新たな世界へレッツラゴー
日本にあるとある地方の公立校に一人のインドア趣味なギャルがいた。
彼女の名は秋上花春、いつものように家庭科の授業で料理を作っていた。
そんな中異臭を感じ、その臭いがガスによるものだと即座に気づく。
だが先生に伝えようとしたその直後にガス爆発が起きる。
爆発の規模は大きく、花春は至近距離で爆発に巻き込まれてしまう。
そして病院に運ばれたものの、帰らぬ人となってしまう。
他にも巻き込まれた生徒は多数いたが、その生徒達はなんとか助かっとたという。
やはり至近距離で爆発に巻き込まれた事が花春の明確な死因になったとの事のようだ。
「あれ?あたし死ンだはず…まさか天国?それとも地獄かな?ってか、体透けてンじゃン!」
するとそこに声が聞こえてくる。
どうやら花春の頭の中に直接語りかけているようだ。
「聞こえますか?」
「今度はなンか頭ン中に声がするンだけど、やっぱり冥府なの?サンズリバー渡っちゃったの?」
「サンズリバーって、まあ確かに渡ってますけどね」
「マジか、でも成仏してないって事でいいの?」
「えっと、本来はあなたも助かるはずだったんですが…思わぬ形で亡くなられて…」
頭の中に聞こえてきた声によると、死んだのは確定らしい。
その声の主が何者なのか聞いてみた。
「えっと、頭の中に声を送ってる人は…お姉さンでいいのかな?」
「一応女神です、信じてくれなくてもいいですけど」
「女神様ねぇ、でもあたしがこうしてよく分からン状態なのはなンでなの?」
「一応お詫びをしようと思いまして、生き返らせる以外なら希望を聞きますから」
「生き返らせる以外かぁ、なら異世界転生したい!ラノベとかネット小説でよくあるやつ!」
花春は科学と料理が好きではあるが、他にもネット小説のスコップなんかもしていた。
気に入ったネット小説をSNSで紹介なんかもしていたらしい。
なので異世界転生の知識は割とある様子。
そこで生き返らせる以外なら転生したいという事のようだ。
「異世界転生も生き返らせるに含まれてるなら、素直に成仏させてくれていいからさ」
「分かりました、異世界転生についても世界や異世界での職業の希望があれば聞きますよ」
「うーん、まずは他種族な世界かな、職業は青魔道士とか薬師がやりたい」
「他種族な世界、青魔道士や薬師…他にはありますか」
「あとはファンタジーな世界がいいな、スマホはなくていいけど機械はある世界がいい」
その後も花春は転生する世界の希望や異世界で就きたい職業について希望を語っていく。
現代レベルの文明はないけど、機械はある世界、つまり古代文明に機械がある的な世界か。
ぶっちゃけスマホやガラケーレベルでも通信機器があると足枷になりそうだと考えたらしい。
要するにネットを完全に遮断した上で機械のある世界を希望したという事のようだ。
「大体は分かりました、限界まで希望は聞きますから、まだあれば言っていただいてどうぞ」
「うーん、あとは貴族とかがなるべく腐ってなくて、勇者とかも関心が薄い感じがいいな」
「つまり世界に勇者はいても、民衆がそれへの関心が薄い世界ですね」
「そンな感じ、あと帝国と宗教と大臣が悪者じゃない世界ね」
「あなた、本当に日本人ですね、分かりました、でも一個人にまでは干渉出来ませんからね?」
つまりそれらが悪者でこそないものの、その組織の中に悪い事をしている人はいる世界である。
組織としては健全で、悪事を働いた者はきちんと処罰される事。
自浄作用が組織に備わっている事を希望するという。
ただし悪や差別などは存在していてもいいという事のようだ。
「あとあたしだけ相手のステータスが見える能力みたいなのが欲しい!」
「相手のステータスが見える、では青魔道士の技能として相手のステータスを見られるようにします」
「分かった、それでいいよ」
「青魔道士の技能なので、あなた以外の青魔道士にも使える事はお忘れなく」
「分かった、クラスの特殊技能的な感じならそれでいいよ」
相手のステータスが見える能力。
青魔道士の持つ専用の技能として用意してくれるという事になったようだ。
なお花春にはサービスとして習得可能な青魔法も一緒に見えるようにしてくれるという。
つまり魔物のステータスを見ると、習得可能な青魔法も同時に見えるとの事らしい。
「それと、本来は記憶を持っての異世界転生は禁止なのですが、今回は本当に特例ですよ」
「つまり今回は想定外の死だったから、特例で記憶を持って転生させてくれるの?」
「はい、完全な想定外なので、あらゆる特例を認めると上から言われました」
「なら記憶…は一部でいいよ、科学と料理の知識、あとは娯楽の知識だけは持っていきたい」
「分かりました、ではそれらの記憶のみを持ち越しとしますね」
花春曰く転生前の記憶は邪魔になりそうだからとの事らしい。
ただ科学と料理と娯楽の知識だけは持っていきたいという。
要するに自分の好きな事の知識だけでいいよという事のようだ。
日本で暮らしていた時の記憶なんかは持ち越さないと決めた様子。
ちなみに娯楽の知識には現世の国の名前や人間の名前が含まれているらしい。
「大体はそンな感じかなぁ、あ、これ大切なンだけど、科学と料理が出来る事をお願い」
「科学と料理が出来る、つまり食文化が豊かで、最低限の科学がある事ですね」
「うン、もちろン科学は範囲が広いから、よほど高度なものとまでは言わないからさ」
「分かりました、では注文はまだありますか?」
「あ、最後に、武器は刃物を使いたい!出来れば刀がいい!」
「刃物、刀ですね、では以上でよろしいですね?」
花春その注文でいいと答える。
自称女神はその注文を全て叶えた上で異世界へと転生させる魔法を唱え始める。
「あと異世界に着いたらまず最初に何すればいいかだけ教えて!」
「まずは冒険者クランで冒険者登録してください、あと餞別として最低限のお金は持たせますね」
「分かった、ありがとね!女神のお姉さン!」
「いえ、お詫びですから、それではよきセカンドライフを、行ってらっしゃいませ」
「よっしゃ、燃えてきたー!」
そうして花春は異世界へと転生した。
希望を全部聞いてくれた女神様も、思わぬ形で亡くなった事へのお詫びなのだという。
つまりはここで死ぬ宿命ではないと神は言っているという事か。
花春は異世界で花を咲かせられるのだろうか。