明かされる、真実の欠片
剛本リアメの「悲劇」、第四作目です!
今回の話はそこそこ自信作で、真実がそこそこ見えます!
是非、御一読を!!
学校の帰り道、俺は茜と二人きりで歩いていた。一応、あの話もしてあった。
「で──茜も来るのか?近所での情報収集」
正直一人の方がやりやすいと思っているのだが、コイツ一人だけで帰すってのも若干不安だった。
「ま、まぁ──響一人だけってのも危ないと思うし…私も付いていってあげる!」
夕日に照らされているからか、茜の頬は少し赤かった。コイツも同じ事考えてたのか…?
そこから先は、二人で近所の地域を歩き、近くの高校まで寄ったりしていた。さすがに入ったりは出来なかったが、位置などが分かったりした。
夏が近付き、日が長くなってきたのを利用して、俺達はひたすら歩いていた。
──それからしばらくして、もうすっかり日は落ちて、空の殆どを闇が覆っていた。綺麗な星空だった。
「茜ー、どうする? そろそろ夕飯の時間になるよな?」
俺は帰路を歩きながら、隣の茜に声を掛ける。
「あのさ……響」
俯き、声のトーンを落として言う茜。
これは、この雰囲気は……。
「なんだ? 改まって」
茜は少しの間、言うのを躊躇っていたが、ちょっとしてから口を開いた。
「夜の学校、行かない……?」
──この女も、俺と同じ非リアだった。
俺は少しの間、無言で茜を見ていたが、直ぐに返答を返す。
「ああ、いいぜ」
元々、茜が家にちゃんと帰ってから俺一人で学校に行くつもりだったが、茜自身が行こうと言うのだから仕方無いと思った。しかし──
「殺人犯に出くわしたら直ぐに逃げろよな」
一応忠告しておく。
「もっちろんよ! 自慢の体力で追いかけてやるんだから!」
───コイツは、人の話を微塵も聞いていなかった。
「いやいや、逃げろって言ってんだよっ!?」
俺は思わずつっこんだ。
「嫌よー、ちゃんと捕まえないと、この先の高校生活不安でしょ?」
まず生きて帰れるかどうかが分かんねーのに、なんて能天気なんだ茜は…。
「まぁ、いいや。学校行くなら戻ろうぜ、道」
俺達が歩いていた道は、学校とは反対方向の道だった。はーい、と言って茜がくるっとターンする。 その時──、
「ん?」
茜の上着の背中に、光る黄色い何か太い線のようなものが付いている。
何だろうと思い、──触ってみる。
「ちょっ、響!? なんで私の背中触ってるの!?」
茜のかなり動揺した声には耳も貸さずに、その光る黄色い何かを分析する。
「──蛍光色だな」
そう、夜の暗闇の中、街灯の光を受けてルミネセンスが起きていた。
「俺達の高校の制服ってすげーな……」
男子用の制服である俺のやつも、背中を茜に見せたら、光ってるー。と言われた。
そして俺達は、闇の中を歩き学校へと到着した。
* * *
俺と茜は歩いて学校に着いた。時刻はもう7時を過ぎている。
「お母さんにはきちんと言っておいたから。少し遅くなるからって」
「了解ー」
俺も携帯を開き、妹に簡潔にメールを打つ。
『帰り遅くなる、夕飯は勝手に食べて。』
送信──で、その後直ぐにピロピロリ~ンと返信の着信音が鳴る。
アイツ、返信速いな。速過ぎだろ……。
しかも、返信の内容は酷いものだった。
『おっ!もしかして茜と一緒!?やるねぇお兄ちゃん♪いーよ、二人で美味しい物でも食べてくるがいいよっ♪』
マジでこれをあの一瞬で打ったのか!?
驚愕と、言い知れぬ恐怖のようなモノが俺を襲った。
──なんか茜と一緒ってことまでバレてる……のか?響音は妙に勘が鋭いトコあるからなぁ…。
「しっかし……、美味しい物ってねぇ……」
今俺達の前にあるのは、不気味な雰囲気を纏った夜の学校の校舎だ。
確かに、今からでもファミレスに向かいたい気分ではある。
「で、どうする?校舎ぐるっといっ……──」
「ウワァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
──茜が言い終わる前に、校庭のどこかからか大きな悲鳴が聞こえた。
「え…っ?」
「何っ!?」
俺は直感した。起きた、起きてしまったのだ。例の事件が、この学校で。
「場所は恐らく奥の体育館通路手前だ!
茜は救急車、それと警察を呼べ!!」
俺は茜にそう叫んで指示を出す。場所は殆ど勘だった。とにかく現場だと思われる場所まで全力疾走で走った。
携帯の画面をライト代わりにし、校舎の角を曲がり、体育館に繋がる通路が見える。
そこには、胸にナイフが突き刺さった状態で壁にもたれ掛かっている男子生徒がいた。
「やっぱり殺されていたか……」
俺はその生徒に見覚えは無く、ただ俺達の学校の制服を着ていた。
さらにその奥に、走り去る影が見える──。
「待てよ────っ!!」
俺は携帯の画面を正面に出しながら犯人らしき影を追いかける。
みるみるうちに遠ざかって行く黒い影。
速い……、俺の足じゃ駄目だ…、体力も保たないだろう…。
これは足の速い茜を向かわせた方が良かったかもしれない。そう──、一瞬だけ思った。
くそっ……だが、これだけでも──っっ!!
犯人を捕まえることは諦めたが、それでも確実な証拠だけは手に入れる必要があった。
そうして俺は、開いた携帯を持った腕を前に伸ばしながら地面に飛び込むようにジャンプした──。
その時、背中にキラッと光った黄色い欠片を、俺は見逃さなかった。
そのまま地面に飛び込み、ドサッと倒れる。
「ははっ、やっぱりな──」
俺はニヤリと笑い、地面にうつ伏せで寝たまま携帯を閉じた。
さぁ、ここからが面白い──。
もっと俺を楽しませてくれよ──。
なぁ、殺人犯──俺を見てるんだろ?
ぜってーに暴いてやるからな──。
お前の、真実を──。
その後の町は、茜が呼んだ救急車とパトカーのサイレンの音に包まれていた。
俺と茜は、警察に事情聴取を受けた。
しかし俺は、手に入れた情報を明かす事はしなかった。
その帰り道、俺と茜が会話することは無かった。
明日の学校は荒れそうだ──。
この話、もうエンディングまでは頭の中で完成しました。
なので、早くラストまで書きたくて書きたくてしょうがない感じです(笑)。
読んで下さった方々、ありがとうございます!!
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