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不思議日記  作者: 月乃葉
5/5

職場の話

今回は私の勤めるグループホームでの話だ

その日の私は夜勤当番で勤務に入っていた。

時刻は19時過ぎ、夕食が終わり、利用者諸氏には寝間着への更衣や就寝前の服薬などをしていただく時間で、職員側は1日で最後の忙しい時間であった。

私と遅番の職員はそれぞれ翌日の朝食の用意と、利用者の更衣・トイレ誘導に入っていた。

そんな中で突然部屋の隅にあった引き出しが外れて落ちた。落ちる瞬間は見ていないものの、落下音と中身が散らばる音は大きく、私はあわてて火を止めて見に行った。

遅番もトイレから顔を出したところで、何事かと目を白黒させていた。


引き出しはプラスチック製で、少し歪んでいるのか引き出すのに少し力がいるために自然に抜け落ちることはない。

利用者諸氏は引き出しがあるのと反対側に据えられたソファ周辺でくつろいでいて、当然ながら引き出しに手が届く範囲ではない。職員は私と遅番の2人だけ。引き出しの中身は筆記具やはさみなどだが、私も遅番も自前のペンを持ち歩いていて引き出しを開けることも、閉め忘れることもない。その時は忙しさもあり、わけはわからないまま、手早く片づけて業務に戻ったが、不思議なことはそれで終わらなかった。


夜間、各居室の見回りをしていると、利用者の1人(仮にA氏とする)がベッドに横になったまま目を開けておられた。眠れないのかと聞いてみると「兵隊さんが来てござるんや」と居室の隅を指さされる。

その先を見るが当然何もない。認知症のある方で、妄想や幻覚の症状も出ている方だったので特に気にすることもないと思いA氏に向き直ったところでA氏が「ああ、兵隊さんが行かある」と言って居室の隅から窓の方へ、何かを追うように指を動かされた。それだけであれば幻覚か寝ぼけていたで片付くことだった。しかし私は確かに背後で空気が動くのを感じた。

窓は締め切っており、エアコンも換気扇も動いていない居室で、だ。



肝の冷える思いをしながらもなんとか朝まで乗り切り、日の出の時間を迎えてほっとしたのをよく覚えている。

のちに聞いたところ他の職員でも気配を感じたり、妙な物音を聞いたりというのはあるそうだ。しかしながら施設内で亡くなった例もなく(入院後の容体悪化で亡くなることはあったが)、土地も特に曰くがあるわけではないらしく、なぜそんな現象が起こるのか皆首をひねっていた。


今年度の初めに異動となり、勤務事業所が変わってしまい、今でもそういった現象が起きているのか聞くのも憚られるために後の詳細はわからないままである。




如何だっただろうか?

少しでも楽しんでいただけたのなら幸いだ。

また何か不思議な体験があれば筆を執らせて頂くとしよう。

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