わった後、軽くグラウンドを走っている時に大介に声を掛けられる。
「別にいーよー」
俺は適当に返事した。いくら大介の身体が強くなっていたとしても、俺が負ける事は無いだろう。
……多分。
タイムを測る人達の列に、俺と大介が並ぶ。
「中学ん時は俺、響に100m負けてたからなー」
腕を組み、思い出に浸るように語り出す大介。
──ああ、そういやそうだったな。
俺も中学の頃の記憶を呼び覚ます。
「今はもう負けないぜ! なんたって俺には彼女が付いてるからな!」
笑いながらそう言う大介。
そして──、
「なぁ、大介……」
俺はここ最近、頭の片隅に留めておいた疑問があった。
「……なんだ?」
大介は首を傾げる。
「お前にさ、あんまり言いたいことじゃないんだけど……」
俺は言葉を続けていく。
「中学の頃から付き合ってたもう片方のヤツとは、今どうしてるんだ?」
──大介の顔が強張る。口を固く結び、先ほどまでの笑顔も消えている。
「そうだ、中学の頃からだったな。お前が──二股してたのは」
あの時は結局バレて、とんでもない修羅場になっていた。
大介の必死に土下座している光景が、俺の目には焼き付いていた。あんな現場に鉢合わせたくはなかったんだけどな……。
確か、頭を下げてたのは金髪ロングの先輩と、黒髪ショートの同級生だった気がする。
正直、高校でも同じ事をするとは思わなかった。そしてしてほしくはなかった。
「で、この高校には中学の頃からの彼女1人と、最近お前が付き合った彼女がいるはずだ」
大介は俯き、ただ地面を見ている。
つか──、今思ったが二股してた男とまた付き合う女ってなんだ……。
「お前はここんとこ最近の彼女の話しかしないし、恐らく弁当もそっちの彼女だろう。……じゃあ、中学の頃の彼女は?」
大介は、俺の問い掛けに答えなかった。
ただ俯き、虚ろな影を地面に落としている。
「──ちゃんと別れてるんだよな?」
大介は、ゆっくりと顔を上げた。
「お、おう……もちろんよ」
顔が引きつり、驚く程に青ざめていた。
「おい…大介お前、大丈夫か? 顔が青いぞ…?」
なんだ──?俺そんなにマズい事言ったか?
「お、おう……。俺ちょっと具合悪いんだわ…、保健室…行ってくる」
「俺も行くぞ、先生に言わないと…」
しかし、差し出した手は大介に振り払われた。
「大丈夫だ……、1人で行ける」
「あ、ああ……。なんか、悪いな」
大介の様子はやっぱりおかしかった。別れてるのか?それともまた──、
「……くそっっ!!」
多分それは無いだろう。大介の元気が失われたのは、俺があの頃の記憶を思い出させてしまったからだ。
──大介はきっと、心改めて恋愛しているのだろうに。
友達として何も理解出来ない自分が悔しかった。
しかし、後悔するのはまだ早い──。
まだ何も、始まっていないのだから──。
そんな声が、どこかから聞こえた気がした。
響が暴れまくり、伏線だけで終える話でした。
今後はもっと事件に入り込んでいけるようにしたいと思います。それでもまだ未定ですが。
ここまで読んで下さった方々、ありがとうございます!
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