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ウワサ

「キャーーーッ。あきらくーん」

暁のファンの子達が、暁を追い駆けて、廊下を走って来る。

毎日の事とはいえ、呆れ果ててしまう。

だが、注意しないわけには、いかない。

「コラー!廊下は、走る所じゃない!そんなに走りたいのなら、グランドに行きなさい!!」

校内中にあたしの声が、響き渡る。

行き交う生徒達が、何事かと振り返る。

あーあ。

今日も、やっちゃったよ。

何で、こんな事しなきゃいけないんだろう?


申し遅れました。

あたしは、沢田未月と申します。

この桜華学園の理事長の娘でありながら、生徒会長という、重要な役をやらせていただいてます。

先程注意したのが、水瀬暁。

学校一のプレーボーイとモテはやされているのだが……。


注意にも耳を貸さず、暁達が、廊下を行ったり来たり……。

一体、何往復するつもりなんだろう?

って、そうじゃない。

「いい加減にしなさい!他の人の迷惑でしょうが!!」

再度、怒鳴ってみたものの。

「そんな事言われてもあいつ等、次から次へと追って来るんだぜ。何とかしてくれよー」

暁が、走りながら答える。

学校一のプレーボーイが呆れるよ。

って、ちょっと待って。

何で、こっちに近づいてるの?

お願いだから、厄介事はこっちに持って来ないで……。

願いも虚しく、暁があたしの後ろに隠れた。

「何言ってるのよ。それだけ人気があるって事じゃない。それにあたしには、無関係だし…。自分でどうにかしなさい」

あたしは、冷たく言い放ってその場を離れようとした。

…が。

暁が、後ろからあたしの肩を掴んで、動けない。

うっ……。

まさか…。

あたしが顔だけ振り返ると。

「そう言うなって。そんな器用なこと、オレには出来ないの知ってるだろうが…」

そりゃあさ、小学校からの付き合いだし、それぐらいはわかるけど…。

だからって、あたしがしゃしゃり出るのって、違うと思うんだけど…。

暁にとっては、よくないと思って言ったんだけどなぁ…。

そんな事してるうちに、ファンの子達に囲まれてしまった。

「生徒会長!!そこ退いてもらえませんか?」

口調は穏やかなのに、どこか棘がある言い方なのは、なぜ?

暁が、何かしでかしたのかな?

それとも、他に問い詰める事でも出来たの?

何て、考えてたら。

「会長!!退いてください」

さっきよりも一層大きな声で言われてしまった。

あたしは素直に立ち去ろうとしたのだけど。

「未月。お願い、動かないで」

弱々しい声で、私の肩をガッチリ掴む。

しょうがない。

代わりに聞いてあげるか……。

「暁が、何かした?」

やんわりと言葉をかけると。

「会長には、関係ない事です」

はっきりと言い切られてしまった。

あらあら…。

これは、もうどうしよもないな。

あたしは、暁に向き直って。

「と言う事なので、あたしは行くわね」

一言言って、暁の横を通り過ぎようとしたが。

「ちょっと待ってくれよ。オレ、ファンの子達こいつら、苦手なんだよ。頼むから、何とかしてくれ…」

腕を掴まれてしまった。

しかも、半泣きだし…。

男でしょうがもー。

仕方が無いなぁ。

あたしも甘いなぁ。

何て、自分で分析してるし…。

でも、ファンの子達にとっては、面白くない事だろう。

暁の言葉にそれぞれ口に出す事は。

「暁君なんて、会長の後ろに隠れてばかりで、私達と話そうなんて、これっぽっちも思って無いくせに!」

「少しは、自分から話してくれたって、いいじゃない!!」

「もっと、愛想良くしてよ!!」

etc…。

次から次へと、暁の悪口が出て来ること。

本当にあなた達は、暁のファンなんでしょうか?

