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義雪伝外伝 縁の下戦記  作者: 戦国さん
第一章 農村の少年
3/7

褒美の品は何が良い?

連続投稿です。

なかなか地味キャラと思ってた義貞くんですが、なかなかな頭脳キャラに(笑)

「ふむ、では左平よ。問答の褒美はどれにいたす?」

「……そうですね……ではこれをいただきます」

左平は目の前にある丈夫そうな布に手を伸ばす。

「なんじゃ、そんな物でよいのか?それもそれなりに良いものではあるがただの丈夫なだけの布じゃぞ?」

「はい、これで結構です。兄や、妹の服が解れたり、穴が開いたりと酷い有り様になってきていたので、手直しにこの布は最適ですから…」

別に欲しい物は他にもあった。

特にその中でも『本類』がそれにあたる。

左平は近所の寺の住職に多少の読み書きを教えて貰って本を読める様になってから、読書と言う物が非常に好きだった。

本さえあれば1日……いや、下手をすると一週間は没頭できるだろう。

しかし左平はその大好きな『本』を手に取らなかった。

その理由は父弥太郎にあった。

弥太郎は常日頃から慢性的に酒を飲む。

しかし、一介の百姓である弥太郎に毎日酒を飲む余裕があるわけもなく、日々銭に困る毎日である。

それでも酒が飲みたい弥太郎は家にあるものを手当たり次第売り、銭に変えてしまっている。

左平は住職に本を一冊貰った事があるが、それも弥太郎の酒代に消えてしまった。

そんな事もあってか、下手に物を選ぶと酒代となってしまう事を左平は知っていた。

と、考えると目立ちすぎず尚且つ実用的な物がいい、そう左平は考えたのだ。

「ほぅ、欲がないのぅ。では持って行くがええ」

「ありがとうございます。兄上、銀次郎、もうこんな時間だ。約束通り仕事を手伝ってもらうぞ……でないと間に合わん」

「おう!任せておけ!」

「えーーー、だりぃな………ま、約束だから仕方ねぇか」

左平は老人に一礼すると、布を懐にしまい志郎と銀次郎を連れてその場を後にした。

周りに集まっていた子供達も左平達が帰ると興味がなくなったのか皆その場を去る。

そして寺には忠利老人と老人と共に常に傍らにいた少女のみとなった。

「……今回はなかなかの収穫だったのぅ。菊奈よ、お主はどう思う?」

今まで一言も喋らなかった菊奈と呼ばれた少女が口を開く。

「……武勇面では兄の方と銀次郎と呼ばれていた者がかなりの素質が有るとお見受けします。知の面では弟にかなりの素質があると思います」

「しかし兄の方と銀次郎には手を加える必要は無さそうじゃのぅ。あれは既になかなかの者が見事に長所を生かして伸ばしておる。」

「……ならば」

「うむ。弟の方……左平とか言うたかの?奴に梃入れをするといたすかのぅ。とりあえず…かの者の身辺……今すぐ調べあげぃ」

「…御意」

「さて………どうするかのぅ」

傾きかけた日を見ながら老人は一人満足げに微笑んだ。

場所は変わって左平の家の畑。

三人は忠利老人との問答に時間を使ってしまった為、急いで今日の分の畑仕事をしていた。

「…ぜぇ、…ぜぇ、…ぜぇ。もう少しだ、もう少しで全部終わる!」

「なんとか……日が暮れるまでには終わらすんじゃ!!」

物凄い勢いで畑を耕していく三人。

みるみるうちに仕事は終わっていった。

それでも作業が終わったのは辺りが真っ暗になりかけたあたりであったが……。

「ふぅ……やっと……終わった。志郎の奴……さっさと帰りやがって」

「……仕方なかろう。家には幼いチビと父上しかおらん…誰が飯を作るんじゃ…」

畑の隣に大の字で寝る二人。

因みに兄志郎は晩御飯を作るために先に帰った。

父弥太郎は料理を作ろうとはせず、千穂はまだ小さい。

左平か志郎しか料理が作れないのだ。

そして畑仕事に関しては志郎より左平が詳しいし効率的に動けるため、普段サボってあまり畑仕事をしない銀次郎を補佐しながら動くには左平の方がいいと二人は考えた。

志郎を先に帰す事に少し不安もあったが、志郎と銀次郎では日が暮れて終わるのは夜中になってしまうし、妥当な考えといえるだろう。

今日ばかりは喧嘩はしないで欲しいと願う左平であった。

その願いも虚しく左平が帰った時、父と兄は取っ組み合いの喧嘩をしてたわけだが…。

銀次郎と別れ家に帰った左平はいつものように父と兄の喧嘩に巻き込まれないように妹を避難させ、一人こそこそ遅い夕飯を食べるのであった。


そして、その日の夜。

皆が寝静まった時に、左平の下に一人の来客が訪れた。

「…左平殿…左平殿……」

「…ん?」

左平は自分を呼ぶ声に目を覚ます。

寝ぼけ眼をこすりながら声のした方に目を向けると、そこには昼間の老人と共にいた少女が立っていた。

相変わらずな無表情な顔で左平を見つめている。

一瞬ぎょっとした左平だがとりあえず落ち着き少女に尋ねた。

隣に兄と妹が寝てるためかなり小声で。

「…あんたは確か昼間の……こんな夜更けになんの用じゃ?」

「…来て欲しい……父上があなたに話したいことがある」

「父上?(ああ、忠利老人の事か)こんな夜更けにか?」

「……(コク)」

怪しい…この上なく怪しい、左平は心底そう思った。

昼間の時も普通に怪しかったが、こんな夜更けにこそこそ訪ねてくる時点で更に怪しさが

増す。

「……悪いが遠慮したいな」

「何故?」

「わからんか?どう見ても怪しいではないか…色々と」

「?」

少女は全く意味がわからないと言わんばかりに首を傾げた。

「いや…だからな、こんな夜遅くに人目を忍んでこそこそと会いに来る時点で怪しいじゃろ?それにわしにあんたについて行く理由も利点もないしな」

「…なるほど……でもあなたに来てほしい」

左平に断られても尚、彼女は無表情の顔を少しも崩さずそのまま左平をさらに見つめつづける。

(……はぁこの性格は自分の主張が通らなければどんなに時間が経とうが絶対に諦めないぞ)

左平は自分の周りにいる同じ性格の二人の人物を思い出し頭を抱える。

さて、どうやって説得したものかと。

そうこう左平が考えていると少女の奥の暗闇から子供の声が聞こえて来た。

「「も~、めんどいなぁー。菊姉、だだこねるならサッと拉致っちゃおうよ~」」

「!?」

「……仕方ない」

「ちょ、仕方な………(バタンッ)」

問答無用で拉致するという言葉に反論しようとした左平だが、言葉の途中でうなじに強烈な衝撃受けそのまま左平は意識を失った。


因みに横で寝ている妹と兄はこれだけ騒いだにも関わらず爆睡していたという。

頭脳キャラへと昇華(笑)した義貞とは一転義雪くんはなかなかの馬鹿キャラに(笑)

まぁ、幼いころの彼はこんなんですよ

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