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文化祭

目まぐるしく日々が過ぎていく。

体育祭や文化祭の準備で、忙しく走り回っていた。

体育祭のメインで、男子の騎馬戦が物凄く盛り上がり、クラス対向のリレーも…。

応援合戦も、クラスの味が出てて、面白く甲乙告げたかった。

文化祭も各クラス事の出し物の確認やらで、休む暇さえなかった。

その間には、暁があたしの思惑道理に動いてくれて、利恵に嫉妬しつつも、片想いを堪能していた。

今日が、文化祭の最終日。

そして、例の事も今日、はっきりさせる。

ちょっと恥ずかしいけど、でもこれを逃したら、機会がない。

だから、緊張してる。


「会長。一言挨拶お願いします」

不意に言われて、あたしは生徒会室に集まったメンバーを見て。

「今日、ラスト一日。気を引き締めて頑張りましょう」

と声掛けをする。

「はい!」

全員が、返事をする。

「では、解散」

役員が、それぞれ散っていく。

さァーって、今日一日、気を引き締めなくちゃ。

何て、自分に言い聞かせる。

本当は、暁と一緒に店を回りたいのは、山々だけど、気が引ける。

「未月」

生徒会室の入り口で声がした。

「暁」

自分の声が、弾んでるのがわかる。

「いよいよ、今日だな」

暁が、心配そうに言う。

「うん。仮装パーティーの時は、よろしくね」

あたしが言うと。

「わかってる。必ず行くから」

照れもせず言う。

「さて、オレは、もう行くな」

「うん。来てくれてありがとう。また、後でね」

あたしの声で、暁は後ろ向きで手を振る。

さて、あたしも行きますか。

そして、あたしは生徒会室を後にした。


流石、最終日だけあって、一般の人も多い。

しかも、朝から大騒ぎ。

凄い。

こんなに人が大勢働いている。

役員達も腕章を着けて、頑張っている。

この文化祭は、大成功だと思ってる。

役員達には、ご苦労様会をしてあげないとね。

あたしが、そんな事を考えていたら。

「ヤッホー、未月」

って、紗夜が言う。

「紗夜」

「大盛況だね」

「うん。凄いね」

「いよいよ、今日だね」

って、紗夜が言う。

あたしが、気にしてることをズバリと言う。

「でも、やっと報われるんだから…」

って、紗夜が優しく言う。

「それは、そうなんだけど…」

って言ってると。

「オーイ、紗夜。何、油売ってるんだ。クラスの準備しないと…」

大きな声で、拓也が呼んでる。

「はーい。今、行く。じゃあ、未月」

そう言って、紗夜は駆け出した。

ハァー。

相変わらず、仲がいいなぁ。

うちのクラスの出し物は、八ミリの自作の映画だ。

もちろん主役は、暁だ。

結構、面白くていいと思う。

あたしも脇役として出てます。

BGMも結構こってて、見やすくなってるんだ。



あたしは、廊下を歩きながら、他のクラスを見て回る。

今のところ、何も起きていない。

このまま、何も起こらないといいけど…。

そう危惧しながら、見回る。

本当は、ゆっくりと見て回りたいんだけど、ちょっと無理みたい。

すると、前から、暁と利恵が歩いてくる。

利恵は、あたしに見せつけるように暁の腕に自分の腕を絡ませている。

ふーんだ。

今のうちだけだよ。

暁は、あたしのだからね。

何て思いっきり、嫉妬してる。

余裕なんて、全然ない。

あーあ。

進歩してないな。

何て思いながら、あたしはその横を通り過ぎた。



フと、時計を見る。

十一時三十分を指していた。

あっ、ヤバイ。

講堂へ行かなきゃ。

あたしは、人にぶつかりそうになりながら、廊下を走った。

本来なら、したら行けない事だけど、今は、それどころじゃない。

講堂に急がないと…。


行動の入り口を開けると、生徒会役員が揃ってた。

「会長。五分の遅刻ですよ」

「ゴメン」

あたしは、息を切りながら言う。

「それじゃあ、飾り付けに取りかかろう」

あたしが言うと、皆が持ち場に行って、作業を始めた。


長机を左右に二列置いて、テーブルクロスをその上に敷く。

そして、小瓶に造花を飾ったのを所々に置いていく。

ちょっとしたステージには、スタンドマイクが置かれ、マイクテストをしている。

生徒が、今まで頑張ってきた分、ここでちょっと、息抜きしてもらいたい。

そして、明日からの勉学に励んでもらいたい。

って、あたしは思ってる。

だから、今が大変でも、後の事を考えると今やっておかなきゃって思う。

今しか出来ない事、沢山有ると思う。

見つけ出すことは、そう難しくないと思う。

きっかけさえあれば、誰にでも慣れるとあたしは、思ってる。

思ってるだけじゃ駄目。

そこから、動かなきゃ。

それが、今のあたしだって思い知らされる。


「会長。どうされましたか?」

声がかかる。

「何でもない。後の事お願いできます?」

あたしが言うと。

「はい。後は、任せてください!」

はっきりとした返事が返ってきた。

「じゃあ、お願いします」

それだけ告げると、講堂を後にした。


取り合えず、中庭の方を見てから、体育館の方に行こうか…。

「未月。こんなところに居た!」

遠くから聞こえてきた。

そこには、暁が立ってた。

はて、あたし何かしたっけ?

