94. 避難民
俺は冒険者としてブルスジルに来ていた。魔物の大量発生か何かだと思い、双子はパトリシアに任せて家に置いてきていた。
「…アリスちゃんとステラちゃんは居ないのか」
その結果、かなり父にがっかりされた。
今、王国の騎士や軍人、力のある冒険者たちは北のクヌストールと南の、ここブルスジル、それと王都の三ヶ所に集められていた。騎士や軍人には理由が教えられているかもしれないが、ほぼ民間人の冒険者には全く理由は話されていない。
「そんな事より、早く説明してくれ父さん」
この場に集められた冒険者に対する説明を父に求めた。
「今、この王国には未曾有の危機が迫っている」
父の説明によると近年、タクステディア王国では数多くの異変が起きているという。そして今は主に三ヶ所で武力が必要な状態となっているそうだ。王都は昔と比べると穏やかだが、ダンジョンの魔物の増加。北のクヌストールでは誰の入れ知恵か、恐らく隣国の仕業だろう、独立の機運が高まっていて度々武力衝突が起きているそうだ。そして南のブルスジルでは避難民が増えて治安が悪化してきているそうだ。双子を連れてこなくて正解だった。
「避難民?」
「今魔界では魔族との戦争が起こっているらしくて、それを逃れようとあの空間の裂け目から人が押し寄せてきている」
そして、このブルスジルでは受け入れ困難な状態になっているそうだ。今は魔界からの住民の受け入れは拒否しているが、既に入ってしまった者が多くいるとの事だ。ここに呼ばれた冒険者は治安維持の為に街を見回って欲しいとの依頼だった。
「でも、それだけじゃ根本的な解決にはならないんじゃ…」
「…」
父は黙り込んでしまった。責めているつもりは無かったのだが、何故か申し訳ない気持ちになる。
「詳しい事は、中で話そうルーク」
兄の言葉でこの場は解散となった。
「何か策でもあるの?兄さん」
「魔界の問題はレッドクリフィア公国とこちらの各国の代表で話し合っているから何とも言えないが、避難民の問題は何とかしようと思っている」
父と兄の話ではまず、避難民をいくつかのグループに分ける。そして法律の違反者が出たグループは連帯責任で罰を負わせる。ただし、グループ内で未然に防げばお咎め無しとする。こうする事で避難民同士で監視し合わせて、こちらの負担を減らそうとしているそうだ。
「ルーク、そこで避難民の名簿とグループの管理をお前に任せたい」
「私とニーチェは魔物の対処で手一杯でな」
「それぐらいなら任せておいてくれ!」
父と兄は忙しい為か、睡眠が取れていないようで目の下に隈が出来ていた。後の事は任せて少しでも休憩してほしい。
(今日は酒飲もうと誘える雰囲気ではないな)




