魔の国の民
荒野の国の首都に着いてからの夜更け。
噂に聞いている珍しい魔物というものを花春達も探し始める。
AAランクパーティーがそれを探しているという話と昼間に見た後ろ姿。
何かが起きるような気がしていた。
「さて、夜になったンだけど」
「その珍しい魔物というのはこの辺りでの目撃報告がありますね」
「私がサーチをかけてみます、行きましょう」
サミヨが周囲にサーチをかけつつその魔物を探す。
すると何かしらの反応があったようで。
「反応があります、向こうからです」
「…声も聞こえる、行ってみよう」
その反応の先にいたのは四人の男女と下半身が蜘蛛の女性。
四人組はそれに対して武器を構えていた。
「さーて、覚悟してくれよな」
「助けて…助けて!」
「この時間なら助けはまず来ないわよ、大人しくあたし達の報酬になってもらうわ」
「嫌…来ないでッ!」
するとそこにまた一つの声が響く。
割って入ったのは花山だった。
「待て!ビクター!」
「あなたは…助けて…くれるの?」
「お前、花山か?生きてたのか!」
「ビクター、ユニー、マーベ、キンレー、お前達はこんなところで何をしている?」
「決まってるだろ、そこの魔物を討伐しに来たんだ」
「…こいつは魔物などではない、魔の国の住民だぞ」
リーダーと思われるビクターという男。
そしてそのパーティーメンバーの三人。
そいつらは魔の国の住民を魔物と思い討伐しようとしている様子。
しかし魔の国というのは他国の人間からしたら邪悪の象徴として教わっている。
「魔の国の民?ならなおさら討伐しないとな」
「そうね、邪悪な種は一つでも多く潰さなきゃ」
「…本気で言っているのか?外見こそ違えど、同じ血の流れる亜人種なのだぞ!」
「魔の国の住民の味方をするなんて焼きが回ったのか、花山!」
「死んだと思っていたのに生きていたのも、魔の国に洗脳でもされたんですか?おー、怖い」
どうやら花山は魔の国と何かしらあったという事は窺い知れる。
しかし四人はそれに対して聞く耳を持たず、じわりと近づいていく。
花山の実力でもAAパーティー四人を相手にするのは流石にきついだろう。
「…そうか、かつての仲間に刃を向けるのは気が引けるが、やるしかないようだ」
「てめぇが強いのは散々知ってるが、四人相手に一人でやるつもりか?」
「一人じゃないよ!」
「誰だ!」
「花山!終わったら話は聞かせてもらうからね!」
そこに花春達が乱入してくる。
花山もそれに驚いたようで、少し呆気にとられている。
「なんだてめぇらは!花山の仲間か!」
「ちょっとだけ仕事を手伝ってもらった先輩だよ」
「花春…お前、なぜここに…」
「マスターだけではありませんよ」
「はぁ、あなた達AAランクのパーティーに喧嘩を売るとか正気ですの?」
そこにイーリアにペリスにフリージアも追いつく。
相手はAAランク、こっちはフリージアのBが最大だ。
実力は言うまでもなくの相手に挑みかかるのは当然無謀というもの。
「花山、久しぶり、でも今は話すより先にあいつらと戦うよ」
「お前達の強さで勝てる相手でないぞ」
「相手より弱いなら小細工の限りを尽くせばよろしいだけですわ」
「ふっ、ならばやるぞ!」
「あんた達弱そうねぇ、実力の差というものを教えてあげなきゃ」
そのままAAランクパーティー四人との戦いが始まる。
花春には相手のステータスが見えるという能力がある。
それで見破った結果どうやら思わぬものが見えてきたようで。
「私の踊りを受けてみなさいな!」
「あいつはデバッファーだ!最優先で潰せ!」
「任せときな!」
「ふふン、なら…レベル5マーダー!」
「えっ?」
どうやら相手四人のうち三人がレベルは5の倍数だったというとんでもないオチ。
リーダーのベクター、ヒーラーのユニー、戦士のキンレーが一気に沈む。
そんな相手にレベル5マーダーが直撃し、一撃で戦闘不能に陥った。
「何…なんなの!?なんで三人が一撃で…あんた、何したのよ!」
「ウィッチのあなた一人なら、格上でも勝てそうですわね」
「くっ、そんな事…させないわよ!」
「ついでにこれもあげるね、えいっ」
「きゃっ!?何これ…薬?薬なんてぶっかけてなんのつもり!」
花春がウィッチのマーベにかけたのは、薬師のスキルである調合した薬。