「未月。紗夜が、店番してくれって」

あ、ああ。

店番ね。

「はい。今から行く」

あたしは、それだけ言うとクラスの方へ向かう。


「未月。ゴメン店番してて」

クラスに顔を出すや否や紗夜に言われて、法被と鉢巻きを手渡された。

八ミリの他に鉄板焼も出してる。

仕方ないか。

あたし、何もクラスの事手伝えなかったから、これくらい。

あたしは、法被と鉢巻きを身に付ける。

鉄板の前に立って、焼きそばを焼く。

だけど、クラスにはあたしだけ。

他に誰も居ない。

あらら。

これじゃあ、焼いた意味ないじゃん。

仕方がない。

自分で買い取っちゃおう。

お昼、まだだったし…。

「お、未月。何してるんだ!」

ヒョッコリ顔を出した、暁。

「うん。ああ、自分で焼いた焼きそばを買って、食べようかなって…」

「だったら、オレが買って一緒に食べよ」

「いいの?」

「いいよ。一緒に回れないから、これぐらいは…な」

って、暁が笑顔で言う。

「ありがとう」

私は、照れながら言う。

私は、焼きそばをパックに詰める。

そして。

「三百円です」

って、暁に渡す。

暁が、その場であたしの焼いた焼きそばを食べ出した。

どうかな?

暁が食べてる間、沈黙が続いた。

「美味しいけど…」

「けど?」

「ひと味足りない」

って、暁が言う。

「オレが、作ってやるよ」

そう言って、暁は鉄板の前に立つと手慣れた手付きで焼き始めた。


「ほら、食べてみな」

そう言って、あたしに手渡してくれた。

あたしは、言われた通りに食べた。

「美味しい!」

あたしは、思ったまま言う。

「だろ」

得意そうに言う。

意外な一面を見た感じ。

「未月も大変だな。ゆっくり見て回る暇もないなんて…」

暁が、真顔で言う。

「そうでもないよ。皆の喜ぶ顔が見えれば、なんとも思わない」

「だけど、お前の両肩に乗ってる重荷が、早くなくなればいいな」

って、照れながら言う。

優しいな、暁。

あたしは、そんな暁の頬に軽くキスした。

暁が、驚いた顔をする。

「エヘヘ」

照れ隠しで、笑ってみた。

暁もつられ、笑顔になる。

「ありがとう」

「何の事かなぁ」

何て言いながら、ごまかす。

「色々と、ありがとう」

あたしは、心からお礼を言った。

「ところで、皆、どこに行ったんだ?」

暁が、話を変える。

「この時間帯なら、中庭で軽音部がやってるから、そっちに行ったんじゃない」

「ふーん。オレは、未月と二人で居られれば、別にどうでもいいや」

暁が、優しい声で言う。

あたしは、暁の顔を覗く。

暁は、照れ臭そうにして、顔を背ける。

エヘ……。

照れてる暁って、可愛い。

何て思いながら、クスって笑う。

「今、笑ったな」

すかさず、暁が言う。

「笑ってないよ」

って言いながら、口を紡ぐ。

すると、暁があたしの首を緩く閉める。

「苦しいよー」

あたしが言うと。

「もう、笑わないか!」

って、真顔で言うから。

「笑わないってば」

あたしも、真剣に答える。

「よし」

そう言って、暁はあたしの首から手を放したと思ったら、抱き締められた。

「今まで、嫌な思いさせて、悪かった」

って、暁が言い出した。

「ううん」

暁の腕の中で首を横に振る。

「あたし、今までそんな風に思った事無い。むしろ、色々な経験が出来てよかったって思ってる」

暁の目を真っ直ぐ見て言う。

「オレが、だらしないばかりに…」

すまなそうな顔の暁。

「そんな顔しないで、過去を振り返っても仕方ないよ。今からの事、考えようよ」

これからだものね、あたし達は。

「そうだな」

暁の顔に笑顔が戻る。

その時。

廊下が、ガヤガヤと騒がしくなった。

あたし達は、慌てて距離をとった。


「未月、ゴメンね。忙しいのに店番頼んじゃって…」

そう言って、顔を出した紗夜が。

「あら、そうでもなかったみたいね」

って、意味ありげに笑う。

「そ…そんな事無いよ」

慌てて弁解する。

顔に熱が集まるのを感じる。

「中庭が終わったなら、体育館に行こう」

あたしは、紗夜に法被と鉢巻きを返すとそそくさと教室を出ていった。


少しでも、暁と一緒に居られて、よかった。

本当は、諦めてたから…。

これも、紗夜のお陰かな…。


あたしは、浮き足だった足取りで、体育館へ向かった。


その後、あっちこっちと走り回り、休む暇さえなかった。

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