91. 模擬戦
翌日、俺とイアンはそれぞれの武器を手に持ち向かい合っていた。俺は刃を潰した槍、イアンは同じく刃を潰した剣を持っている。
「始め!」
アリアネルの号令と共に俺達は動き出す。俺はまず、常時待機状態にしてあるアプリを起動し始める。そしてデコイを発生させて俺は右から、デコイは左から回り込ませる。俺の得意の戦法だ。魔力の気配に敏感な実戦経験豊富な奴程そのデコイの気配に騙される。
想定通りイアンが一瞬動きを止めた隙に俺はイアンの左側から切りかかる。イアンは右手に持っていた剣を咄嗟に合わせてくるが、体制が整っていない為か弾かれる。しかしイアンはただ弾けれるだけではなく、そのまま後ろに宙返りをして俺から距離を取る。
(綺麗な動きだ)
イアンの回避行動に感心していると話しかけられる。
「どういう事だ今のは?」
「俺もダラダラと日々を過ごさず鍛錬していたって事だよ」
まだ戦いの最中なので俺は直接的な回答は避ける。
「「ぱぱ、がんばれ~!」」
双子の応援に勇気を貰った俺は再びイアンに突撃する。今度は先程とは逆方向にデコイを発生させる。イアンは先程の攻撃と思ったのかデコイの方を一瞬見る。その隙を俺は見逃さずに切りかかる。今度は利き手側という事もあり、綺麗に防がれる。俺は咄嗟に距離を取るが、イアンはそれを追いかけようとしてくる。
そこで俺の得意ないやらしい戦法の第二弾を発動させる。イアンの向かう先に雷の矢を発生させる。アプリから発動させているのでもちろん無詠唱だし、俺には魔力の移動など魔法発動の兆候は一切ない。完全に不意を突かれたイアンはその雷の矢を必死に躱す。しかしそのよけ先にはもう既に雷の矢が設置されていてイアンはその矢に当たってしまう。
その隙を突いて俺は槍でイアンの足をすくって倒し、喉に槍を突き付ける。
「勝負あり!」
そんなアリアネルの声で俺の勝利が決まる。俺はイアンに手を差し伸べて立たせてあげる。
「予備動作なしの無詠唱での魔法発動か、それにあの気配はなんだ?教えてくれ!」
俺は立たせてあげたイアンに質問攻めにされながら質問に答えていく。大半は理解されなかったが、それでも真剣に聞いていた。向上心のあるやつは嫌いじゃない。
「…アリィに良いとこ見せたかったんだけどな」
ボソッとイアンが言っていたので聞こえない振りをしておく。
(そういう事か…アリィはモテるな)
イアンにはちょっと申し訳ない事をしてしまったと思い、その日は俺の奢りで酒を飲んだ。
(やっぱり酒は全てを一時的に解決する)




