202. 退屈
俺達は徐々にダンジョンに潜っている時間を延ばしていった。今は潜ってから三日経った。五十階層まで来ていた。
『何階層あるんだろうな』
「段々飽きてきた」
『後は俺一人でもやるから帰っても良いんだぞ』
「…やる」
智花は俺を持って歩いているだけだから、流石に飽きてきていた。階層を下がる毎に魔物の強さは徐々に上がって行っているが、まだ俺一人でも手に負える相手だから一人で戦っていた。フレッドも流石に飽き飽きしてきていた。
(魔力も溜まって来たし、二人にも討伐をやらせるか)
『そうだな、ここからはパーティー戦をやるか』
「パーティー戦?」
「お、楽しそうじゃんか」
俺は魔力を操作して防具と武器を人型にさせた。
『こいつらにタンク役をさせる』
「へえ、その能力は君のだったんだね」
『お前の考えている事に興味は無いが、そんな事を言ってると怪しまれるぞ。思っていても心に留めていた方が良い』
「忠告ありがとう」
最近になって分かった事がある。こいつは何も考えていない。ただ智花に興味があるだけだ。
『接近戦は智花、俺とフレッドは遠距離で援護だな』
「君単体でも戦えるの?」
『多少はな』
それからそのフォーメーションで魔物を討伐しながら探索をしていった。智花は能力を使わなくても十分速く、強かった。デコイが相手の動きを止めて、その隙に外皮の薄い部分に的確に攻撃を当てていた。そして、止めはフレッドが凍らせて終了といった感じでサクサクと魔物を倒していった。
「あのデコイは凄いな」
『そうか、お前にも出来そうだがな』
俺はフレッドが魔力の存在に気が付いていると思っていた。俺程では無いが、魔力操作も出来ると思っていた。
「君みたいに精密には無理だよ」
『否定はしないんだな』
「ああ」
フレッドはにやりと笑って続けた。
「俺の力が怖いか?」
『使い方によってはな』
「安心しろ。君達には危害を加えない」
『今はだろ』
フレッドは更に笑みを深めた。嘘っぽい笑い方だった。
「君は俺の事を相当分かっているみたいだ」
その言葉で会話を止めた。戦闘していた智花が戻って来たからだ。智花は戻ってくると俺を抱きかかえて歩き始めた。フレッドも黙ってついてきた。
フレッドは内心焦っていると思っていた。彼にはやりたい事がある。世の中を良くしたいと言っていた。その為に智花が欲しいと。だからこんな所でゆっくりしている余裕は無いと思っている。痺れを切らして行動に出るかもしれない。だから俺は早くこのダンジョンを攻略したかった。安全第一で出来るだけ早く攻略を目指していた。
(何も考えずに酒飲みてぇ)