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5DX

作者: 結城 からく
掲載日:2026/07/23

 今日は映画館に来た。

 話題のホラー映画を観るためである。

 噂によると「圧倒的なリアリティー」らしい。


 正直、大げさな評判だとは思っている。

 そういった言葉で集客を試みているのだろう。

 だけどホラー映画は好きなので、私は公開初日にチェックすることにした。


 話題作ということで、席はほとんど埋まっていた。

 観客の年齢層はバラバラだ。

 私は中央の少し後ろ寄りの席に着く。

 ここが最も映像の迫力が出ることを私は知っていた。


 予告の後、いよいよ本編が始まった。

 内容は不死身の殺人鬼が若者のグループを襲うという王道のストーリーである。

 もはやテンプレートとも言える展開だが、みんなこれが好きなのだ。


 異変を感じたのは、最初に犠牲者が出た時だった。

 お調子者のキャラが殺人鬼に胸を刺された瞬間、右隣の観客が呻いた。

 見れば、その観客は口から血を吐いてぐったりとしていた。

 白いシャツが真っ赤に染まり、胸のあたりからどくどくと血が溢れ出している。


 殺人鬼が少女の首を捩じ切った時、左隣の観客の頭部が転がり落ちた。

 噴水のように上がった鮮血が私を濡らす。


 殺人鬼がチェーンソーでカップルを派手に解体した。

 室内のあちこちで断末魔が上がり、血と肉片が飛び散って座席を汚す。


 観客の誰かが怯えて席を立ち、外へ逃げようとした。

 しかしその瞬間、観客はミンチになって即死した。


 どうやら劇中のダメージが観客に飛んできているらしい。

 なるほど、これが「圧倒的なリアリティー」というわけか。

 納得する私の周囲で、観客達はパニックに陥っていた。


 およそ九十分の殺戮を経て、映画はエンドロールに移った。

 私はなんとか生き残っていた。

 血みどろの室内で、他に生きている者はいない。

 観客はみんな死んでしまった。


 とにかく、これでやっと外に出られる。

 安堵する私をよそに、スクリーンに字幕付きの一文が表示された。


『ここからは特典映像! 本編でカットした死亡シーン100連発をお送りします! 最期までぜひお楽しみください!』


 ホラー映画ってクソだな。

 脳が沸騰して爆発する感覚を味わいながら、私はそう思った。

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