表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

自分の想い

あたしは、学校から帰宅すると直ぐに着替え、家を出た。

お母様の行き着けの美容室へ向かった。


「いらっしゃいませ」

店に入ると、元気な声が聞こえてきた。

「今晩は」

あたしは、挨拶する。

「あら、澤田のお嬢様ではありませんか。どうされたんですか?」

顔見知りの店員さんに声を掛けられた。

「ちょっと、カットしに…」

つい口ごもってしまった。

「カットって、裾をですか?」

聞き返されて。

「いいえ、ショートカットにして下さい」

あたしは、はっきり言うと、その店員さんは。

「そんな綺麗な髪、勿体ないですよ」

って驚く。

「いいの。今まで髪型変えた事なかったから、思いっきり切ってみようと思ったの。イメージチェンジしようかと思って…」

何か、ごまかしてるみたいで、嫌だけど…。

「わかりました。そこまで言うなら」

あたしは、鏡の前に座る。

そして、テキパキと準備しだす。

「いいですか」

って、聞かれて。

「はい。切っちゃってください」

って、はっきりと答えると、ハサミが入っていく。

ジョキジョキ……。

あたしは、その音を聞いていた。

少しづつ、髪が軽くなっていく。

気が楽になってくる。

悩んでた事も忘れられそう。

あたしは、目を閉じた。


「お嬢様。できましたよ」

そう言われて、あたしは目を開けた。

鏡の前には、別人になったあたしが居た。

どこから見ても、今までのあたしじゃない。

でも、あたし自身なんだよね。

髪が短くなった分、気分もプライドも軽くなったみたい。

「どうもありがとう」

あたしは、店員にお礼を言う。

「いいえ。でも、本当によかったんですか?」

「うん。さっぱりしたよ。これから、また伸ばせばいいんだからね」

あたしは、笑顔で言う。

「そうですね」

店員さんも笑う。

あたしは、会計を済ますと外に出た。


外は、少し寒い。

空を見上げると、満天の星空。

あたしは、その中を家路へと急いだ。


あたしは、玄関を開けると。

「ただいまー」

大きな声で言う。

「お帰りなさい」

奥から、お母様の声。

あたしは、靴を脱いで奥の部屋に行く。

「何処に行ってたの?」

「ちょっと、美容院へ行ってたの」

あたしが答えると、お母様が振り返る。

「未月。どうしたの?その髪」

ビックリするお母様。

そりゃあ、ビックリするのは、当たり前だよね。

「ただの気分転換。それより、お父様帰ってきてる?」

あたしが、聞くとお母様が。

「今、書斎にはいられたけど…」

と、教えてくれた。

「ありがとうございます」

それだけ言うと、二階の書斎に行く。


コンコン。

あたしは、書斎のドアをノックする。

「はい」

返事が返ってくる。

あたしは、ドアを開けて中に入る。

「珍しいな、お前がここに来るなんて…」

お父様が言う。

確かに、よほどの事がなければ、この部屋に近づく事もない。

「折り入って、話があります」

「なんだ?」

冷静な声が返ってきた。

「水瀬君との婚約の事ですけど…」

「それがどうした」

お父様の冷たい声。

「あたしは、全校生徒に報告したいと思っています」

「婚約破棄されてるんだぞ」

「わかってます。でも、暁…水瀬君は、あたしの事を大切にしてくれてたのも事実です」

「それがどうした。水瀬あれは解消してくれと私の前で言ってきたのだ。お前とは、付き合わせはしない!」

お父様が、力強く言う。

「あたしは、水瀬君が何故解消してくれと言ったのか、わからないんです。今まで、黙っていましたが、彼は、あたしを守るために離れようとしてるんだと思います」

暁の事だ、何かがあって、あたしから離れようとしてる。

あたしに危害がかからないように…。

「お前は水瀬あいつを信じてるんだな」

お父様の口調が、急に和らいだ。

「はい。あたしは、信じてます。水瀬君が、理由も言わずに離れるなんて、思わない」

「わかった。お前の好きになさい」

あたしの強い気持ちが、お父様に通じた。

「はい。好きにさせて頂きます」

あたしは、お父様に頭を下げた。

「それでは、お邪魔した」

あたしは、再度頭を下げた。

それだけいうと、書斎を出た。


それから、自分の部屋に戻ると明日の放送で言うことを下書きした。

この事で、暁もビックリするだろう。

でも、これはあたしが勝手にすることだから、責任は全部あたしが、背負うから、本当の事を教えて暁…。

心の中で、暁を求めている自分が居る。

暁が居ないと、息も儘ならないよ。

早く、あたしの所に戻ってきて……。



翌日。

あたしは、何時ものように登校する。

だけど、他の生徒からの挨拶がない。

無理もないか。

皆、戸惑ってるんだろうなぁ。

あたしは、そう思いながら、下駄箱に向かう。

そこで、会いたくもない人と出くわした。

利恵が、暁の腕に自分の腕を絡めてる。

いかにも、恋人であるかのように…。

でも、暁の顔には、笑顔がない。

あたしは、素知らぬ振りをして、その横を通り抜け、教室に向かった。


教室に入ると、注目を浴びた。

やっぱり、切り過ぎたのかな?

自分で、反省してしまう。

でも、切ってしまったら戻らないもの。

あたしは、自分の席に着く。

そして、回りはザワツキ立った。

あたしからやや遅れて、暁と利恵が入ってきた。

「鬱陶しいな。離れろよ」

暁が言う。

「エー、別にいいじゃない」

利恵は、あたしに見せつける為だけに言ってるんだ。

あたしは、そんな光景見てられなかった。

本当なら、あたしがあの場所に立ってるはずだった。

暁は、誰にでも優しいから、ああだけど…。

でも、あたしは信じてる。

暁に何かあっただけで、あたしを嫌いになった訳じゃない。

あたしは、自分に言い聞かせるように心で念じた。


「未月。その髪どうしたんだ!」

驚いた顔をする、暁。

「エヘ、ただの気分転換だよ。似合うでしょ」

あたしは、笑ってごまかした。

本当は、プライドを捨てたかっただけ。

髪を切っただけで、捨てきれたかは、わかんないけど…。

「それ、ひょっとしてオレのせい?」

暁が小声で言う。

「そんなんじゃないって。本当にただの気分転換!」

つい、強調しちゃった。

本当は、“そうだよ“って言いたい。

我慢してる自分が居る。

「ならいいんだけど……」

そう言いながら、自分の席に行ってしまう。

可愛くないな。

もっと、素直にならなきゃいけないのに…。

でも、どうしてもなれない。

暁の前では、天の邪鬼だよ。


あたしは、席を立つと教室を出た。

頭を冷やすために…。


その時、紗夜とぶつかったのも気づかずに…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