67. 潜入
人の気配は体内にある魔力で感じる事が出来る。
この世界では、大小はあるが魔力が無い生物は存在しない。その為、殆どの人は周囲の魔力を感じ取る事で人や動物の存在を感知する。
潜入先の建物を見ながら俺は集中する。体内にある魔力を亜空間に送り込む。回復したそばからすぐに送り込んでいって体内にある魔力をごく少量まで減らす。
普通の人はこの状態を保っていられないが、俺は日々寝る前に泥酔と似たような感覚を味わう為に習慣的に行っている為、ある程度はその状態を維持出来る。
今の俺は相当集中していないと気が付かないくらいには影が薄くなっている。そのまま正面の門番の様子を伺う。門番の死角を確認しながら移動する。目線の動きを注視しながら気が付かれないように動く。
相当時間が掛かったが無事気付かれずに建物に侵入する事が出来た。後は事前に調査した人の少ないルートを進んで行く。
(順調すぎて気味が悪い)
恐らくこの先に牢屋があるのだろう。部屋の前に見張りが居る。
問題は外と違ってこの通路は死角が無い。普通に行けばすぐに気が付かれてしまう。
深呼吸をし、覚悟を決めて見張りに一気に近づく。自分の最高速度で近づき、声を出される前に正面から鳩尾に拳を全力で叩き入れる。見張りがそのままその場に倒れ込んだ。
俺は見張りの体に自分の魔力を纏わせて魔力操作で立っている状態にする。これで遠目では気絶していると分からないだろう。素早く見張りから鍵を奪って扉を開けて中に入る。
部屋の中には牢屋が並んでいた。牢屋の中にもダニー以外の人が居たので、その人達にも気が付かれないように慎重にダニーのいる牢屋まで進む。
「来たぞ」
「やあ、待っていたよ」
小声でダニーと会話をする。俺は鍵を開けてあげる。
「外に人を待たせている早く行こう」
「あの可愛い子か。会えるのが楽しみだ」
何故かダニーにアリアネルの存在が分かるらしいが、理由を聞く前に今は素早く脱出しようとする。しかし俺はその前に入り口付近の牢屋に入れられていた人物に近づく。その人物には俺の存在が気付かれるように動く。
「お前も一緒に逃げるか?」
フードを軽く上げて顔を見せる。
「…お前は…」
「どうする」
「……行く、連れて行ってくれ」
「分かった」
俺は鍵を開けてあげる。そこに居たのはこの魔界で初めて出会った人物、可愛い少女だ。名前は分からないが何か事情があって捕らえられているみたいで、かつ彼女は諦めたような顔をしていて何故か放っておけなかった。ダニーはただ見ているだけで何も言おうとしない。
俺達三人は慎重に外を目指す。出会った時から思っていたが、ダニーは気配を消すのが上手い。俺は休憩しながらでないと気配を消した状態を保てないが、ダニーはずっと気配を消している。意識していないと見失いそうだ。
「俺が来なくても一人で出られたんじゃないか?」
「まあね」
そんな会話をしながら無事脱出する事が出来た。少女は無口でちゃんと付いて来ていた。
(今日はたくさん酔った感覚になったし酒はいいかな)




