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異世界禁酒生活  作者: 田中 太郎
第三章
66/223

66. 懐かしの場所

 俺は慣れた足取りで森の中を進んでいく。一年間暮らしていた森なので、特に問題なく山小屋に着く事が出来たが、俺は言葉を失う。


「…なにこれ、酷い」


 そんなアリアネルの言葉で現実に帰ってくる。立派な山小屋は見る影もなく破壊され、中は本や書類が散乱していた。俺はゆっくりと近づいていく。ダニーが無事かどうか、最初にそれを確かめようとする。

 山小屋の中に人の気配はない。瓦礫の下も探したが死体などは無かった。


(優秀な学者で知識もある。どこかに攫われたのか…)


 そんな事を考えながら現状を整理する為、山小屋の中を整理する。アリアネルは黙って手伝ってくれている。


「まずはここの住人のダニーを探そうと思う」

「分かった」

「よし、今日はここに泊まってさっきの街と近くのもう一つの街を探索しよう」


 そうして俺達は唯一無事だった部屋で一眠りしてから夜中に行動を開始した。まずは転移してきた街を捜索する事にする。街の大きさや繁栄具合から、確率的にはこちらの街にダニーは居るだろうと俺は予想していた。

 俺達はフードを深めに被って目的の街に向かう。


「アリィ、周囲の警戒を頼む」


 街に着いた後、俺はアリアネルにそう言い、城壁に手を当てる。亜空間に溜め込んでいた魔力も使い、薄い魔力の膜で街を覆う。レーダー探知機の様な事をしてしばらく集中してダニーの存在を探していると、懐かしい気配を発見した。恐らく捕まっているだろうにこっちの方角に手を振っているのを感じる。

 この捜索方法は魔力を扱う事に長けている者には探知できてしまう事が難点だ。他の人に気が付かれる前にさっさと救出してしまおうと行動を開始する。


「アリィ、ダニーを発見した。行こう」

「うん」


 壁を乗り越えて街に侵入する。フードが外れていないか確認しながら慎重に街の中を進んでいく。


「多分あそこの建物の中に居る」

「どうすんの?」

「俺がこっそり行ってくる。何かあったら合図するから俺達が脱出するまで人目を引きつけといてくれ」

「了解」


 アリアネルに細かい作業は向いていない。潜入は俺がするとして何かあった時の為に離れた場所で待機していてもらう。合図はどうしようかと考えながら建物の外観を確認する。ついでに魔力の膜で建物を囲んで侵入ルート、脱出ルートを複数考える。


(結構見張りがいるな…)


 簡単には侵入出来ない厳重な警備がされている。

 真剣に考えている一方で、ダニーは相変わらずこちらに手を振っているのを気配で感じる。


(俺もあれくらい気楽にして酒でも飲んでたい)

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