25. 結末
作戦は簡単だ。
まず相手に見つかるまで、お互い交互にいろいろな方向から魔法を放つ。アリアネルは魔法が苦手と言っても全く出来ない訳ではない。
ドラゴンは苛立たしそうに吠えながら俺たちを探して空を飛ぶ。四本足の巨体の癖に異様に素早く飛ぶ。
しばらくはそうして均衡を保っていたが、ドラゴンがいきなり何かを溜めるモーションに入った。俺はやばいと思い叫ぶ。
「アリィ!離れろ!」
俺たちが退いた瞬間、ドラゴンは口から火を吐きながら首を左右に動かした。その結果、あたり一面が焦土と化した。
(あれ食らったら一発でアウトだろ)
緊張感が高まる。
その後もしばらくドラゴンのブレスを避けながら隠れていたが、アリアネルより足の遅い俺はとうとう見つかってしまった。仕方がないので、ここからは作戦の第二段階、各々自由に攻撃の時間だ。
俺は今回、ハルバードを持ってきていた。剣よりも体に馴染んで使いやすいからだ。ドラゴンが爪や牙、尻尾で攻撃してくる。俺はそれをハルバードの先で往なしながら相手の攻撃を躱す。アリアネルが合流するまで必死で躱し続ける。
「ルーク!」
アリアネルが来てくれた時、俺は肩で息をしていた。
(流石に危なかった。死ぬかと思った)
アリアネルが合流してからもやることは一緒だ。相手の気を引きながら、街とは反対側に逃げる。ドラゴンが居るお陰か、周りに他の魔物の姿はない。
どのくらい経っただろうかずいぶん戦っていると思う。もう二人とも限界が近い。
そろそろ諦めて撤退しようかと考え始めたその時、遠くに火の玉が高く上がり弾ける。撤退の合図だ。本陣の方は片付いたみたいだ。予定より早いのでだいぶ頑張ってくれたのだろう。
しかしここで一つ問題がある。二人でこのドラゴンを振り切って逃げるのは無理だ。アリィは行けるかもしれないが、俺は逃げきれずにみんな休憩しているであろう本陣にこのドラゴンを連れて行ってしまう。ホバー走行せずにあれだけ早く移動できるアリアネルにコツとか聞いとくんだったなと、今更後悔する。
「アリィ……本陣に行って父さん達に現状を伝えに行ってくれ」
「だめだよ、そんなことしたら…」
「頼む!」
「……分かった、すぐ戻ってくる」
アリアネルが逃げれるようにと大量の矢をドラゴンに向けて放つ。あまり傷は付けられないが、しばらく動きを止めることに成功する。その間にアリアネルが本陣の方向に駆けていくのが見える。
(さて、最後の悪あがきをしてやるか)
しかし、何故かドラゴンが襲ってこない。アリアネルの気配はずいぶん遠くまで行っているようだし、時間を稼げるのなら好都合だが、不気味だ。
「興が醒めた。倒すのではなく死ぬ覚悟をしおったか。無駄な殺生は趣味じゃないんじゃがな」
ドラゴンが喋った。
(この世界でもそういう感じか…)
「まあ良い、勇者候補の実力は大体わかった。もう用は無い」
なんとも悪役っぽい言葉を言い残すとドラゴンは飛び去って行った。どうやら俺ではなくアリアネルと戦いたかったようだ。アリアネルを逃がして正解だったらしい。いろいろ面倒くさそうな事を言っていたが、どうやら俺は助かったらしい。
(なんだよ。めちゃめちゃ拍子抜けじゃないか)
俺はその場に座り込む。しばらくして、父とアリアネルが魔法師団を連れて戻って来た。魔法師団の上級魔法で目くらましをすると同時に俺を抱えて逃げるつもりだったらしい。
俺は駆けつけてくれた皆にドラゴンは気まぐれで帰って行ったと報告する。俺の言葉を信じているかはわからないが、皆安堵している。
いろいろ腑に落ちないが、これにて一件落着である。
(ああ、酒が飲みたい)
一章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
面白かった、気になった方はぜひブックマークの追加、評価をお願いします。
また、もう既にブックマークの追加、評価をしてくださっている方、ありがとうございます。日々のモチベーションに繋がっています。




