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異世界禁酒生活  作者: 田中 太郎
第一章
9/223

9. 誕生日

 異世界転生してから一年が経過し、歩きがだいぶ上達してきた頃。

 母に抱えられて部屋を出る。今まで必要無かったというのもあるが、危ないからと部屋から出たことは無かった。初めての部屋の外に少しワクワクしていた。特に変わった物があるという訳ではないが、世界が少し広くなった気がした。


(しかし、広いな)


 自分の部屋の大きさから予想はしていたが、かなりの大きさの屋敷だ。

 そんな大きな屋敷をしばらく歩いて目的地に着いたらしい。母がドアを開けて、俺は抱えられながら中に入る。そこは広い部屋で、俺の部屋の数倍はある。中央に縦長のテーブルが置かれていて、料理がたくさん並んでいる。その両端に丸いテーブルがたくさん置かれていて、丸いテーブルの周りにたくさんの人が拍手をしながら立っている。50人ぐらい居るのではないか。生まれてから家族と使用人以外の人達を初めて見た。


 俺は母に抱えられながら一番奥にある横長のテーブルにある椅子に座った。それと同時に父が話し始めた。


「我が息子の1歳の誕生日に集まってくれてありがとう。今日は楽しんでいってくれ。」


 意外にも短い挨拶でパーティーは始まった。俺は終始母に抱えられている。いろいろな人が挨拶にきた。全て母が対応してくれたので、俺はただぼーっと周りを観察していた。料理は肉料理がメインらしく魚料理はない。野菜はサラダがある。飲み物は水とジュース、酒はワインっぽいものが飲まれている。


(ワインか…)


 前世ではワインはあまり好きではなかった。ビールみたいなのはないのかときょろきょろするが、結局それらしき物は見つからなかった。

 子供は酒を飲んでいなかったので、この世界でも未成年は酒が飲めないのかもしれない。異世界だからそのあたりは緩いかと期待していたが、違ったことに少しがっかりした。


 今回集まってくれた人たちは身内の人たちや父、母と仲の良い人達だけなのだろう。みんなあまり畏まっていない。あと、聞いている話によるとうちは辺境伯らしい。隣国と魔の森に囲まれているのだとか。その話は面白かったが、他の話はつまらなくて途中から眠ってしまった。


 目が覚めたらベッドの上だった。目が覚めたことに気が付いた母が近づいてくる。


「今日は人がいっぱいで疲れちゃったね~」


 ぐ~っとおなかが鳴った。


「おなかすいたね~。ご飯食べようか。」


 窓の外を見ると夕方だった。母に食べさせてもらったり、手掴みで自分で食べたりしながら食事を進める。朝はあんなに騒がしかったのに、家の中はすっかり静かになっている。


 食事が終わった後に家族がぞろぞろと部屋に入ってくる。何事かと思いながら彼らを凝視していると、おめでとうと言いながらプレゼントを渡してくれる。父は短剣を「大きくなったら使うんだぞ」と言われ、近くにあった高い棚の上にそれを置いた。母からはぬいぐるみを貰った。毎日魔力操作という名のぬいぐるみ遊びしていたから気に入っていると思われているのだろう。兄からは木のスプーンを貰った。手作りらしいが、装飾がかなり凝っていて見た目が素晴らしい。姉からは絵本を貰った。こちらも手作りらしい。二人とも手先が器用だし、俺にはよくわからないが芸術的センスもあると思う。前に一緒にお絵描きをした時にとても絵が上手かったのを思い出した。

 ニコニコしながら笑顔でそれらを貰う。本当に愛されていると思う。それと同時にいつかちゃんと恩返しをしなきゃなとも思う。


 この世界に来てから一年。何一つ不自由なく過ごすことが出来た。改めて思うと感謝しかない。


(ああ、酒飲みたい)

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