21. アリアネル
夜が明け、少女を起こし、木の上から降ろしてやる。
「俺は街まで行くがお前はどうする?」
「………私も行く…」
「そうか」と呟き、街へ向かう。少女は一所懸命に俺についてくる。自然と気を使って少女の歩幅に合わせる。街に着いた後は少女を神殿に預け、俺は家に帰った。
家には俺を捜索しに行こうとしていた父と鉢合わせた。かなり怒られたが、少女が森で迷っていたから森の入り口で夜を明かし、神殿に送って行ったと言うと渋々ながら納得し、解放してくれた。盗賊のことは面倒くさくなりそうなので、ばれるまで黙っておく。
(早く寝たい…)
母にも怒られた後、すぐに風呂に入りベッドに入る。疲れすぎていて泥のように眠った。
その日は昼過ぎに起き、素振りをした後に夕食だけ食べて、眠った。まだ疲れが取れていないようだ。欲望のままに眠りにつく。
翌日、俺は朝食後にメイド長に話しかけられた。
「ルーク坊ちゃんを訪ねてきたお客様がいらっしゃいます」
(誰だろう…)
客室に案内され、部屋に入ると昨日の少女がいた。昨日は汚れていて気が付かなかったが、風呂に入り、きれいな服を着ているとどこかのお嬢様みたいだ。顔も整っている。キレイ系だ。
「おう、昨日ぶりだな。神殿はどうだ?」
「……ものすごくよくしてもらっています…」
「…そうか、なら良かった」
会話が続かない。同年代の子供と話す機会なんてほとんど無かったからか、いい話題が思いつかない。そういえば、彼女の名前を知らないことを思い出す。まずは挨拶だろう。
「そういえば、名前を言ってなかったな。俺はルーク・ブルスジルだ。ルークって呼んでくれ」
「神殿の人から…聞きました…私は…アリアネル…です…」
会話が終わってしまった。気まずい。そもそも今日は何しに来たんだろう。用件を聞いていない事に気が付く。
(また礼を言いに来たのかな。律儀だな)
「それで、今日は何しに来たんだ?」
「………」
(…おいおい黙るなよ)
しばらくの沈黙の後、少女はゆっくりと口を開く。
「私は先日、一人になってしまいました。ですので、その……ここで働かせてください!」
働き口を探していたのか。それともそれは口実か、何を考えているのかわからないが、その時の俺は幼いのにしっかりしていると場違いなことを考えていた。
旅行先って言ってたし、見知らぬ街で途方に暮れてたのだろう。唯一の知り合いの俺を神殿の人に聞いて尋ねてきたのかなと思っていた。
「あー、そういう話は父さんにしてみないと分からない。聞いてくるからちょっと待ってて」
返事がすぐに出来ず気まずくなったので、一旦部屋から逃げ出す。最悪住んでいた街までの交通費を出してもらえばいいかと父の部屋に向かいながら考える。そして部屋に着いた後、父に説明する。
「なんかここで働きたいっていう人が来てる」
いろいろ言い方を考えていたが、面倒くさくなり、父に丸投げする。一瞬困った顔をしていたが、俺のこういう適当な所に慣れてきたのか、父はすぐに客室へと向かって行った。
結果から言うと、雇うというか、保護することになった。
なんでも勇者候補の証を持っているらしい。なんの特技もないと雇えないと帰そうとしたそうだが、魔法が使えると言ってそれを見せてきたらしい。
手の甲に意識を集中させると模様が浮かび上がってきて、それが勇者候補の証なんだとか。
(うわ、何それ主人公じゃん)
十歳までこの家で過ごして、俺と一緒に王都の学園に行くらしい。なんと同い年だった。
予期せず、同い年の友達、幼馴染が出来てしまった。
(いつか酒を飲みながら昔を懐かしむ仲になりたいな)




