76. 懐かれたい
子供はそんなにすぐに忘れてしまうものなのだろうか。俺は膝から崩れ落ちた。双子が俺の事を心配そうに少し顔を覗かせていた。顔を上げるとすぐに母の後ろに隠れてしまった。
「う~ん、恥ずかしがっているだけかな…」
母が何か言っていたが気にせず、二人に懐かれる方法を探す。
(アリスとステラが好きな物…人形…)
俺はさっと近づいて二人に魔界で買ったお土産のぬいぐるみを見せる。二人は目を輝かせてこちらを見る。
「さて、こっちがアリスの、こっちはステラのだ」
さっそく二人にぬいぐるみを差し出すと、二人は駆け出してくる。相変わらず、どの仕草もかわいい。ぬいぐるみを受け取った二人は嬉しそうにそれを眺める。
「さあ、二人ともパパにお礼を言ってあげな」
母に促され二人が再びこちらに駆け寄ってきて抱き着いてくる。
「ぱぱ、ありがと!」
「ありがと!」
忘れていた訳ではなく、久しぶりに会うのが少し恥ずかしかったのだろうか、そこからは前と変わらずに接してくれる。
その後母に聞いた話だが、俺が急にいなくなって、二人は案の定ずっと泣いていて手を焼かされたらしい。申し訳ない気持ちで聞いていると、双子が抱き着く力が強くなった気がする。
そして、二人の成長や話を聞いているとアリアネルとパトリシアが帰って来た。
「ルーク、報告は終わったよ」
「ありがとな」
俺とアリアネルが会話していると、母が訪ねてくる。
「そちらは?」
「パトリシアだ。俺の家で雇おうと思っている」
「…っ!」
俺の下で働くことに不満があるのか一瞬驚いて不機嫌そうな顔で黙ってしまった。
「ま、まあ、皆さん疲れているでしょう。お風呂湧いているわよ」
「「ぱぱ、入ろ~」」
流石双子だ。相変わらず息の合った返事をする。俺は二人を連れて浴場に行って汗を流した。
「こら、走り回ると転ぶぞ!」
キャッキャとはしゃぐ二人に注意をしながらゆっくりと湯船に浸かる。
(やっぱ風呂だよな、癒される)
双子の可愛さもあり、疲れがみるみる取れていく。疲れが取れたら眠くなってしまったので双子と早めに寝ることになった。
翌朝、朝食を終えて家に帰ることにする。この家に居たいと駄々を捏ねる双子を連れ出し、駅に向かう。
「そうだ、アリアネル」
「なに?」
「キャリーには今回の事全部話しといてくれ」
「なんで?」
「まあ、何でもだ」
ぐずり疲れた双子が寝てしまったので俺とパトリシアは静かに魔導車に乗って家に帰る。アリアネルは国王への報告も兼ねて途中で別れて王都に帰っていった。
(酒が飲みたい)




