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義雪伝外伝 縁の下戦記  作者: 戦国さん
第二章 豪商と少年
6/7

餓鬼らしくない

あふう(●´ω`●)

最近寝ても寝ても寝たり無い気がします

鳥のさえずる音が聞こえる。

頬を撫でる風は若干塩の香がした。

(……ここは?)

左平が目を覚ますと、そこはどこかの屋敷の中だった。

体には柔らかく上質だとすぐわかる布団を掛けられている。

更によく見ると身体中の怪我が手当てされていた。

開けられている襖から見える庭は豪勢でここがとても裕福な家だと言うことがわかる。

自分は何故こんな所で手当てされ寝かされているのか?

左平は全くこの状況が理解できなかった。

「お、目ぇ覚ましやがったか。どうだ、体の調子は?どこか悪くはないか?」

左平がわけのわからない状況に困惑していると庭とは反対の襖を開けて、初老の立派な髭を生やした商人風の男が顔を覗かせた。

(誰じゃ、こ奴は?)

いきなりの見覚えの無い人物の登場に困惑する左平。とりあえず左平は目の前の男に何故自分かこんな所に寝かされているのか聞いてみる事にした。

「ん?お前覚えてないのか?ちっ、仕方ねえな」

粗暴な喋り方の割に男は色々と懇切丁寧に左平に経緯を話してくれた。

山で倒れていた事。

その時狼の群に食べられかけていた事。

そんな左平を見つけ助けた事。

そして所々傷だらけだったので手当てした後部屋に寝かせた事。

そして自分が博多の商人の島井宗室である事。

左平は本当に丁寧に教えて貰った。

そして左平は思い出したのだ。家族の事を。

(兄者…ちび…)

その表情はとても苦々しく、辛いものとなった。

それに今までお菓子やらお茶やらを用意しながら楽しげに語っていた宗室は眉間に皺を寄せる。

そして菓子を手に持ち左平の口に押し込んだ。

「もがっ!……んぐ。いきなり何をする!!」

「…気に食わねえんだよ。餓鬼が死人のような顔しやがって。餓鬼はもっと……こう、なんだ…その」

「表情豊かに素直にするもんだ、でしょ?旦那様」

宗室の後ろからもう一人妙齢の綺麗な女性がが現れた。

「そう!それだ。……てかお前いたのかよ」

「まぁ、宗室さんがまた珍妙な物を拾って来たって聞いたんで様子を…ね。その子が今回の拾い物ですか?」

女は左平を無遠慮な様子でつくづくと見た。

あまりにつくづくと見るため若干左平は畏縮する。

「おい、八千代。小僧がびびってるじゃねえか!」

「え?ああ、ごめんなさいね。別に悪気があって見ていたわけじゃないの。ただ、あなたがどんな子か気になって……気分を損なったなら謝るわ」

八千代と呼ばれた女性は申し訳無さそうに頭を下げる。

「…いえ、気にしないでください」

「ありがとう。私は八千代、よろしくね……えっと」

「左平です。…こちらこそよろしく」

「よろしくね、左平」

八千代は左平ににこやかに笑う。

(向日葵のように笑う人だ)

左平は八千代にそんな印象を抱いた。

「で、旦那様。この子も養うんですか?」

左平との挨拶を終えた八千代は宗室に問いかけた。

「そのつもりだ」

「……まぁ、今更一人二人増えた所で文句はありませんけど、犬や猫を拾うみたいにひょいひょい人を拾うのは如何なものかと」

八千代は呆れながら溜め息を漏らす。

「んなもん見つけたんだから仕方ねえだろ。何でも拾って利用するのが俺のやり方だしな!」

堂々と胸を張る宗室。

そのあまりにも勇ましい姿に更に深々と溜め息をつく八千代であった。

「あの…」

左平はそこに小さく二人に話しかけた。

「何だ?」

「何?」

「…せっかくのお誘いですがわしはここに住む気はありません」

(というか、もう生きる気も……)

「黙れ!」

「は?」

いきなりの言葉に固まる左平。

「お前がここに住むのは既に決まってる事なんだよ!!お前に拒否権は無いわかったか……さ、さ、左平太!」

「旦那様、太は余計です。まぁ、そう言う訳だから……大人しくここに住んじゃいなさい。いいわね」

「は、はぁ」

(…なんと強引な)

とにかく左平はひょんな事から強引な口の悪い商人、島井宗室の下で暮らす事となったのであった。


翌日、左平は宗室曰わく「俺の財産に会わせてやる」と、床から引っ張り出されて居間に放り込まれた。

そしてそこには大勢の、左平と同い年ぐらいの者から年上、赤ん坊まで様々な年齢の子供達が賑やかに食卓を囲んでいた。

そこには昨日会った八千代も座っている。

「おい!てめえら!!よく聞け。こいつの名前は………沙悟浄!!」

(わしは河童か?)

「旦那様、左平です。いい加減覚えてください」

すかさず八千代は口頭で、左平は心の中で突っ込んだ。

「お前の名前地味で覚えにくいんだよ!改名しろ、改名。例えば………毘沙門天三郎とかどうだ?」

「…」

左平はあからさまに嫌そうな顔をした。

「ささ、阿呆はほっといて自己紹介を始めましょうか」

「「「はーい」」」

八千代は阿呆な主に見切りをつけて無視する方向にしたらしい。

「おい!俺を無視するなぁ!!」

こうして左平は宗室の『財産』達と知り合ったのだった。

余談だが、宗室は最後まで無視の上に仲間外れにされた。

宗室さんがもうわけわからないただの馬鹿に(笑)

島井宗室のファンの方がいらっしゃったら本当にすいませんm(_ _)m

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