45. 山小屋
休憩後、しばらく山を進むと山小屋を見つけた。近づいた所で後ろから声をかけられる。
「珍しい客人だね」
振り返ると、自分と同じようにフード付きの外套を被っている人物がいた。声からして男性だろう。気配を感じなかった事からかなりの手練れだろう。俺は武器に手をかけながら少しずつ後ろに下がる。
「落ち着いて、君に危害を加えるつもりはない」
男はそう言った。
敵意は感じないので、武器からは手を放す。警戒は解かずに相手の言葉を待つ。
「ここは寒い、中で話さないか?」
男は俺の横を通り過ぎ山小屋へと向かう。俺は男の後を追う。正直、寒かったので助かる。
山小屋の中は散らかっていた。本や書類の山で足の踏み場がほとんど無い。生活範囲だろうか、通り道が出来ている。男はそこを進んでいく。
その先にテーブルがあり、俺に席を勧めてくる。俺はおとなしく座ることにする。
「暖炉に火を入れてお茶を入れてくるよ」
男はそう言い残し、外套を脱ぎ作業を始める。男の外見はこの世界で初めて見るが、前世の記憶でなんとなくわかる。
(エルフだ…)
男の作業を見るが、正直手際はよくない。いろいろと危なっかしく見ていられなくなったので、俺も外套を脱ぎ捨て手伝うことにする。
男は本当に不器用らしく、結局ほとんどの作業を俺がする事になる。お茶を入れ終え、席に着き相手がお茶を飲み始めるのを見てから俺もお茶を飲む。
「さて、僕はダニー・シムズ。君は?」
「…俺はルーク・ブルスジル…」
「どうしてこの森に?」
「…迷子だ」
先ほど正直に話して痛い目を見たので、とりあえず迷子ということにした。嘘は付いていないが全てを話している訳でもない。
「君の外見から察するに、森を抜けて……いやここからだと遠いな…ということはダンジョンからの転移者かな?」
「……ああ、探索していたら、気が付いたらここだった」
この男はいろいろと知っているようだ。この場所の知識を得るために俺は結局正直に話す。話した後も男からは敵意は感じられない。この人は襲ってこないようだ。
「ここはどこなんだ?」
「ここは魔界だよ」
「元の場所に戻る方法は知っているのか?」
「…来た道と同じ道で帰るのは難しい」
帰る方法がありそうな返答に少し安心する。
「違う道でいいから、帰る方法を教えてほしい」
「それはいいが、お腹が空いたから、夕食を食べながらでもいいかな?」
「……ああ、手伝おう」
「ありがとう」
焦げ跡の残るキッチンへと一緒に向かう。もう流石に気が付いているが、この男は不器用で家事全般が出来ないようだ。なんだかんだでほとんど俺が料理を作る。
と言っても鍋に具材を入れて塩で味付けをしたスープだが。
酒は飲まないようで、どこにも置いてなかった。
(酒が飲みたい)




