11 人狼 じんろう 初めての恋。
人狼 じんろう
初めての恋。
それから、天使として、空の中に落っこちてきた小さな影をしっかりと捕まえて、ゆっくりと、十六夜は白ふくろうのいる空中庭園に降りてきました。
その両手にはしっかりと一人の子供を抱きしめていました。
その人間の子供は、……、どうやら男の子のようでした。
きらきらと輝くさらさらの黒髪の整った顔をした、小さな男の子。
年齢は、おそらく十六夜や白ふくろうと同じ、十二歳くらいの男の子に見えました。(身長や体重も、同じくらいのようでした)
でも、服は十六夜や白ふくろうとは反対の色でした。
男の子の着ている服は夜のように、全部が真っ黒でした。
フードのついている大きめの黒のパーカーと、大きめの黒のハーフパンツ。黒い靴。
男の子は、パーカーのフードを(まるで顔を隠すようにして)かぶったままにしていました。
……、(そんな、ずっと夜の中にいるみたいな)ずっと、眠ったように目をつぶっている、ちょっとかっこいい男の子。
よくみると男の子の右目の下には小さなほくろ(泣きほくろ)がありました。
「なかなか、かっこいい男の子だね。蜂蜜」とじっと目をつぶって横になっている男の子のことを夢中になって見つめていた白ふくろうを見て、(いたずらっ子の顔で)とっても楽しそうに、にっこりと笑って十六夜は言いました。
「え?」と言って、白ふくろうは十六夜を見ました。
にやにやしている十六夜を見て、白ふくろうは、はっとすると、(十六夜の言葉の意味に、あるいは自分の気持ちに気が付いて)その真っ白な美しい顔をぽっと真っ赤な色に染めました。
自分がいつの間にか、空の中に落っこちてきた男の子に見惚れていたことにようやく気が付いたのです。
白ふくろうを見てくすくすと笑っている風花十六夜はいつものように白ふくろうと同じ真っ白なスカートの天使の服を着ています。
足元は、白い靴下と白い靴。
その美しい長い黒髪を黒いりぼんでしばってツインテールの髪にしています。その黒髪が、空中庭園に吹く優しい風に、咲く色とりどりの花と一緒になって小さく揺れていました。
背中の白い天使の翼が、とても綺麗に太陽の光りに照らされて、透き通るようにして、白く光り輝いていました。
「蜂蜜。今日は珍しくお面をつけていないんだね」と十六夜は言いました。
「え? あ!」と十六夜にそう言われて、白ふくろうは自分がお面をとったままで、ずっと素顔のままでいることに気がついたようでした。
お面をかぶっていない素顔の蜂蜜はすぐに(とても慌てた様子で、遠くにあったお面をみつけて、お面をいそいで拾って)お面をつけました。
それからなにごともなかったかのようにして、もとのところに戻ってくると、「こほん」と一度、小さく咳ばらいをしてから、にっこりと笑って、姿勢を正して、澄ました様子で、十六夜を見ました。
そんな白ふくろうを見て、にっこりと本当に眩しい笑顔で、楽しそうな顔で、十六夜は声を出して笑いました。