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異世界禁酒生活  作者: 田中 太郎
第二章
50/223

50. パトリシア・オブライエン

 私の名はパトリシア・オブライエン。レッドクリフィア公国の密偵で二ルクス帝国に潜入中だ。


 二ルクス帝国にある拠点で鍛錬をしようとトレーニングルームに向かう。外で大ぴらに鍛錬が出来ないのはストレスが溜まるが、いざという時の為に鍛えない訳にはいかない。


 部屋に入った途端、目の前の空間が歪む。歪みが無くなった後、一人の人が現れた。

 敵襲だと瞬時に思い咄嗟に後ろから切りかかる。流石にここの拠点を突き止め襲ってきた者だ、この攻撃は軽く防がれる。瞬時に相手の装備の状態を確認する。


「分が悪い、一旦ここは引かせてもらう」


 装備もない今の私ではこいつを倒す事は出来ないだろう。練習用ではない武器を取りに行く為、その場から逃げる。その後、急いで準備をして戻ったが、奴は既にその場にいなかった。


(…ここにある機密資料を取られるのはまずい!)


 拠点内を探索される前に急いで奴を探しに行った。運が悪い事にこの屋敷での用は終わったのか見つけた時、奴は帰るところだった。

 しかも手練れの門番を殺していた。相手がこのアジトに襲撃してきた意図を考える。


(騒ぎを広げ、ここの存在を知らしせる目的……いやそれよりも早く奴を始末しなければ)


 相手の意図は後で考えるとして、事態の収拾を先にすることにする。私は後方から剣で攻撃する。不意は付けずにまた斧のような武器で防がれた。


「私が装備を揃えている間に相当暴れたみたいだな」


 私がどう出ようか考えている間、奴はいろいろと言い訳していたが、こちらのやることは変わらない。それに相手は強い。久しぶりの強者に笑みを浮かべながら攻撃を仕掛ける。


「だがここを知ってしまった以上、そのまま帰す訳にはいかない」


 そう宣言して再び攻撃を仕掛ける。相手は積極的に攻撃してくる訳では無く、何かアーティファクトの様なもので矢を生成しているのだろう、厄介で面倒くさい戦い方をする。思わずイライラして動きが単調になってくるのを自覚する。


「…面倒くさい相手だ」


 相手は攻撃してくるつもりはないらしく、逃げるばかりだ。その間にこちらの隙を伺っているようで、油断は出来ない。


 何度かの交戦の後、相手は森に逃げていった。追いかけようとした時、思い出す。屋敷の前に死体がある事を。あの拠点の前で騒ぎが起こるのは避けたい。相手の手のひらで転がされている感じがしたが、考えずに急いで戻る。

 戦闘に時間を掛けすぎたようだ。人だかりが出来てしまっていた。急いで重要な書類だけを抱えて拠点を後にする。


 その後、私達の行動がばれ外交問題となり、二ルクス帝国に非難され不利な条件の条約や多額の金が請求された。それに従えるだけの国力も無くどうしようもなくなり、レッドクリフィア公国は戦争を仕掛ける事になった。

 作戦の失敗で肩身の狭い思いをしていたが、戦闘力を買われて我々密偵部隊は存続を許されていた。その為、私達も汚名返上のため率先して戦地に向かったが、結果は惨敗。このまま帰っても度重なる失敗で、殺されるだけだと悟り私達密偵部隊は、森の先にある異界に逃げる事を計画する。もともと孤児で無理やり働かされていた私達に愛国心などない。


(しばらく身を隠そう)

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