88. パトリシアの困惑
私はパトリシア・オブライエン。訳あってとある家で暮らしている。やる事もやりたい事も無いのでただひたすら鍛錬をしている。生まれてから力が全ての世界で生きてきたので、いざ平和になるとどうして良いか分からない。レッドクリフィア公国や二ルクス帝国に居た頃は、今思うと任務に失敗するまでは、皮肉な事に生き生きと生きられていた。
そして二ルクス帝国に捕まった時は本当に絶望した。今生きているのはほぼ奇跡だろう。かと言ってルークを命の恩人かと思っているかと言うと、正直全く思っていない。ただ強者ではあるので練習相手としては申し分ない。
「ぱとりしあおねちゃん!」
「あそぼ!」
この家に住む双子が話しかけてくる。この二人はとても可愛い。いつも抱きしめてしまいたいと思っているが、理性がそれを抑える。
「今日は何をするんだ」
(ああ、なんで私はこんな不愛想な会話しかできないんだろうか…)
周りの皆のように思っている事を口に出すことが出来ない。長い潜入で演技では無い限り表情も作る事が出来ない。
「きゃりーおねえちゃんにおはなのわっかつくってあげるの!」
「ステラはありぃおねえちゃんに!」
私の不愛想な問いにアリスが一生懸命に説明してくれる。今来ている客人のアリアネルとキャロリンに花冠を作ってあげようとしているらしい。
(本当に可愛い生物よね、この子達は)
ルークが親バカで二人を何からも守ってあげている所為か、本当に素直にすくすくと育っている二人を見るのは楽しみでもある。
暫く花を集めたり手伝ってあげる。
「…できない」
「ステラも」
まだ幼くて手先が不器用な二人は上手く花冠が作れないでいる。そこで私はアリスの後ろに回って後ろからアリスの手を包んでやる。
「こうやるんだ」
(ああ、私はまた…どうして優しい口調で教えてあげられないのか)
孤児院に居た時に空いた時間に、名前はもう覚えていないが友達と一緒に花冠を作っていたのを思い出しながら、アリスに教えてあげる。
「できた!」
「ステラのも!」
次はステラに教えてあげる。
(子供ってなんでこんなにいいにおいがするんだろう?食べちゃいたい…)
可愛い双子に癒されながら双子に教えていく。空腹を感じてきているのでもう昼時だろう。ルークが昼食を作っているだろうから手伝いに行く。
「後は二人でやれ」
「「わかった」」
家に戻った時ルークとキャロリンはまだ話をしていた。久しぶりの再会らしいので会話が弾んでいるのだろう。昼時だと伝えようと部屋の扉に近づくと二人の会話が聞こえてくる。
「パトリシアってあの子敵よね?」
「ああ、でも今は違うと思うぞ」
「それにどうしてこの家に居るのよ」
「推しだから雇った」
私について話しているようだ。ルークの言っている通り、今の私は何にも興味が無い。強いて言えば双子の成長を見守っていたいぐらいだ。
「推しって…好きなの?」
「ああ、可愛くないか?」
(…え?……ま、まままま、待って…今、何の話?…え?え?え?)
暫く思考が停止してその場に立ち尽くしていると後ろから走ってくる気配を感じる。
「ぱぱ~おなかすいた~」
「もうそんな時間か、一旦お昼にしよう」
(落ち着け、落ち着くのよ、私)




