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Run away!3

たった一人の

作者: 貴幸

高梨兄弟の話。





目が、覚めた。



「ん…」



携帯をみると今は午前十二時二十分。


カーテンの隙間から入る木漏れ日が目に染みる。



「朝…。」



何の変哲もない、日曜日だ。





少し布団にくるまってぼーっとしているとドアがあいた。



「ご飯なんだけど。」



アキトが俺を起こしにきた。

正直動きたくない。



「飯…いい…。」



「起きてんならとりあえず食べろよ、二人分つくったんだよ。」



何を作ってくれたんだろう、と思うとお腹が急に空いてきた。

俺は起き上がり、布団をよける。



「はやく起きてこいよ。」



そう言ってアキトは部屋をでていった。

アキトは料理が上手だ。

頼れる弟がいてよかったと思う。



「あ〜…起きたくねぇ…」



目をこすり、足に力をいれた。








テーブルの上に置かれているパンケーキ。

今日は手抜きだ。



「…俺が起きるの待ってたの。」



「悪い?」



「別に。」



こうゆうところはまだ家族として成立している気がする。


俺を恨んでいること以外、普通の家族じゃないか。


もっと違う兄がいれば、弟は幸せに、強く生きれたのではないか。



「そんな怖い顔して食う人初めて見るんだけど。」



アキトに言われて気づいた。

つい、深く考えてしまう。



「いや、美味しく作れる才能が羨ましいなと。」



「お前が料理できるのは知ってんだよ…。」



機嫌を損ねてしまった。

アキトは、俺の事を知っている。

肝心なとこは知らないけど、ちゃんとわかってくれているんだ。



「兄に似て、完璧な人間に育ったこと。」



「ちげえ!親に似たんだよお前に似たんじゃねえ!」



この異常な怒り方は面白いと思うけど。

きっとこれは、母似。



「お前のすぐ怒る癖は誰に似たんだろうな。」



「…え?」



少し、不安な顔をする。



「な、何言って…」



アキトは、母を知らない。



「どうせ親が違うとかくだらない事考えてんだろ?遺伝はじいちゃんとかからもするんだよばーか」



「なっ!騙したな!?」



顔を真っ赤にして俺を睨む。



「騙してねーよお前が勝手に、勘違いしたんだよ」



「うざ!くそ兄貴!!」



「勝手に言え。」



まだ、餓鬼だなあ。

俺も餓鬼だけど。


一通りご飯を食べ終わり皿を片付ける。



「また寝るの?」



「寝るよ、する事ないし。」



まだ四時間くらいしか寝れてない、正直眠すぎすぎる。


アキトは俺が寝て不利益でもあるんだろうか。



「何、もしかして寂しいの?」



冗談で言ってみる。

しかし少し方向性は違えどあっていたようで反論してこない。


しょうがなくテレビをつけソファに座る。

DVDが入ってたらしく、チャプターメニューが表示された。



「あっ…!」



なんだろう、AVでも見ていたのか。




『呪怨』




「ひいいいいっ!」



「…」



まさか、これを見て怖がっていたのか。

俺は再生ボタンを押す。



「何してんだよ!!くそ兄貴!!!」



そう言いながら俺の隣に座ってくる。

チャプターを選んでいく。



「どっから見てないの」



ホラー映画なんてなんとも思わない。



「24番…」



意外と最終面だ。



「俺…今日呪われる…」



これ見た人全員呪われていたらホラーもくそもないだろ。



「くっつくなよ」



必要以上にくっつかれるとあつい。



「ふ、不可抗力…」



腕をつかむ手が痛い。

映画を見ているといきなり変な霊みたいのがでてきた。



「いやああああああ!!!ああああ!!ああああああ!!!」


う、うるさい…。



「耳がちぎれる…。」



「も、もう見れない…。」



そう言うと俯いてしまった。




結局、最後までアキトは叫び続けた。



「拷問ビデオだった」



「耳がきっととれた。」



少しストーリー的には面白かったが、みたくないのを見るのは何故だ。



「なんでみたくないのを借りてきたんだよ」



「ヒロキに借りた…。」



アカラギの顔がうかぶ。



「じゃあ、俺は寝る。」



無駄な時間を過ごした。



「お、俺幽霊に連れてかれる…。」



知るか。

アキトの事など考えず階段をのぼる。

俺は眠いんだ!




しかし、そのバチがあたった。




「あっ」



階段を登る足を滑らす。


そのまま体重は重力に従い地面へと吸い込まれる。



「兄ちゃん!!」





階段を落ちていった。


あれ、前も階段から落ちたことあったような。


それで、アイツとあったんだっけ…。








目を覚ますと、ソファの上にいた。

前の時とは違い、足に痛みは感じない。

軽症ですんだみたいだ。




青ざめた顔をしたアキトがこっちを見ていた。


その目から涙が零れていく。



「…えっ!?いや、えっ!?」



さすがに戸惑う。


なんで涙なんか、流しているんだよ。


もしかしたら何かしてしまったのかもしれない。


アキトが俯きながらぼそりと言う。




「し、死んだかと思った…。」




その手は尋常じゃないくらいに震えてる。



ああ、こんな風にしてしまったのは俺じゃないか。



「生きてるよ。」



「俺の家族はさ、もう、兄ちゃんしか、いないのに…」



俺でいいの?


俺なんかより、他の家族と暮らした方が幸せなんじゃないのか?



今はその泣いてる頭にただ、手を置いた。



「ごめん…。」



「本当だよ…バカ…。バカ兄貴。」



たった一人の家族なんだ。



大切にしていたい。



ただ、そう思った。







ホラー系は苦手です。

楽しそうな顔してホラーゲームをする人を知ってます。

神経おかしいんだろうなと思ってます。

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