23. ドラゴン
「お前らの剣を見ていれば分かる。今回の戦いでも通用するから心配するな」
そんなことを言われ、俺とアリアネルの参加が決まった後、俺達は作戦を聞きに父の部屋に移動した。
専門的なことは分からないが、群れからはぐれた個体の討伐を頼まれた。数は少ないが進行方向的に街に被害が出そう区画を二人に任された。数匹取り逃がしたとしても住民は避難しているので、人的被害は出ない想定だ。本来新人に任せようと思っていた仕事らしい。討伐終了後は本陣に合流して魔物の討伐を手伝って欲しいと言われた。
(人手不足も深刻なんだな…)
俺とアリアネルは強いとは言え子供だ。そんな二人の力が必要なほど危機的状況なのだろう。
命に関わる事なので真剣に聞いていると、父の部下が部屋に入って来た。
「何事だ?」
「それが、…斥候部隊の報告によると山奥に…ドラゴンが現れたそうです」
「なんだと!?」
この世界最強の生物、ドラゴンが現れたらしい。人里には滅多に現れないので、人的被害はここ数十年無かったらしいドラゴンが何故か現れた。俺はちらりとアリアネルを見る。本人には言っていないが俺は気が付いている。勇者候補のアリアネルが来てから徐々に魔物が増え始めている。誰も気が付いていないようだが恐らくあっているだろう。勇者を育てるために魔物が集まってきているのだろうか。
(ついにドラゴンか。こいつすごいな)
「なに?」
「……いや、かわいいなと思って」
「っ…!そ、そそそそ、そうかな、えへへ」
本人に直接言えないので適当に誤魔化しておく。
(ちょろいな)
「って!今適当に言ったでしょう!…で、本当は何考えてたの?」
「いや、今回の魔物の進軍、ドラゴンから逃げているんじゃないかと思って」
「ルークもそう思うか。ドラゴンさえ何とか出来れば何とかなりそうなんだが…」
父が話に入って来た。
「後ろから攻撃してドラゴンの気を引いている間に魔物の群れを倒し、最後に総力でドラゴンを叩いた方がよさそうだ。同時に来られたらこちらに勝ち目はない」
(問題は誰が囮の役目をするかだな)
「ルーク、アリィ頼めるか?」
「…俺は別にいいけど」
ちらりと横を見る。俺は領主の息子だからそういう役目に文句は言えないが、アリアネルは違う。彼女は断っても何の問題もない。
俺一人では時間稼ぎはそう長く持たないだろう。かと言って主力の一部を囮に回すわけにもいかない。というわけで、剣に秀でた才能があるアリアネルが抜擢されたのだろう。妥当と言えば妥当な判断だ。
「私もやる!」
「……そうか、ありがとう…」
父は申し訳なさそうにしている。
「作戦は明後日開始だ。休息と準備を怠らないように!」
それだけ言うと他の仕事に取り掛かり始めた。俺たちは邪魔にならないように部屋の外に出る。
「大変な事になっちゃね」
「…ああ」
そう言いながらも、アリアネルは何故か少し楽しそうにしている。
「でも、大事な任務を任せてもらえたから、きっちり役割は果たさないと!」
信用されている事が、嬉しいらしい。胸を張ってそう宣言している。俺とは違いまじめな奴だ。
(終わったら酒が飲みたいな)




