巨大な湖
湖畔の国に来てから数日。
最初の村を出発し、次の街へとやってきていた花春達。
そんな巨大な湖を見て思うのは、ここでお花見とか出来ないかなという事。
まあ花は咲いていないので、お花見という言葉はあれだが。
「本当に大きい湖だねぇ、この国の湖は」
「この大きさだと、本当に景色も壮観なものだな」
「でも大雨とかが降ったら大変そうですよね」
それだけの巨大な湖があるというのがこの国の観光資源でもあるという。
この景色を見るために他国からも観光客が来るぐらいなのだとか。
「こういう湖を見てると、湖畔でお弁当とか食べたくなるよね」
「花見という事か?この国にある花というと、金木犀や秋桜なんかになるが」
「金木犀とか秋桜、花見のイメージとは違うかな」
「でも依頼で湖近辺で精霊の目撃情報があるっていう事でしたよね?」
湖に来ていたのは、この辺りで精霊を見たという目撃情報から。
精霊はそもそも滅多に人前に姿を見せないとも言われる。
それに加えて普通の人にはその姿も見えないらしいが。
「精霊なンて本当にいるのかな」
「見たという事は、依頼人は精霊が見えるという事なのだろう」
「精霊、私も見た事はないです」
ペリスも精霊は見た事はないらしい。
依頼は精霊がいるという事を確かめてきて欲しいという事のようだ。
ちなみに精霊は音楽を好むらしく、依頼人から楽器を借りてきていた。
「あ、何かいない?あれが精霊かな?」
「だと思います、本当に見つかりましたね」
「証拠を持ち帰ってくれという事だが、とりあえず音楽を奏でてみるか?」
「なら私がやってみます、見ていてください」
ペリスが依頼人から借りてきていたフルートを吹き始める。
その音色に精霊が少しずつこちらに近づいてくる。
証拠を持ち帰って欲しいというのは、精霊に接触しろという事なのだろう。
近づいてきた精霊に花春が接触を試みる。
すると精霊は何も言わずに石をくれた、これが精霊の証拠という事なのか。
「これが精霊の証拠っていう事なのかな?」
「たぶん精霊石っていうものだと思います、大きいのと小さいのがありますね」
「とりあえずこれを納品すればクエストは達成という事になるか」
帰ろうとした時何やら声が聞こえる。
どこから声がするのか探してみると、その声は湖からだった。
その声の主はというと。
「あなた達!何をしているの!」
「えっと、人魚…なのかな?」
「人魚、違うわ、イールよ」
「イールってうなぎ…まあいいのかな?」
湖から顔を覗かせた彼女は人魚ではなくイールという種族らしい。
イールというのはうなぎの事であり、この湖はつまり淡水という事になる。
なおうなぎ自体は海でも川でも生息可能な生き物である。
彼女の姿は人魚のように人の上半身とうなぎの下半身になっているようで。
「あなた達、ここで何をしていたのかしら」
「精霊を探しに来ていたのだが」
「人間なのに精霊が見えるなんて凄いわね、その精霊石は証拠っぽいし」
「イールのお姉さンはこの湖に住む種族とかなの?」
「ええ、そうよ、ただ最近は湖が少し汚れてきてるのよね」
「湖が汚れてきてる、環境汚染かな」
そんなイールが一つ頼まれてくれないかという事を言ってきた。
話だけは聞いてみる事にした。
「あなた達に一つ頼みたいんだけど、いいかしら」
「出来る範囲でなら、何をすればいいんですか」
「アクアドロップっていうものを持ってきてくれない?水を清らかにする道具なの」
「アクアドロップ、聞いた事がないな、どこで手に入るンだろう」
「なら私が作ります、錬金術なら作れると思いますから」
「錬金術ってそういう事も出来るのか、なら任せてみようかな」
そのアクアドロップを作るための材料集めから始める事に。
幸いこの湖畔の森で揃うようだ、なので手早く集めて近くの広場にテントを張る。
そのテントの設備を使いアクアドロップを作る事に成功したようだ。
「持ってきました、これでいいんですか?」
「仕事が早いわね、でも助かったわ、ありがとう」
「うン、でも湖が汚れてるかぁ」
「恐らく観光客の不届き者でもいるのだろう、この国の人間が湖を汚すとは思えん」
「でもありがとう、報酬はこんなものしかあげられないけど」
