13 運命の子
運命の子
たとえそれが偽物の光りだったとしても、私にはその光りが必要だった。(その光りがなければ、真っ暗闇の孤独な夜の中で、帰り道に迷って迷子になってしまうから)
男の子はゆっくりと(まだ寝不足で、朝起きたときみたいに)あたまを押さえながら、体を起こして、ぼんやりとした顔で、不思議なぐるぐるの瞳で初めて見る世界を見渡しました。
それから、太っちょの白い天使猫の三日月を見て、十六夜を見て、そして白ふくろうを見ました。
男の子と目と目があったときに、三日月はじっと見つめ返して、十六夜はどきっとした顔をして、白ふくろうはへんてこなお面をかぶったままで、その顔を恥ずかしそうにして両手で覆うようにしました。
「ここは、どこ?」
と男の子は言いました。
その声は、とても美しい声でした。
「初めまして。私は十六夜。風花十六夜って言います。天使です」とにっこりと笑って十六夜は言いました。
「十六夜。天使?」とぼんやりした顔で男の子は言いました。
「はい。天使です」と言って、十六夜は自分の背中にある大きな二つの白い翼をばさっと羽ばたかせました。
美しい白い羽根が空中にいくつか舞っています。
その白い羽根の一枚をそっと男の子は手で捕まえました。
「あっ」と恥ずかしそうに顔を赤くして十六夜は言いました。
男の子はそんな十六夜を見て、「あ、ごめん。もしかして、触ったりしたらいけなかった?」と言いました。
「いえ。別に、大丈夫ですよ」と真っ赤な顔のままで十六夜は強がって言いました。
「えっと自己紹介を続けますね。私の背中の後ろにこそこそと隠れているのが白ふくろう。本当の名前は白木花蜂蜜って言います。私と同じ天使です」と自分の背中に隠れている白ふくろうを男の子に見せるように動いて十六夜は言いました。
「十六夜さん! お名前! 私の本当のお名前は秘密です!!」と慌てた様子で、十六夜を見て白ふくろうは言いました。
「ふふ。わかってる。心配しないで。えっと、このらくがきの描いてあるへんてこなお面をつけているときは、蜂蜜っていう本当のお名前じゃなくて、白ふくろうっていうお名前で呼んであげてください」と十六夜は男の子ににっこりと笑って言いました。
白ふくろうは珍しく少し怒った様子で十六夜の背中の後ろにまた隠れてしまいました。
「よ、よろしくお願いします」という姿の見えない、小さな白ふくろうの声だけが、男の子の小さな耳に聞こえてきました。