5DX
今日は映画館に来た。
話題のホラー映画を観るためである。
噂によると「圧倒的なリアリティー」らしい。
正直、大げさな評判だとは思っている。
そういった言葉で集客を試みているのだろう。
だけどホラー映画は好きなので、私は公開初日にチェックすることにした。
話題作ということで、席はほとんど埋まっていた。
観客の年齢層はバラバラだ。
私は中央の少し後ろ寄りの席に着く。
ここが最も映像の迫力が出ることを私は知っていた。
予告の後、いよいよ本編が始まった。
内容は不死身の殺人鬼が若者のグループを襲うという王道のストーリーである。
もはやテンプレートとも言える展開だが、みんなこれが好きなのだ。
異変を感じたのは、最初に犠牲者が出た時だった。
お調子者のキャラが殺人鬼に胸を刺された瞬間、右隣の観客が呻いた。
見れば、その観客は口から血を吐いてぐったりとしていた。
白いシャツが真っ赤に染まり、胸のあたりからどくどくと血が溢れ出している。
殺人鬼が少女の首を捩じ切った時、左隣の観客の頭部が転がり落ちた。
噴水のように上がった鮮血が私を濡らす。
殺人鬼がチェーンソーでカップルを派手に解体した。
室内のあちこちで断末魔が上がり、血と肉片が飛び散って座席を汚す。
観客の誰かが怯えて席を立ち、外へ逃げようとした。
しかしその瞬間、観客はミンチになって即死した。
どうやら劇中のダメージが観客に飛んできているらしい。
なるほど、これが「圧倒的なリアリティー」というわけか。
納得する私の周囲で、観客達はパニックに陥っていた。
およそ九十分の殺戮を経て、映画はエンドロールに移った。
私はなんとか生き残っていた。
血みどろの室内で、他に生きている者はいない。
観客はみんな死んでしまった。
とにかく、これでやっと外に出られる。
安堵する私をよそに、スクリーンに字幕付きの一文が表示された。
『ここからは特典映像! 本編でカットした死亡シーン100連発をお送りします! 最期までぜひお楽しみください!』
ホラー映画ってクソだな。
脳が沸騰して爆発する感覚を味わいながら、私はそう思った。