イールのお姉さんがくれたのは不思議な形の貝だった。
なんに使うのかというと。
「この貝はなンなの?イールのお姉さンがくれるからには特別なものなンだよね?」
「この貝を持っていると主と話が出来るようになるの、湖の主ね」
「湖の主、今はいないのか?」
「主は定期的に海に出るのよ、その海で魚の魔物を狩るのがお約束なの」
「なるほど、とりあえずありがとうございます」
「気が向いたら遊びに来ていいわよ、アクアドロップありがとう」
とりあえず少し時間は取ってしまったが本来の依頼の精霊の証拠は確保した。
そのまま街に戻り、クエストの納品として精霊石を渡す。
次は湖畔の国の首都に向かう事になるが、その前にサミヨ達が帰ってくるのを待つ事に。
「ふむ、湖が汚れている原因とはこれですか」
「ゴミが散乱していますわね、マナーの悪い人が捨てていったという事のようですわ」
「つまり他国の人が観光で来て、ゴミを放置していったと」
サミヨ達は湖の近くでゴミ拾いをしていた。
清掃活動の手伝いがクエストのようである。
フリージアもマナーの悪い人の事を嘆かわしいと思っているようで。
「しかしこの国は観光地としても知られているからこそ、他国の人の行いが目立つんですね」
「観光地という事は、マナーの悪い人も一定数入ってくるという事ですものね」
「それが観光地の宿命ですよ、少なくともその国の人なら分かっているでしょうし」
ゴミを回収しそのゴミを処理施設に引き渡すまでがクエストだ。
しかしやはり観光地というのはそういうマナーの悪い人が入ってくるもの。
現地の人からしたらいい迷惑なのだろうか。
「クエストは無事に終わりましたね」
「花春さん達と合流しますか、戻ってきている頃でしょうし」
「そうですわね、首都に向かうのは明日でいいか確認しないとですわ」
そのまま花春達と合流しテントで今後についての相談をする。
湖畔の国の巨大な湖は海に繋がっているようで、この国から南西に行くと海沿いの国らしい。
首都があるのはここから南の方角になるが。
「さて、まずは首都に向かうのは明日でよろしくて?」
「うン、それでいいよ、ここからなら首都まで歩いていけるよね?」
「ええ、歩いて数時間、馬車ならその半分ぐらいですわね」
「ならばまずは首都に向かい、そこから次に向かう方角も決めるか」
「そういえばここの湖は海に繋がってるので、南西にある海沿いの国に行きませんか?」
ペリスの提案もありまずは首都へと向かった後、そのまま海沿いの国に向かう事で合意する。
とりあえず食事を済ませテントで各自休憩をする事に。
「そうだ、ペリスならこれを使えたりしないかな?」
「これって錬金術の参考書…いつこれを?」
「街のお店を覗いたら売ってたから、買っておいたンだけど」
「ありがとうございます、これでいろいろ捗りそうですね」
この世界の魔物はお金を落とさないので、金策は基本的にドロップアイテムの換金で行う。
以前の報酬の10万カルドもだいぶ減ってきたので、少し金策した方がいいかと考える。
錬金術はそんな金策にも使えるスキルがあるらしいが。
「そういえば錬金術っていうからには金が作れるのかな?」
「錬金術士専用のクリエイトスキルを使えば恐らくは」
「錬金術士以外の人が使う錬金って宝石とかしか作れないンだったっけ」
錬金自体はマジックユーザー系統と魔法がメインのクラスなら誰でも出来る。
ただ本格的な錬金を使うには錬金術士でなくてはいけないという。
つまり金策は錬金術士でしか出来ないという事になる。
「ペリスの錬金術士って戦闘スキル以外にも専用のクリエイトスキルとかあるンだね」
「レアクラスは基本的に何かしらのクラス固有スキルを持っていますから」
「錬金術士は本格的な錬金って事なンだね」
「はい、レアクラスは様々あるのでこの先もそんな人に出会えるかもですね」
「錬金、いろいろ作れるンだなぁ」
そんなペリスが使える本格的な錬金。
そのクリエイトスキルは金策にも使えるという事らしいが。
なお専用のクリエイトスキルで作れるものは本や口伝で覚えるものらしい。
レアクラスの固有スキルはスキルポイントでは覚えられないものが多いのだという。
とりあえず目的地は決まり、その日の夜は早々に休む事にした。