って、疑いたくなるよ。

まぁ、彼女達の言ってる事は、最もだとあたしも思うよ。

でも、そろそろ収拾つけないと、次の授業が…。

「未月、これどうしたの?」

人垣の向こうから、声が聞こえた。

「エッと…」

あたしが答えに詰まってると、その人垣を左右に掻き分けて、こちらに近づいて来た。

彼女が、あたしの後ろに隠れてる暁を見ると。

「なんだ、また暁か」

半分、呆れた風に口を開いた。

彼女は、鈴木紗夜さや

しっかり者で、あたしの良き理解者。

「ねぇ。いい加減未月に頼るにやめたら。男なら男らしく、堂々としなさいよ!自分のファンの子達が手に終えないのなら、ほっときなさいよ」

全くその通りです。

あたしが横で頷いてると。

「未月も未月だよ。こんな奴、ほっとけばいいのに」

矛先が、あたしに向く。

うっ…。

そんな事言われても……。

もちろん、紗夜が言ってる事は正しいって思う。

だけど、気が付いたら板挟みにされてるんだもん。

この状況をどう打開すればいいのよ。

「まぁ。そこが、未月のいいところだけどね」

呆れ顔の紗夜。

やっぱり、わかってくれてる。

何て、一人心で思ってるあたし。

「それで、今回は何が原因なの?」

紗夜が、暁の方に向き直る。

今回の原因は、まだ聞いていないや。

「さぁ、オレにもさっぱりわからないんだよ。教室から一歩踏み出したら、この状況だった。だから、何が何だか…」

暁も困ったように言う。

暁の話を聞き、紗夜はファンの子達に向き直る。

うーん。

やっぱり、凄いや。

行動力抜群だね、紗夜。

あたしなんかが、生徒会長やってていいのかなぁ…。

何て、思ってしまう。

そんなこんなで、ある子が口を開いた。

「一部で広まっている噂で、暁君には、付き合ってる女の子がいるって聞いたから、本人に直接聞こうと思って、暁君を追い駆けていたんだけど……」

そうなの?

それは、初耳だ。

一体誰なんだろう?

悩んでるあたしの横で、紗夜が。

「その噂なら、知ってる」

って、言い放った。

エッー。

ウッソー。

でも、紗夜が嘘つくはず無いし…。

「じゃあ、あの噂は、本当なんですか?」

「本当なわけないじゃん。勝手に誰かが流したんじゃない」

紗夜が、冷静に答える。

「なーんだ。ただのでまかせか」

皆納得したみたいだ。

だけど、何かが引っ掛かってるんだよね。

「しかし、何でまたそんな噂が、流れたんだろう

?」

一人、呟く。

それを聞いてた紗夜が。

「あれは、うちのクラスから流れたのよ」

小声で、教えてくれた。

あたしは、紗夜の目を見た。

そこには、何かを企んでいる、悪戯な目だった。

「何を企んでいるの?あたしにも教えて」

あたしは、紗夜に耳打ちするが。

「ダメ!これは、秘密事項なんだから」

何て言いながら、右手の人差し指を口元に持ってくる。

「おーい、紗夜。この人だかりは一体なんだ?」

何が何だかわからずに居るあたしの前に、一段と背の高い頭が見えた。

彼は、笹原拓也。

紗夜の彼氏だ。

相変わらず、のんきなんだから。

そうだ。

「ねぇ、拓也。うちのクラスから、何か広めてるってほんと?」

拓也に向き直って聞く。

「何の事だ?」

アッ、とぼけてる。

拓也は、嘘を付く時や、照れてる時、鼻の頭を掻く癖がある。

「ところで、未月の後ろで呆けてるのは、暁か?」

エッ…。

あたしは、暁の方を振り返る。

暁は空の一転を見つめたまま、凝固してる。

あたしは、暁の目の前で、掌を左右に振る。

反応が無い。

どうしたのよこいつ

あたしは、暁の体を揺さぶってみる。

けど、一向に戻らない。

何だ、こいつ…。

まぁ、いいか。

取り合えず、ファンの子達に向き直ると。

「ほらほら、もうすぐチャイム鳴るよ教室に戻って!」

そう言いながら、暁の首根っこを掴むと、そのまま教室まで、引っ張って行った。

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