混ぜたものは魔法薬と猛毒薬。
それから出来上がるものはというと。
「…この特大魔法で消し飛べ!…えっ?魔法が発動しない?なんでよ!」
「あンたに使ったのはヴェノムグリーン、相手の魔法力を奪う薬だよ!」
「は?まさか…あたしの魔法力を薬で枯渇させたっていうの!?」
「さて、あとはグヘヘさせていただきますね」
「えっと、すみません」
「ちょっ、まっ…イヤあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま残ったウィッチのマーベをボコボコにしてノックアウトする。
格上パーティーだろうとこうした戦術の前には無力という証明。
その上で改めて。
「大丈夫?」
「あ、はい…大丈夫です」
「そうか、無事で安心したぞ」
「あの、なんで私が魔の国の民だと分かったんですか?それにかばってまでくれて…」
「私自身が魔の国のおかげで生き延びたからな、少なくとも魔の国が悪とは思えないだけだ」
「そう…だったんですか」
「さて、ここから帰れる?国境まで送るぐらいは出来るけど」
「大丈夫です、一人で帰れます、ありがとうございました」
蜘蛛女と思われる彼女はそのまま帰っていった。
その上で改めて花山から話を聞く事に。
「さて、話を聞こうかな」
「ああ、あいつらは私がかつて参加していたパーティーなんだ」
「私も名前ぐらいは存じていますわ、ですが花山殿は行方不明だとも」
「…これを見てくれ」
花山が服の下の長手袋を外す。
そこにあったのは機械製の義手だった。
瀕死の重傷を負った花山は魔の国の科学者に拾われ、そこでこの処置の結果助かったとも。
「驚きましたわね、機械の義手とは」
「腕だけではない、足もだ」
「両手両足が魔の国製の義肢ですか、こんな高度な技術があるとは驚きました」
「魔の国は高度な文明を持つ文明国だ、それに少なくとも争いを好む奴らでもない」
「つまり他国が教えている魔の国像は間違っている、という事ですか」
ペリスもその事実には驚きを隠せない様子。
それでも魔の国の中に入った事のある花山の言う事が嘘ではないとも思った。
「でも魔の国かぁ、ますます行ってみたくなったンだけど」
「国境こそあれど、国交を持つ国はほぼないからな、簡単に入国は出来ないだろう」
「でも私は魔の国の事を知りたくなりました、こんな事を言ったら怒られそうですけど」
「…なら私もお前達の仲間に加えてもらえないか?もちろん断ってもいい」
花山が仲間に加えて欲しいと申し出てきた。
戦力としては申し分ない事は確かだろう。
当然拒否する理由もなく。
「もちろン歓迎するよ、よろしくね、花山」
「ありがとう、感謝する」
「あの、それより花山さん、あなたの能力の高さが気になるんですが…」
花山のクラスはファイター系統の侍だ。
しかしその能力の高さはクラスやレベルだけでは説明がつかない。
その理由も話してくれた。
「私はクラウンだからな、強いのは当然だろう」
「クラウン!?あの達人の到達点と呼ばれる…クラウンとはどうしたらなれますの!」
「クランにレベルリセットというサービスがあったのは気づいているか?」
「はい、でもレベルを下げるなんてなんのためにあるのかと思っています」
「クラウンはレベルリセットからの成長を繰り返した結果だ、シンプルにそれだけなんだ」
花山曰くクラウンとはクランのレベルリセットを繰り返した結果という。
レベルを一度に大きく下げるほどにステータスの数値に大きな補正が入る。
その補正値が50になった時にクラウンになるのだと。
「そんなシンプルな事だったんですか、クラウンって」
「だがそれは紛れもない事実なんだ」
「レベルリセットにそんな理由があったとは…」
とりあえず花山からの話は一通り聞き、正式に仲間になった。
そして夜が明ける。
「夜明けだね、行こう、またランクアップとかを目指さなきゃ」
「花山さんはいい先輩になりそうですね」
そうして真夜中の騒動は一段落となった。
戦闘不能になった四人は戦闘不能回復薬を与えた上でそのままにしておいた。
そして改めて荒野の国の首都で少しクエストなどを見ていく事となる。
次に行く国の事なども考える事にした。




