64. 気持ち
「父さん、調べたいことがあるからアリスとステラの事頼めないか?」
「それはいいが、何を調べるんだ?」
父の事は信用しているので全てを話す。魔界にいた時に助けてくれたエルフについて、魔界とこの世界の繋がりについてを話す。いつもの適当な感じではなく、真剣に命の恩人を助けたいと伝える。
「お前の行動の結果、王都が助かる可能性があるなら俺は許す。元々放蕩息子の戦力は期待していないからな」
「…ありがとう」
ということで、対外的には魔界の情勢の調査、個人的には命の恩人の様子を見てきてあわよくば、この異変の情報を聞き出してくる為に魔界に行く事になった。その後、母と討伐から帰って来た兄、アリアネルに今回の俺の行動について説明した。父に話した時より簡素な説明だが、父が賛成しているので問題なく許される。
「私も行く!」
話し終わるとアリアネルが言ってきた。アリアネルはここブルスジルでの防衛に欠かせない人物だ。当然父が許さない。
「ルークはいいが、アリアネルはだめだ」
「私は、突然ルークが居なくなった時の無力感を今でも覚えてる。大変な状況でも魔界の情報を集め続けたルークと違って私は何もできなかった。だから力になれる時は力になるって決めたの!」
アリアネルが今まで抱えていた気持ちを吐き出し始めた。自分勝手に生きてきただけなので俺は反応に困る。周りから見れば、精神的に追い詰められた状況で貴族としての矜持を示したと思われているのだろう。
「ルークが戻ってきてからもそう。王都の問題も解決することが出来なかった。その間に犠牲になった人の顔を思い出すと自分の無力さを実感するの……だから少しでも王都の異変を解決できるなら私も協力したいの!」
アリアネルが軽く言うから王都の異変での犠牲者について俺は深く考えていなかった。アリアネルは強い。周りの事も考えられる真面目な奴だ。俺のように自由に行動して死んでも大丈夫な身とは違ってこの国になくてはならない人だ。今回は連れていけないと俺が口を開こうとした瞬間父が口を開いた。
「俺が前線で持ちこたえれば、何とかなるか…」
「…それだと父さんが!」
「ルーク!俺はまだ現役だぞ!魔物ごときにやられん!」
父は感情に流されやすい。アリアネルの言葉に父がやる気を見せ始める。
父は現役と言ってもアリアネルと比べると戦力として心許ない。俺が気楽な気持ちで言い出した魔界遠征で成果を出さなければ父が死ぬ可能性が出てくる。
(失敗できなくなちゃったな…)
そんな気持ちが込み上げてくる。アリアネルが居れば成功率は上がるだろうが、父の命と比べる事が出来ない。父は貴族として国の為に判断したのだろう。それに俺の話を信用してくれているのだろう。その期待に応えなければと、この世界に来てから初めての責任感を感じる。
(父さんと一緒に酒を飲むまで死なせない)




