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悲劇〈高校一年生連続惨殺事件〉  作者: (two)
第二章──繰り返される悲劇──
16/19

──プロローグ──

第二章──開幕。

 私は、人がなぜ笑うのかが不思議だった。

 生きてる中で彼らは、なぜあんなにも楽しそうに時間を消費できるのだろう……と。

 それが知りたくて、私は日常生活の中でよく笑うようになった。

 子供らしく、明るく、無邪気に、笑顔の絶えない女の子を演じてみた。

 しかし、それでも私は理解に苦しんだ。

 人前で何度も何度も笑って見せて、その意味についてひたすら考えた。

 だけど分からなかった。だから、兄に聞いてみたのだ。

 その頃小学生だった私と兄。 幼い頃から頭脳明晰の兄に教えて貰った、一つの仮定。

 彼曰()わく持論らしい。十中八九、偉人か学者の言葉の受け売りだろうと私は考えているが。

 私は訊ねた、『どうして人は、笑うのか』と。5年生の兄と4年生の私は、とても子供らしくない会話をしていた。


『──知ってるか、響音。笑うってことはな、人間だけに与えられた特権なんだ。勿論、泣くこと、怒ること、憎いと思うこと、これら全ても人間が強く感じて、伝えることができる……。これを何て言うか分かるか?』

 そう、兄は私に振ってきた。考えなくても分かる簡単な質問だったから、簡潔に答えた。

『……感情』

 または情動、心情とも言うだろう。

『そう、感情だ。確かに、他の動物に感情が全くないわけではない。怒ったり、恐怖して怯えたりする動物をみたことがあるだろ。だが、人間よりは豊富じゃない、そして認知されにくいんだ。だから、笑うということにおいても、それは俺達だけが持つ理解し易い感情。……要するに、不思議に思うことなんてないってことだ』

 と、兄に説明された。あんまり分かりやすくもなかったが、とりあえず私は安心した。胸をなで下ろして、つっかえていた物が取れたと感じる。

 もう、謎を解くために被っていた笑顔など捨てても良いだろう。楽に生きるために。と考えていた。

『あー……あと』

 すると、兄の話はまだ終わっていないみたいだった。私はもう一度、耳を傾ける。

『何?』

『……響音の、皆に明るく笑顔で接していた態度が偽りだったとしても。俺は、あの響音の姿が好きだからな』

 どうしたのだろう、突然の告白だろうか。でも、心のどこかで少し喜んでいる自分がいた。

『……別に、無理に変える必要なんてないぜ!』

 彼は、思わず目を逸らしてしまう程に輝かしい笑顔を、私に向けた。

 その日から私は、変わろうと思っていた。

 心からの笑顔を、作りたいと思っていた。

 ──けれど、私達を襲ったあの“悲劇”が、そんな思いを簡単に葬り去った。

 私の心は閉ざされ、偽りの笑顔さえ無くしてしまったのだから。


     *    *    *


 都会のようで、都会ではない。真新しい高層ビルで囲まれた場所。

 その一つ、相変わらず人気の無いビルの屋上に、その男はいた。さらさらと蒼の髪を(なび)かせ、少し股を開いた体勢で仁王立ちしている。

 どこか一点をジッと見つめていた彼は、そのあと小さく息をついた。

「……はぁ」

「あら、柄にもなく溜め息を吐いてるじゃないの。何かあった?」

 そう言って後ろから現れたのは、若くて美しい女性。色気もあり、気品もバッチリそうな彼女は、微笑を含んだ口調で青年に話しかける。

「ん、ああ……君か。いや、彼女の過去について考えてたら自然と溜め息が出たんだよ」

「……響音ちゃんね、確かに彼女は凄いわ。お兄ちゃんなんかより全然酷い人生だと思う」

 美しい女性も、心から同情した様子で頷いた。

「よし、決めた!」

 突然、蒼髪の青年が目を輝かせ立ち上がった。美しい彼女も、思わず驚いて目を見張る。

「ど、どうしたの?」

「もう少し……時間を戻そうか」

 すると彼は、そう言った。

「え? 響くんの2週目を見るんじゃないの?」

「そんなもん、後で! 僕はあの子を救ってあげないと気が済まない!」

 意気揚々と、自らの名案に興奮した様子で彼は宣言した。握り拳を蒼空に大きく突き上げ、“姿を変える”。

「……さぁーて、響君より先に彼女の心を奪って見せる!」

 そんな青年の周りを、黒い影が包み込んでいき、顔や体型を変化させる。

 そんなことする必要があるのかと言われれば、彼らは“今の姿では外に行けない”と答えるだろう。

「アホらし……私はここに居るわよー」

 ああ、と短く答えた青年は、目元までかかった黒の髪を分けて整える。

 その行為にたっぷり3分は要してから、右手の親指と中指をくっつけ、中指を振り下ろした。


 パチン────。


 その音は、何回も空中にこだまする。

 黒髪の青年は、目を瞑り音を堪能していた。

「……うん、いつ聴いても良い音だよ」

「自分の指パッチンに感動してる……と思ったら、あれ? もう行っちゃったの?」

 数秒で音は途絶える。それを合図に、青年の姿は消えていた。

 彼はもう飛び越えてしまったのだろう。

 ──響音の過去、小学生の頃の話へと。

「本当に勝手な人よね……」

 と、美しい女性は深く息を吐く。

 それには、諦めの意思が感じられた。

 ……それも、仕方ないと思う。

 なにしろ蒼髪の青年は、この世で一番“気紛れ”な存在だからである。

文章力の練習みたいなものです。でも、話はきちんと考えてあるので、暇な方は読んでみて下さい。

 《繰り返される悲劇》

 ※実際は過去のお話です。あと、更新は不定期になります。

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