201. 警戒
俺達はおじいちゃんが用意してくれた宿まで戻って来た。急遽一名追加となったが、快く承諾してくれた。俺達は三人分よりも少し多めの料金を払った。部屋は二人部屋と一人部屋。食事は必要な時だけ別料金を払って食べる事にした。もちろん今晩は頂く事にした。俺は智花と同じ部屋だ。智花がそれが良いと駄々を捏ねたので仕方なくそうした。部屋に入りフレッドが盗み聞きしてない事を確認してから、智花に小声で話しかけた。
『智花、あいつには君の能力は見せるな。今日みたいに俺の力だけで敵を倒す。いざという時の為に使わないでくれ』
「…分かった」
智花は渋々承諾してくれた。フレッドは思想が危険かもしれない。こっちが悪事を働かない限り、殺してくる事は無いだろうが、何が彼にとっての悪事かは分からない。注意しといた方が良いだろう。
『それより夕食が楽しみだな』
「うん、でも兎さんは生野菜だよ」
忘れていた。俺は兎が何を食べてはいけないのか知らない。なので食事は毎食生野菜だ。野菜が嫌いな訳では無いが、毎食だと流石に飽きてくる。早く元の体に戻りたくなってくる。
俺達はその後、夕食を食べて風呂に入った。風呂は流石に男湯で男性従業員に丁寧に洗ってもらった。大人しくしている兎に従業員は不思議そうな顔をしていたが、風呂は気持ち良かった。
その後智花はすぐに寝てしまったが、俺は半分意識を起こしたまま、周りを警戒したまま寝た。野生動物だからだろうか。周りを警戒したまま寝ても十分に睡眠が取れた。
フレッドは特に怪しい行動はしなかった。とても友好的だった。ただ、その笑顔がとても怖かった。
「今日は一日で行けるところまで行くという感じかい?」
『ああ、そんな感じだ』
俺達は昨日と同じようにダンジョンを探索した。一階層は難なく突破し、第二、第三と進んで道をマッピングした所で二日目の探索は終了した。
「それよりこのダンジョンってこんなに難易度高かったっけ?」
「最近変化した。今までと全く違う。何があるか分からない」
「それでその調査をしているって訳ね」
フレッドは何かつまらなさそうに返事した。フレッドの一挙一動を見逃さないように観察する。フレッドは常に明るいが、このダンジョンの事は何も興味が無いみたいだった。こんな探索はさっさと終わらせて別の事がしたい。そんな風に見えた。
(確かに目的が無い人からすれば退屈か…)
この大陸ではダンジョンは魔物が居る以外は何も無いと思われている。魔力が無い人間には魔石の存在も分からないからだろう。そんな常識からすると俺達の行動は不思議に思えるみたいだった。宿の人達も何をしているのか頻繁に聞いてきた。
(酒飲む為に元の体取り戻そうとしてるだけなんだけどね)